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ISO9001やISO14001などの規格は、一つの呼び方として「要求事項規格」という言い方をします。その対比としてISO9004やISO14004という規格があるのですが、これらはガイドライン規格という言われ方をしています。
何が違うかといえば、表面的(文書の形式)な見方から入りますが、ISO9001やISO14001は英語の原文で“shall”という用語が用いられていることで、この言葉を用いている規格は要求事項規格という分類になります。一方のISO9004やISO14004は“should”という用語が用いられています。この用語を用いた規格文書はガイドライン(日本語では指針と訳しています)として世の中に送り出されているのです。
学校で習った英語の感覚からすれば、“should”の方が「何々すべきである」という訳語を思い浮かべるかと思います。こちらの方が“shall”より強い意味合いになると一般的には解されると思いますが、ISOでの用語の用い方は、あくまで“shall”が要求事項で日本語に訳す場合は「何々しなければならない」、“should”の方が「何々することが望ましい」という訳語が当てはめられることになっています。
とは言え、このことは規格作成者やISOの専門家が理解し使い分けをしなければいけない内容のことであり、規格のユーザーの皆さんは英語の原文は気にすることなく、「~しなければならない」が要求事項を表し、「~することが望ましい」はガイドライン文書(参考指針)であることを理解いただければ十分です。
そしてもう一つ理解しておいて頂きたいことは、ISO9001やISO14001の認証を取得したいと皆さんの所属される組織が考えた、あるいはすでに認証は取得してそれを維持し続けたいと考えている場合は、ISO9001やISO14001の規格内に書かれている要求事項すべてを満たす必要が原則としてある、という点です。
審査を受けると適合・不適合という言葉を聞くことになります。皆さんの所属企業の状況がどのような状態か、ということによって、適合か不適合かの判定が行われるわけですが、何に対しての適合か不適合かというとISO9001やISO14001の規格要求事項に対して、ということなのです。
認証を取得するとは、規格の中で規定されている100を超える「~しなければならない」のすべてに対して、できているかどうかの評価判定が行われ、すべての「~しなければならない」についてOKという状態であることが確認されると認証が取得できる、ということになります。
100を超える要求に対してすべて満たした状態を作り上げる、維持するということは決して易しいこととは言えません。だからこそ認証を取得することによって取引先に認められることにつながるわけです。
規格要求事項とはISO規格の文章の中で「~しなければならない」となっている部分が該当すると共に、その「~しなければならない」となっている全項目をクリアすることで初めて審査に通る、というご説明をしました。この部分はご理解できましたでしょうか。
下記に、実際の要求事項の一例を挙げておきます。
ISO9001(JIS Q 9001) 4.4.1項より抜粋
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組織は,品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体にわたる適用を決定しなければならない。また,次の事項を実施しなければならない。
- a) これらのプロセスに必要なインプット,及びこれらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする。
- b) これらのプロセスの順序及び相互作用を明確にする。
- c) これらのプロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断基準及び方法(監視,測定及び関連するパフォーマンス指標を含む。)を決定し,適用する。
- d) これらのプロセスに必要な資源を明確にし,及びそれが利用できることを確実にする。
- e) これらのプロセスに関する責任及び権限を割り当てる。
- f) 6.1 の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。
- g) これらのプロセスを評価し,これらのプロセスの意図した結果の達成を確実にするために必要な変更を実施する。
- h) これらのプロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。
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上記の条項では「~しなければならない」の文言が2カ所出て来ます。前段の「適用を決定しなければならない」と後段の「また、次の事項を実施しなければならない」です。
文章自体は続いて書き記されていますが、内容は異なり、前段が一つの要求事項、そして後段が更に別の要求事項ということになります。そして後段の「~しなければならない」はその後に続くa)~h)の各個別項目につながっています。つまりここで記された「~しなければならない」は1回登場する言葉ですが、実際にはa)~h)の8項目すべてにかかる「~しなければならない」なのです。
このようにしてみていくと、ISO規格要求事項としての文書の中で「~しなければならない」の記載は100カ所程度に出てくる、という説明を前回しているのですが、実際に対応しなければならない項目はその数倍に膨れ上がります。そのためISO対応は大変だ、という意識を持つ方が出てきてしまうのが実情です。
確かに楽に対応できるとは申しません。一から対応しようと思えばかなり大変になるかもしれません。しかし今あなたが所属する組織が多少なりとも社歴を重ねている会社であれば、会社としての仕組み、お客様とのやり取りというものは一定レベルで出来上がっているはずです。そしてそれらの出来上がっている仕組みの基本部分こそがISOの規格要求事項と重なっている部分になってくるのです(特にISO9001の場合)。ISO14001のように環境分野に特化した規格対応となると、今あなたが所属している組織で出来ているかどうかは何とも評価判断はできませんが、組織として継続しているイコール一定レベルのマネジメントができているということは間違いありません。
そこからそれぞれの会社組織におけるISOの有効活用法を考えて行って欲しいのです。
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