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外注先のコンサルタント選定に際してのお話を複数回にわたって続けてきました。今回はもう一つの外注先としてよく皆様が使われているISOの研修サービスについてのお話をしていきます。
ISOに取り組もうとされている組織の方がISO規格や制度に関する知識を身に付けたい場合はコンサルティングを受けるより、外部の一般集合研修を受講した方は、金銭的にはだいぶお安く上がることになります。
ただし、コンサルティングを受ける場合は、自社で複数名の方が関与することになりますが、研修の場合はあくまで一人単位です。つまり、5人のメンバーがISOを学びたい、と思うと、コンサルタントに支払う1日当たりの費用とあまり変わらなくなってしまいます。狙いをはっきりとした上で、どの外部サービスの利用が効果的か検討した上で選定してください。
研修を受けると言ってもその狙いが定まらないとどの会社の何の研修サービスを利用すればよいか決められません。研修の利用は大きく分ければ3つです。その詳細をご説明します。
① 規格の理解を深めるための研修
② 内部監査員資格取得のための研修
③ 事務局としての高いレベルの知識技能習得のための研修
①については、独学独習でも基本問題ありません。なかなかその時間が取れないし、細切れの時間では習得できない場合はやはり外部専門機関の研修受講がよいでしょう。ISO規格の概要を理解したいということであれば半日、規格をじっくり学びたいということであれば2日間の研修受講がよいでしょう。ただし、半日セミナーや2日間セミナーは研修会社として提供しているところがあまりありません。ネットを活用してうまく見つけてください。コンサルタントに個別にオーダーしてお願いするのであればその点はフレキシブルに対応してくれるでしょう。
②については、外部専門家の活用という点では一番活用価値があるものです。研修自体も全国各地で数多くの研修会社(研修機関)が開催していますので、比較的容易に見つけることができるでしょう。1日コースあるいは2日間コースとしての提供が一般的です。
予算及び時間が許すのであれば2日間コースを選ぶようにしましょう。内容としては1日でもカバーできますが、どうしても駆け足で様々なことを伝える研修になってしまいます。聞く時間が多く、自分で考えアウトプットを出す時間が少なくなってしまいます。特にアウトプットは学習効果を高める上では大事にしたい部分です。そのためにも2日間研修を選びたいものです。
内部監査員になるための研修受講は本来であれば3日間かけてじっくり学ぶべきほど多岐にわたります。3日間学べば内部監査員として研修受講後すぐさま現場に出ることもできるでしょうが、なかなか3日間、仕事を離れて研修受講を行うことは困難なこともあり、今は3日間研修コースを開催している研修機関も昔はありましたが今ではほとんどないことから本当に必要と感じるようであればオーダーメード型研修で対応しましょう。
この研修ももちろん自社内で行うことは可能です。認証を取得して何年か経っている会社であれば社内にISOの経験者が育ちます。その人が教材作成そして講師を務めることができれば外部にお金を払って研修を受講するよりも効果的である場合も出てきます。しかしながら研修の企画、運営は意外と手間暇がかかります。毎年大人数の研修を行うのであればまだしも、年に1~2名程度の人員補強ということであれば外部研修の活用の方が効率的でしょう。研修機関選定のコツは機会があれば触れたいと思います。
一つだけ補足しておくと、たとえ外部の高額な研修と言えども、2日間研修を受けてきたから、即実践で活躍できる内部監査員になる、ということは至難の技です。その人のセンスにも若干よりますが、管理職経験が相当に長い人でないと、2日間研修受講後にすぐ内部監査員として活躍するのは困難と思っておいてください。内部監査員もそれだけ奥が深い仕事をするからです。
さて、最後の③ですが、これは何を指すかというとISO審査員資格を取得するためのコースになります。通常は月曜から金曜までの5日間連続のそして朝から夜まで研修がずっと続くISO研修で最も大変な研修コースです。このコースを受講して最後にある試験に合格すると、ISO審査員として登録する上での最も難関な要件を満たすことになります。このコースは、ISO事務局として、日頃審査対応等する必要がある方であれば受けておいた方が良い研修です。但しこの研修受講も必須ということではありません。審査対応で四苦八苦してもっとISOに関する知見を増さなければダメだ、という切実なる思いを持った方であれば受講された方が良いでしょう。
研修についてはまだまだ色々お伝えしたいことがありますが、紙面の関係で今回はここまでとしたいと思います。機会あれば別項目で色々書き連ねたいと思います。
外部専門家(外注会社)としてコンサルタントと研修機関についての説明をしてきました。
