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オーダーメードの講師派遣型研修について
弊社で提供しているISO研修は、弊社用意の会場で、オープン参加でいろいろな組織の方がお越しになる集合型研修と、特定企業の事務所や工場に講師がお邪魔して行う研修の2つに大別されます。
さらに後者の講師派遣型研修は、弊社でご用意したカリキュラム、教材でそのまま行う研修と、お客様のご要望に応じてアレンジあるいは作り直して行う研修の2つに大別されます。
つまり弊社の研修は、一般定例研修、講師派遣型定例研修、講師派遣型カスタマイズ研修の3つにわけることができるのです。
その中でも3つ目の講師派遣型カスタマイズ研修のご要望はこのところ本当に増えてきました。
私自身も一般の2日間の内部監査員研修の講師を務めるだけでなく、最近は、これから内部監査員になる人と、すでに内部監査員として活動している人のスキルアップ研修を同時に組み入れた研修コースの講師を務めることが増えてきています。
この、新規の内部監査員候補者とすでに内部監査員として活躍している方の両者をミックスした研修などは、以前であれば全く狙いが異なりますからお受けできません、とお断りしてたケースもあります。
しかしながら、お客様のどうしても、というお声にお応えする形で弊社もこのようなコースを検討し展開していくことで、だんだん固定的な先入観念にとらわれることなく、無理と思った研修でもやってみるものだな、と思うようにもなってきております。
もちろん、そのような状況でコースを受講される方々は、知識量も経験量もずいぶん開きのあるため、同時に研修参加いただいたとしても、両者の方の学習成果は同一にはなりません。しかしながらある一定の前提条件を満たした設定を行えば、どう考えても前提条件に大きな開きがある新任監査員の初期教育と、経験者のスキルアップ研修であっても、同時に行うこともできるな、という自信を深めてきています。
本稿では、その研修を行うことが可能になる3つの前提条件についてのお話をしていきたいと思います。
【前提条件その1:同一属性】
まず一つ目は、研修受講者が同一組織の人である、ということです。
企業派遣型研修の場合ですと、ときどき子会社等のグループ企業の方々も参加者に混じることがあります。親会社主導で子会社人材の教育まで行うことはとても良いことではありますが、今回の主題は、内部監査員の力量強化研修についてです。共通の理念や方針が周知されている状態であれば対応可能ですが、そもそも会社の経営理念や目標が違ってしまうと、内部監査を行う大前提が共有できていないことになってしまいます。これではさすがに教育を行ったとしても初めての方向けの研修としては成立したとしても、経験者向けのスキルアップ教育ではテクニック的な部分には踏み込むことができたとしても肝心の部分への言及がしにくくなります。
故に、未経験者と経験者の集合教育においては、基本は同一組織の方で、受講者同士によるグループディスカッションを行う際に共通言語でやり取りができることが研修成功の大事な条件になってきます。
マニュアルの内容であったり、手順書の内容であったりという細かいところにまで踏み込む研修ではなかったとしても、それらの存在に関する共有を図ることができる、ということが研修進行上は大事な要素になるのです。
【前提条件その2:経験者の力量レベル】
2つ目のポイントは、経験者の力量がそれほど高くない、ということになります。内部監査自体はとても奥の深いものですから、1,2回経験したからといって、優れた内部監査の実績が挙げられるようになる人はそうそういません。何回経験を積めばよい、という基準ももちろんありませんが、少なくとも自他ともにベテラン内部監査員と認められるようになるには5、6回の経験値は持ってほしいところです。
内部監査員のスキルアップ研修という響きからは、ベテラン監査員のさらなる力量強化のための研修というイメージを持たれる方もいらっしゃるでしょう。弊社でももちろんそのような方々の研修を請け負う時もありますが、多くは内部監査員になり、1、2回の経験は積んだけれど、まだまだ内部監査をどのようにやっていけばよいか自信が持てない、という方々の教育を請け負う時の方が多いのが実態です。
ある程度の規模以上の企業になると、内部監査員教育を受け、とりあえず内部監査員になる資格は取ったけれど、業務多忙でなかなか内部監査に参加する時間が取れない、というケースが出てきます。大企業さんの事例では、研修受講後オブザーブを経てから内部監査員登録をしていく仕組みを持ち、そのオブザーブ参加はこの日にしなさい、という指示ではなく、自分の業務の都合上から自己申告でオブザーブ参加する内部監査日程を決めていく、という仕組みの会社さんもあります。自主的な行動を促すことはとても良いことですが、リスクとしては業務優先で考えてしまう人だと、オブザーブ参加をいつまでたっても終えておらず、結果的に内部監査員養成研修にて習得したことも忘れてしまう、ということになる危険性も抱えていることになります。
