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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.488 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード 人々14 (職務記述書)***
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ISO9001:2015箇条「7.1.2 人々」には「組織は,品質マネジメントシステムの
効果的な実施,並びにそのプロセスの運用及び管理のために必要な人々を明確
にし,提供しなければならない」とあります。
前回から、内閣官房が本年8月に発表したJOB型人事の指針の中から、10年以
上をかけて人事体制改革を断行した日立製作所の事例を取り上げています。
今回はその続きです。
新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|内閣官房ホームページ
■■ 2. ジョブ型人事の骨格(2)等級制度 ■■
(グローバル共通での等級の整備)
〇2012年に全世界のマネージャー以上の5万ポジション、2015 年からは非
管理職のポジションも含め、影響・折衝・革新・知識の4要素を用いて職
務の大きさを評価し、それぞれの職務の格付を実施。これにより、グロー
バル共通での11 階層の等級を整備した。
(2種類の職務記述書)
〇職務記述書(JD)の作成
一般的・標準的な書式を用いて、職種区分と階層区分に応じた大くくりの
職務記述書「標準JD」を540 種類作成。
〇ポジションに対する個別の職務記述書「個別JD」を作成。
個別JD の作成にあたっては、詳細な内容を現場の上司と部下が話し合っ
て決定している。部下が職務記述書を「自分ごと」として捉え、「成長目
標」としてやりたい仕事の具体化やスキルの強化・開発に活用することを
期待し、上司や人事部が作成したものを一方的に説明する方法はとらなか
った。
〇個別JD には、職務に求められる具体的な成果・KPI は記載せず、大まか
なミッションを定めるに留めることとした。都度の状況に応じたJD の変
更・メンテナンスの負担が重くなることを避けた。
〇標準JD は人材マネジメントの基盤やフォーマットとして利用。個別JD
は人材の育成・配置・獲得や、社員による具体的な成長目標の設定に活用
している。
〇JD の記載項目は以下のとおりである。
・ポジションごとの職務の概要
・求められる責任
・求められる能力
(役割の見直しとメンテナンス)
〇110 職種を大くくり化した28 職種分類ごとに「メンテナンス委員会」を
組成し、ポジションの改廃や内容の見直しを定期的に議論することで、そ
の都度の経営戦略に沿ったポジションを整備している。
(シニア処遇制度)
〇2019 年に再雇用社員に対する処遇制度を改定。定年後も引き続き管理職
として同じ職務に就く社員は定年前と同じ等級で処遇。
非管理職に対しても、従事する職務の大きさに応じて処遇が決定される報
酬制度を整備した。
〇2024年4 月から、従来の65 歳が上限年齢であった継続雇用制度を段階
的に70 歳までに延長している。
〇40 歳時点でのキャリア研修を新設し、早期に自らのキャリアを検討する
機会を提供している。また、50 歳研修により、定年後を見据えたキャリ
アを自律的に考える機会を拡充している。
■■ 2. ジョブ型人事の骨格(3)報酬制度 ■■
(グローバル報酬フィロソフィー)
〇日立グループとしてグローバル全体の方針を整備した。中核となるのは以
下の3 つのポイントである。
(1)市場競争力の確保
市場に照らして適切な報酬構成・水準とする。
(2)ペイ・フォー・パフォーマンス(Pay For Performance)
職務の役割・責任、パフォーマンスを反映させて報酬を決定する。
(3)透明性の維持
評価基準・プロセスを開示すると共に、評価結果だけでなく理由を本人
にフィードバックする。
(職務による報酬への一本化)
〇2014年に日立製作所本体の管理職の報酬を職務給に一本化した。その後国
内グループ会社の管理職に同制度を順次展開している。
〇2024年6月より、非管理職においても日立製作所本体で職務給に移行して
いる。JD に記載された職務とこれに紐づく報酬水準を明確にし、社内にも
情報を公開している。
〇配偶者扶養手当などの属人的な報酬は廃止。まずは住宅支援制度を中心に、
福利厚生制度を労使間で議論している。
(「年収管理」による報酬額の算定)
〇管理職の報酬の算定
「年収管理」という考え方を採用している。年度初めに、各ポジションに期待
される貢献度合いに応じて「期待年収」が提示される。
期待年収は、基本給と賞与から成り、基本給は前年度からの期待値の伸びが
反映され、「前年度の成果・貢献の達成状況」、「当年度の取組目標のレベル」、
「組織全体の業績見通し」を総合的に評価して決定される。
〇賞与については、当年度の予算に応じた標準賞与額が予め示される。その上
で、「全社業績」、「部門業績」、「個人業績」の実績評価(成長度及び目標の
達成度)に応じて、等級ごとに定められた増減額が反映され、最終的な支給
額が決定する仕組みである。上位等級になるほど、それぞれの業績が賞与に
大きく反映される点が特徴である。
(つづく)