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品質不正はどうしても製造業に注目が集まります。注目の集まる理由は、戦後の日本が製造業において、Japan as No.1と言われ、その成果を世界に示したインパクトが強く、その感激が裏切られた思いが強いからだと思います。若い世代の方はJapan as No.1などは知らないでしょうから、品質不正と言ってもそんなもんかと思われるかもしれません。しかし、60歳代以上の方は、とくに製造業に関与された方はひとしお強い衝撃を受けたのではないかと思います。
現在の日本産業界は70%以上がサービス業で占められていますので、実はあまり報じられていませんが、製造業以外にも品質不正は起きています。
製造業以外、すなわちサービス業での近年の不正事例を2例示させていただきます。
- 1.毎月勤労統計調査の調査集計の誤り
- (1)内容
- 毎月勤労統計調査は国が毎月継続的に実施している基幹統計調査の一つです。全国調査ですから大変手間のかかる仕事です。東京都における調査は大規模事業所におけるサンプリング調査でした。不正はデータについて復元処理(ウェイト付)が行われなかったという事案です。ウエイト付けしないとデータが過小に評価されてしまうという事です。総務省がデータの入れ替えを行った際のデータの不連続性に疑問を抱き、厚労省に問合せし発見されました。
- (2)時期
- 平成3年(2018年)12月に発覚しました。
- (3)影響
- 結果として、H16年―H29年までの賃金が低く算定されていました。雇用保険や労災保険等の給付金額が過小となっていた可能性があります。
- 2.フジ産経世論調査のメーキング
- (1)内容
- フジ産経が委託していた電話調査の専門企業(アダムスコミュニケーション)が一部業務を再委託(日本テレネット)していました。その再委託先の担当責任者がデータを手順通りに取らず捏造していました。
- (2)時期
- 2020年6月に発覚しました。
- 発覚は「データが不正に入力されている疑いがある」との情報(内部通報か?)を得てフジ・産経が調査して発見されました。
- (3)影響
- 2019年5月から2020年5月までの14回の調査の約15,000サンプルの内約2,000サンプルがねつ造されていました。全体の約13%に当たります。
このように製造業以外にも品質不祥事は起きています。ただし、発覚している件数は製造業と比較して圧倒的に少ないので、マスコミでもあまり取り上げられず社会ではあまり話題にされてきませんでした。
(つづく)