つまり内部監査員経験者のスキルアップ研修と言っても、その内容、幅には、初期教育以上の各人が保有している力量レベルの差、及び経験値の差があるのです。自動車免許において、それこそ若葉マークを付けている方々とタクシーの運転手ではどれほどの運転技術の差があるか、言わずともお分かりいただけると思います。内部監査員も同様ということです。 そうすると、内部監査員になるための初期教育を終えた方であっても、しばらく監査から遠ざかっている、という場合には今回のような合体型の研修であっても、教材内容と講師の進行によって、十分に時間をとるだけの価値ある研修を受けることができる、ということなのです。
マニュアルの内容であったり、手順書の内容であったりという細かいところにまで踏み込む研修ではなかったとしても、それらの存在に関する共有を図ることができる、ということが研修進行上は大事な要素になるのです。
【前提条件その3:事務局の方の関与度合い】
最後の条件になります。この条件は、研修を受ける方々の方ではなく、研修を企画する方々についての条件になります。
企業内の研修は、企画運営される事務局の方がいらっしゃるわけですが、私たちとお付き合いのある事務局の方々はやはりしっかり自社全般のこと、そして自社におけるマネジメントシステム運用のことを考えておられる方々がほとんどです。その中でも今回お話しているような難度の高い研修を企画運営される組織の事務局の方々は、受講される方々の属性について把握されておられることが、こちらにもよく伝わってきます。
社歴がどれくらいなのか、内部監査員の初期教育はいつ頃受けているか、そして現在のその人の仕事や立場(管理職なのかスペシャリストなのか等)について把握しておられるのです。
もちろん大きな会社になればなるほど、普段の仕事で接触があるわけではない方も受講を希望され参加されているケースもあるはずです。ですが、詳しくお聞きしたことはありませんが、受講希望者を募る段階で、希望理由をいろいろな角度から本人にインプットしてもらうべく促しているな、ということを感じるケースがよくあります。ある企業では、参加希望者だけでなく、その上司の方からも研修に向けての希望、期待のコメントをもらって本人の意識高揚につなげているところもあります。
そしてこれらの組織の事務局の方々は、ほとんどのケースで研修期間中、ずっと研修室内の常駐しておられます。講師の監視、ということもありますが、それよりも受講されている方々の理解がどれくらい進んでいっているのかを自分の目のしっかり確かめよう、という強い意欲があるのです。そしてそれは講師側にも伝わってきます。そのような気持ちを持った方がいる場ですから、研修会場内には良い意味での緊張感がみなぎることになるわけです。
もちろん受講される方々は、日頃一生懸命業務に取り組まれているが故に、研修中にその疲れが出て、眠気との戦いになって、研修受講に集中できなくなるケースもあります。講師側から見ていると、眠気に襲われているな、という方は幸か不幸かよく見えてしまうのですね。事務局の方も研修スタート時には眠ったりしないようしっかり集中して受講するように、という注意喚起は行いますが、多くのケースではいちいちそのことで叱責をするようなことはしません。その方がたとえある時、集中力を失っていたとしても、肝心の部分の理解ができ、演習でアウトプットがしっかりできていれば、その研修受講は十分に成果があった、と評価できるわけですから(講師はそのように持っていかなければならない責務もあるわけで)、一時の居眠りなどの些細なことにこだわる必要はないのです。
「木を見て森を見ず」ということにならないよう、事務局の方もそこはわかったうえでの対応なのです。
ただし、終了後には、本当に気になる方については意見交換をします。複数日にまたがる研修であれば、翌日は互いにその人に少し目を向ける度合いを高めて対応しましょう、ということを確認しあいます。
このようなやり取りが事務局の方とできれば講師としても不安を抱えることなく研修を進めることができるわけです。事務局の方の関与が研修成功における一つの要素であること、これでだいたいお判りいただけるのではないかと思います。
以上、内部監査員の初期教育と経験者のスキルアップ教育を合体させるオーダーメード研修の成功の秘訣をお伝えしました。ご参考になれば幸いです。
(テクノファ 青木恒享)