本テーマの最後に最近このサービスを利用される組織が増えていることから事務局代行の外注について触れたいと思います。
ISOは認証を取得すればおしまい、ということではありません。実は認証を取得してからが本当の始まりなのです。世の中では認証を取得しないとある取引先との契約が継続できないことから、認証取得を目的とした対応を取る会社が多いことは事実です。認証取得で会社の見える化、標準化などが進むといった効用もありますが、一方でとることが目的となると、認証取得がピーク地点到達になり、それ以降どんどん下り坂、ということになってしまいます。本来は認証取得はあくまで一里塚で、認証取得後何を目指すのかによって組織の成長発展度合いも変わってきます。その点をしっかり考えたISOの運用体制を構築したいものです。
そしてISOの運用は認証取得時に比べれば負荷は減るものの、決して楽にできるものではありません。しっかりと組織経営、そして組織の繁栄ということを考えればISO対応の日常での取り組みは意義あるものと感じられるはずですが、その部分への理解が浅いとこんな面倒なことを続けないといけないのか、というネガティブな反応が出てきてしまいます。認証取得時に一生懸命取り組んだ方が定年退職にでもなってしまうと、なかなかその後を引き継いで頑張ろう、という方が出てこない、というリスクもあります。ISOに限った話ではありませんが、このようにしてせっかく高いところに到達したのにいつの間にかそのポジションをキープできずに低いところにずり落ちてきてしまった、という状況になっている組織は少なくありません。
そこに登場してきたのがISO事務局の代行サービスです。こちらもネット検索をすると同サービスを提供している会社のサイトが複数出てくるのがわかると思います。多くの会社が低額でISO事務局として行うべき業務を全て代行します、というサービスを提供しているように感じると思います。筆者もそれらのサービスを熟知しているわけではありませんので、詳細に論じる資格はありませんが、専任担当者を社内に置くよりも費用的には格安の料金サービスです。従って中小企業の方々からは評価されているサービスになっています。コンサルティング会社の経営側視点からすれば非常に良い目の付け所のサービスと思います。ISO対応に貴重な社内人材を取られるよりは、その部分は外注会社を効果的に活用し、貴重な社内人材はあくまで自社のコアコンピタンスを高めるための活動に専念してもらう、というスタンスは筆者もうなずけます。
外注会社としてISO事務局代行サービスについての続きです。
ISO事務局代行サービスは数年前からはやり出した割と新しいサービスです。中小企業にとっては利用価値はあるでしょう。ですがそこにはリスクも内在していると感じています。今回はそこを深掘りしていきます。
この事務局代行サービスの利用に当たって、どうしても注意しておくべき点は、便利だからと言って何から何まで外注業者頼みで、ISO対応が自社業務からかい離していってしまうリスクがそこには大いに存在している、という点をしっかり認識しておくことです。
ここは経営者が大いに注意を払って、そのリスクを認識し、そのリスクが顕在化しないかということに目を光らせる必要があります。
ISO対応は本業を補完するためのものであって、認証取得のためにするものではありません。組織の根源的価値の維持向上のために仕組みを作って、社内の見える化、標準化を推進し、さらにはそれと人材育成や研究開発による新商品、新規事業展開などのたゆまない努力の継続によって組織の成長発展は続きます。その下支えをするのがISOマネジメントシステムです。あくまでISOは縁の下の力持ちです。
その部分をもし、何から何まで丸投げ状態で外部の専門家に任せてしまったとすると、その外部専門家が社長の右腕のような存在で本当にその会社の成長発展を願って、時には苦言を呈するようなことまで言及できる本物コンサルタントであればここでの話は杞憂に終わるでしょう。ですが、もし認証取得及びその維持が目的になってしまうと、とりあえずこのくらいやっておけば認証維持上は問題ないはず、ということになって組織の足腰がどんどん弱くなる、それも急激ではなく、徐々に徐々に気づかないうちに弱まっていく、ということになりかねません。
事務局代行サービスのコンセプト自体は筆者もなるほど、と思う部分がありますが、使う側がその本質をしっかり踏まえて使いこなさないと、あとあと泣きを見ることにすらつながりかねません。
コンサルタントや研修機関の活用同様、しっかりとそれらの外部サービスの利用に関しては自分たちで見極める力を持ちましょう。
繰り返し伝えていることですが、目的と目標の違いをしっかり認識していれば上述の部分の意味するところもご理解いただけると思います。
目的と目標の違い、あれっと思った方はこちらのコースでしっかり筆者が解説しています。似ているようでその言葉の意図するところは大きく違います。どうぞご利用ください。