品質経営を考える7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.465 ■□■
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*** 品質経営を考える7 ***
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CG(コーポレートガバナンス)コードの構成は5章構成ですが、
企業経営に重要であると思われる製品「品質」のことが全く出て
こないことに違和感を覚えています。株主の権利保護、取締役の
執行監督・監視などは当然ですが、企業経営の健全性を主張する
のであれば品質についても一言記述していただきたいと思います。

■■ CGコード第3章 ■■
CGコードの第3章は「情報公開」を扱っていますが、この章に
書かれている情報公開も「品質経営」には必須なことです。
「品質経営」とは、製品・サービスの品質を組織経営の中核に置
いて経営を行うという概念であると前回申し上げましたが、組織
は品質の良い製品・サービスを市場に提供し、顧客に価値を与え
て持続的に存在していけます。その製品、サービスの品質につい
て、近年データ改ざん、認定品の捏造、事実の隠蔽など情報公開
に関する問題が多く発覚しています。

【基本原則3】
 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営
戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報
について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づ
く開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建
設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報
(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、
情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

【原則3-1】(情報開示の充実)
 上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社
の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガ
バナンスを実現するとの観点から、以下の事項について開示し、
主体的な情報発信を行うべきである。

(i)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(ii)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバ
ナンスに関する基本的な考え方と基本方針
(iii)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっ
ての方針と手続
(iv)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指
名を行うに当たっての方針と手続
(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取
締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名
についての説明

【補充原則3-1-(1)】
 上記の情報の開示(法令に基づく開示を含む)に当たって、取
締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者に
とって付加価値の高い記載となるようにすべきである。

【補充原則3-1-(2)】
 上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、
合理的な範囲において、英語での情報の開示・提供を進めるべき
である。
 特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる
情報について、英語での開示・提供を行うべきある。

【補充原則3-1-(3)】
 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリ
ティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資
本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題
との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供
すべきである。

 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収
益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要な
データの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みで
あるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充
実を進めるべきである。

【原則3-2】(外部会計監査人)
 外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資
家に対して責務を負っていることを認識し、適正な監査の確保に
向けて適切な対応を行うべきである。

【補充原則3-2-(1)】
 監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきである。
(i)外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切
に評価するための基準の策定
(ii)外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有している
か否かについての確認

【補充原則3-2-(2)】
 取締役会及び監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきで
ある。
(i)高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保
(ii)外部会計監査人からCEO・CFO等の経営陣幹部へのアク
セス(面談等)の確保

(iii)外部会計監査人と監査役(監査役会への出席を含む)、内部
監査部門や社外取締役との十分な連携の確保
(iv)外部会計監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合や、
不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立

出典 日本取引所グループnlsgeu000005lnul.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第3章の解説 ■■
補充原則3-1-(3)には、サステナビリティについて、および人的
資本や知的財産への投資等についての情報開示を求めていますが、
ここに「製品(サービスを含む)品質」についての情報開示も追
加していただきたいと思っています。
また、補充原則3-2-(2)には、(ii)外部会計監査人からCEO
(Chief Executive Officer)・CFO (Chief Financial Officer)等の
経営陣幹部へのアクセス(面談等)の確保が求められています。
CEO、CFOに加えてCQO (Chief Quality Officer)も加えていただ
きたいと思います。
これまで7回にわたって品質経営とCGコードの関係について説
明をしてきましたが、全体を通じて発信したかったことは、上場
企業において影響力が強いCGコードに品質への言及がないので、
経営の要である製品品質について一言、二言推奨あるいは要求を
してほしいということです。
さらに言えば、株主、機関投資家への還元を言うのであれば、そ
の原資は製品・サービスの品質にありますので、「還元」という
結果と同時に「品質」という要因についてもCGコードは言及す
べきであると考えます。

(つづく)

品質経営を考える6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.464 ■□■
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*** 品質経営を考える6 ***
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品質経営を考えると称して、これまで5回CG(コーポレートガ
バナンス)コードについて説明してきました。しかし、読者から、
このメルマガで説明のあったCGコードは、「品質経営に触れて
いないのではないか」という疑問が寄せられましたので、今回は
その疑問にお答えしたいと思います。

