ナラティブ内部監査の実践例2として、「困りごと抽出監査」の説明をしています。

前回は、被監査者にとっての困りごとの一般的な例を掲げてみました。
今回からは、一つひとつ実践に際してのポイントについて話しを進めていきたいと思います。

4.一つひとつ実践に際してのポイント
(2)  機械設備が古い。

  • 機械設備の老朽化は、中小企業でよく聞く困りごとです。
    当然のことですが、この困りごとは製造業に特有な困りごとであって、サービス業には例外はあっても(例えば、レストランの食洗器など)、あまり当てはまらない困りごとであると思います。
  • ポイント1:機械設備の点検基準
  • 機械設備の老朽化に関しては、該当機械設備の点検基準をレビューします。点検基準は、機械設備を日常的に維持する点において必須なものです。これまで職場において、点検基準に沿ったメンテナンスをどの程度忠実に行ってきたのか、その実施程度によって対応の仕方が変わります。
  • ポイント2:メーカー点検の履歴
  • 機械設備がある程度高度な構造、仕組みを持っている場合は、メーカーによる定期的な点検制度があります。今までのメーカー点検の履歴を見ることにより、機械設備の劣化状況が分かります。また、今からの対応についても、メーカーからアドバイスをもらうことが出来ます。
  • ポイント3:PM (Preventive Maintenance:予防保全)
  • 予防保全という概念があります。機械設備の調子が悪くなってから修理するのではなく、機械設備の特性に合わせて事前に計画的なメンテナンスをします。主要な経時劣化部品の寿命前交換などはその例です。
  • ポイント4:総稼働時間
  • PMの概念と重複しますが、機械設備の運転時間の総計は寿命を図る重要な指標です。
    特に継時劣化が顕著な部品、ユニット(摺動部、ゴム・プラスティック部品など)の計画的な交換(PM)にはこの稼働総時間のデータが必要となります。
  • ポイント5:オペレータ(運転員)
  • 日常のオペレーションにおける運転員の技量は、機械設備の状態維持に大きく影響を与えます。機械設備からはいろいろな情報が発信されます。IT化された機械設備ではディジタルデータが記録されています。データ(data)と情報(information)は異なります。データを整理すると活用できる情報になります。整理の仕方にはいろいろありますが、グラフにしてみることが良いと思います。オペレータの技量としてはこのようなデータを整理する力とは別に官能的な力も求められます。官能的な力とは、機械設備の音、振動、臭い、挙動などを感じ取る力です。
    今までの運転員の移動、交代もポイントになります。機械設備によりますが、一定の時間の運転経験がないと前述のような力量は身に付きません。

(つづく)