ナラティブ内部監査の実践例2として、「困りごと抽出監査」の説明をしていきます。
ナラティブ内部監査の実践例1は、「被監査者による適合証明監査」でした。この「被監査者による適合証明監査」は、メリットがある一方デメリットもあるとして、もし行われる内部監査が被監査者に「利益をもたらさない場合」は、デメリットになるかもしれないと前回説明しました。良いことではありませんので、あまりお話ししたくないのですが、組織においては「本当のことを話す」と上司から疎んじられるという事があります。
近年、社会的に問題になっている「品質不祥事」は、まさにこの「本当にこと」が隠ぺいされて起こっていることが第三者委員会調査報告書から明らかになっています。

1.「困りごと抽出監査」とは

  • 実践例1「被監査者による適合証明監査」の特徴の一つは、被監査者が主役になることでしたが、実践例2「困りごと抽出監査」も全く同様に被監査者が主役になる内部監査です。ということは、ステップ3「内部監査員と被監査者の共同作業の基盤を作る」ことは、この内部監査の例でも必須なことです。
  • 「困りごと抽出監査」では、内部監査員は被監査者から「いま、困っていること」を聞き出します。今困っていることを解決できれば被監査者にとって利益になるでしょうから、実践例1に比べてデメリットは少ないと言えます。しかし、困っていることを話すことが「第三者に言いつける」と上司に思われるかもしれない、と考える被監査者がいる場合は、少なからず抵抗感がある場合が出てきます。「自分に利益になること」と「第三者に言いつけると上司に思われるかもしれない」ことの可能性との比較で、被監査者の協力度合いが決まります。
  • (1)抵抗感をなくすには
    「第三者に言いつける」と上司に思われるかもしれない、という抵抗感を無くすために、内部監査員は工夫をしなければなりません。人の行動心理から言えることですが、「強く聞かれたので答えた」のだという状況を作ることが「抵抗感」を無くすことに役立ちます。
  • (2)何を強く聞くか
    ではどんなことを強く聞くのでしょうか。内部監査員が被監査者に「何か困っていることはありませんか?」と聞く程度では被監査者の抵抗感は減少しないでしょう。
    「○○について困っていませんか」と聞くことが重要です。

○○については次回お話ししたいと思います。

(つづく)