■■ CGコード第2章 ■■
CGコードの第1章に続き第2章の説明に入ります。CGコードの
第2章は「企業の社会責任」を扱っていますが。まさにこの章に
「品質経営」に関係することが出てきます。
「品質経営」とは、製品・サービスの品質を中核において経営を
行うという概念です。組織は製品・サービスを市場に提供し、顧
客に価値を与えて持続的に存在していけます。品質の悪い製品・
サービスは自ずから市場から排除され、そのような製品・サービ
スを提供し続けている組織は退陣を余儀なくされます。

【基本原則2】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出
は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様
々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果である
ことを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働
に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場
や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けて
リーダーシップを発揮すべきである。

【原則2-1】(中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定)
上場企業は、自らが担う社会的な責任についての考え方を踏まえ、
様々なステークホルダーへの価値創造に配慮した経営を行いつつ
中長期的な企業価値向上を図るべきであり、こうした活動の基礎
となる経営理念を策定すべきである。

【原則2-2】(会社の行動準則の策定・実践)
上場会社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の尊
重・健全な事業活動倫理などについて、会社としての価値観を示
しその構成員が従うべき行動準則を定め、実践すべきである。取
締役会は、行動準則の策定・改訂の責務を担い、これが国内外の
事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにすべきで
ある。

【補充原則2-3-(1)】
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊
重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引
先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステ
ナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益
機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企
業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り
組むよう検討を深めるべきである。

出典 日本取引所グループ
nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第2章の解説 ■■
第2章は企業の「健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土
の醸成に向けて」の活動について推奨事項を掲げています。

「価値創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値向上を
図るべきであり、こうした活動の基礎となる経営理念を策定すべ
き」であるとして、「気候変動などの地球環境問題への配慮、人
権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、
取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サ
ステナビリティを巡る課題への対応」を求めています。

ただ、品質経営の観点から見ると「品質」の2文字がありません。
「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の
健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・
適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを
巡る課題への対応」の文中を次のように改訂することを提案して
いきたいと思います。

「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の
健康・労働環境への配慮、『製品・サービスの質』や公正・適切な処
遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、
サステナビリティを巡る課題への対応・・・」

(つづく)

品質経営を考える5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.463 ■□■
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*** 品質経営を考える5 ***
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上場企業の組織経営に大きな影響を持っている、コーポレート
ガバナンスコード(CGコード)は出来てからまだ10年です。
企業行動の規範にはいろいろありますが、CGコードが上場企
業のアキレス腱を握っているからだと思います。上場企業のア
キレス腱とは、株主総会に上程した議案が否認されることです
が、この上程議案は株主の投票によって決定されます。CG
(コーポレートガバナンス)コードは、金融庁/東証(日本取
引所グループ)によって運用されていますが、法律ではないの
で強制力はありません。会社が、株主をはじめ顧客・従業員・
地域社会などの立場を踏まえたうえで、透明・構成かつ迅速・
果敢な意思決定を行うための仕組みです。全部で5章構成の比
較的短い文書です。でもここに「品質」の一文字が無いことに
違和感を覚えています。

■■ CGコード第1章-3 ■■
CGコードの第1章は「その1~その7」まであり、株主の権利
について事細かく上場企業に注文を付けています。今回はその3、
すなわち「資本政策の具体的な方針」推奨事項について説明をし
たいと思います。

【原則1-3】(資本政策の具体的な方針)
上場会社は、資本政策の動向が株主の利益に重要な影響を与え
得ることを踏まえ、資本政策の基本的な方針について説明を行う
べきである。

引用 nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第1章-3の解説 ■■
【解説】
「資本政策」というISO関係者には聞きなれない言葉がでてきま
す。資本とは会社が活動する元となる資金のことですが、事業活
動の進展・拡大につれて追加資金が必要になってきます。そこで
事業資金を調達する計画を作成する必要がでてきますが、必要と
なりそうな資金額を事前に見積もった上で、資金調達の方法を計
画します。できるだけ効率的な資金調達をするためには、足りな
くなった都度調達することではリスクが高く、経営の維持や企業
価値の向上にマイナスになってしまいます。
1-3で求めていることは、こうした資金調達を含め金融分野で代
表されるような指標を使用して基本的な考え・方針を株主にする
べきであるという推奨をしています。
金融の世界で資本に関係する代表的な政策、指標には次のような
ものがあります。
1.自己資本比率の向上
企業自身のお金と借金との比率のことで高いほど倒産リスクは
低く、経営は安定していると見なせます。
次の式で計算されます。
・自己資本比率=自己資本÷総資本(自身のお金+借金)

2.資本効率の向上
企業の資金がどのくらいの利益を生み出してるかを表す指標で
す。資本効率の代表的な指数には、ROA(総資産利益率)やROE
(自己資本利益率)などがあります。ここでは、ROAやROEに
は触れませんが、資本効率が高い企業は、少額の資本で多くの利
益を稼いでいると言え、資本効率は株式投資の際に企業の収益性
を測る指標としても用いられています。

3.株主配当性向の安定化
年間を通じた企業活動の結果、利益がでればその最終利益(税
引き後純利益)の何割かは投資をした株主に還元します。どのく
らいの率で株主配当を行うのかは、業種、企業履歴、企業政策に
よりますが、一般には50%以下が好ましいと言われています。
企業の支払い余力は高いほど良いので、配当性向は高いほど望ま
しいと思われがちですが、100%を超えるような配当は企業が無
理をして株主を引き留めようとしている可能性があり注意が必要
です。上場企業の多くの株主配当性向は20~40%くらいのです。

4.自己株式取得
最近市場に出回っている企業自身の株式を取得するケースが目
立ちます。本来株式は株主に所有してもらうべきものですが、発
行した企業自身が自分の株を取得するという本来の姿と異なるこ
とが行われています。自己株式を取得すると、市場流通の株式が
少なくなりますので、自己株式を取得することで、1株当たりの
価値を高めることができます。株式の価値は、需要と供給で成り
立っていますので、需要が増えればそれだけ株式の価値は上がり、
逆に供給が増えれば1株当たりの価値は下がります。自己株式の
取得は株式の供給数を減らすことになり、現在の株主には好評な
政策です。ただ、自社株買いは会社の内部留保された現金を使っ
て行うため、株主への利益還元につながるにしても、ある限界で
しかできない政策です。

(つづく)

品質経営を考える4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.462 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 品質経営を考える4 ***
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CG(コーポレートガバナンス)コードの構成は5章構成で、比
較的短い文章で述べられていますので、この機会にISO関係者
も中身をざーっと理解しておくと良いと思います。5章構成の中
に、株主の権利保護、取締役の執行監督・監視などが書かれてお
りそれらは当然ですが。企業経営に重要であると思われる「品質
のこと」が全く書かれていないことに違和感を覚えます。

■■ CGコード第1章-2 ■■
CGコードの第1章は「その1~その7」まであり、株主の権利
について事細かく上場企業に注文を付けています。今回はその2、
すなわち株主総会に関する推奨事項について説明をしたいと思い
ます。

「第1章 株主の権利・平等性の確保
【原則1-2】(株主総会における権利行使)
上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であること
を認識し、株主の視点に立って、株主総会における権利行使に係
る適切な環境設備を行うべきである。

【補充原則1-2-(1)】
上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことに
資すると考えられる情報については、必要に応じ適確に提供すべ
きである。

【補充原則1-2-(2)】
上場会社は、株主が総会議案の十分な検討期間を確保すること
ができるよう、招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつそ
の早期発送に努めるべきであり、また、招集通知に記載する情報
は、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送する
までの間に、TDnetや自社のウェブサイトにより電子的に公表す
べきである。

【補充原則1-2-(3)】
上場会社は、株式との建設的な対話の充実や、そのための正確
な情報提供等の観点を考慮し、株主総会開催日をはじめとする株
主総会関連の日程の適切な設定を行うべきである。

【補充原則1-2-(4)】
上場会社は、自社の株主における機関投資家や海外投資家の比
率等も踏まえ、議決権行使の電子行使を可能とするための環境作
り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英
訳を進めるべきである。
特に、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに
議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきである。

【補充原則1-2-(5)】
信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が、株主総会
において、信託銀行等に代わって自ら議決権行使の行使等を行う
ことをあらかじめ希望する場合に対応するため、上場会社は、信
託銀行等と協議しつつ検討を行うべきである。

引用 nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第1章-2の解説 ■■
第1章の2は株主総会における詳細なこと(出席株主には詳細で
はないかもしれないが)であるので、全6項目のうち4項目
(1-2-(2)、1-2-(3)、1-2-(4)、1-2-(5))は省略して説明します。

【原則1-2】(株主総会における権利行使)
上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であること
を認識し、株主の視点に立って、株主総会における権利行使に係
る適切な環境設備を行うべきである。
【解説】株主が総会の場に出やすいような開催場所の設定、招集
通知をできるだけは早く(1か月前くらい)出す、インターネッ
トによる議決権行使などの便宜が考えられる。

【補充原則1-2-(1)】
上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことに
資すると考えられる情報については、必要に応じ適確に提供すべ
きである。
【解説】TDネット(Timely Disclosure network:東京証券取引
所が運営する適時開示情報ネットワーク)を使って情報開示する
ことが考えられる。

【補充原則1-2-(2)】、【補充原則1-2-(3)】、【補充原則1-2-(4)】
(1-2-(1)と重複する部分が多いので省略)

【補充原則1-2-(5)】
(詳細な推奨事項に及んでいるので省略)

(つづく)

品質経営を考える3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.461 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 品質経営を考える3 ***
—————————————————————
CG(コーポレートガバナンス)コードは、金融庁/東証(日本取
引所グループ)によって運用されていますが、法律ではないので
強制力はありません。会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域
社会などの立場を踏まえたうえで、透明・構成かつ迅速・果敢な
意思決定を行うための仕組みです。全部で5章構成の比較的短い
文書です。

■■ CGコード第1章 ■■

「第1章 株主の権利・平等性の確保
【基本原則1】
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応
を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる
環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的
な平等性を確保すべきである。
少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、
権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じ
やすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。
【原則1-1】(株主の権利の確保)
上場会社は、株主総会における議決権をはじめとする株主の権
利が実質的に確保されるよう、適切な対応を行うべきである。
【補充原則1-1-(1)】
取締役会は、株主総会において可決には至ったものの相当数の
反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは、反対
の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話そ
の他の対応の要否について検討を行うべきである。
【補充原則1-1-(2)】
上場会社は、株主総会決議事項の一部を取締役会に委任するよう
株主総会に提案するに当たっては、自らの取締役会においてコー
ポレートガバナンスに関する役割・責務を十分に果たし得るよう
な体制が整っているか否かを考慮すべきである。他方で、上場会
社において、そうした体制がしっかりと整っていると判断する
場合には、上記の提案を行うことが、経営判断の機動性・専門性
の確保の観点から望ましい場合があることを考慮に入れるべきで
ある。
【補充原則1-1-(3)】
上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事
実上妨げることのないよう配慮すべきである。とりわけ、少数株
主にも認められている上場会社及びその役員に対する特別な権利
(違法行為の差止めや代表訴訟提起に係る権利等)については、
その権利行使の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、
十分に配慮を行うべきである。

引用 nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第1章原則の解説 ■■
【原則1-1】(株主の権利の確保)
上場会社は、株主総会における議決権をはじめとする株主の権
利が実質的に確保されるよう、適切な対応を行うべきである。
【解説】
株主への情報公開を意図している。例えば、Timely Disclosure
network(TDnet):東京証券取引所が運営する適時開示情報ネッ
トワーク)で、企業の状況開示を迅速に行うとか、株主総会の招
集通知の早期開示、関連する書面の早期発送などを行う。

【補充原則1-1-(1)】
取締役会は、株主総会において可決には至ったものの相当数の
反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは、反対
の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話そ
の他の対応の要否について検討を行うべきである。
【解説】
株主総会において相当数(20%前後)の反対票が投じられた場合
には、その原因を分析し、分析した結果を株主に公表する。

【補充原則1-1-(2)】
上場会社は、株主総会決議事項の一部を取締役会に委任するよう
株主総会に提案するに当たっては、自らの取締役会においてコー
ポレートガバナンスに関する役割・責務を十分に果たし得るよ
うな体制が整っているか否かを考慮すべきである。他方で、上場
会社において、そうした体制がしっかりと整っていると判断する
場合には、上記の提案を行うことが、経営判断の機動性・専門性
の確保の観点から望ましい場合があることを考慮に入れるべきで
ある。
【解説】
「自らの取締役会においてコーポレートガバナンスに関する役割・
責務を十分に果たし得るような体制」とは次のような例があげら
れる。
(1)各取締役がCGコードを理解し、行動規範に沿って活動する
ことの規定の作成
(2)各取締役の担当執行状況を取締役会で報告することの規定の
作成
(3)上記規定には重要事項報告内容及び報告頻度、時期を明記
(4)取締役会における各取締役間の良好なコミュニケーションと
相互牽制の実施
(5)監査役会の各取締役の執行状況の確認
(6)社外取締役の各取締役の執行状況の確認

【補充原則1-1-(3)】
上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事
実上妨げることのないよう配慮すべきである。とりわけ、少数株
主にも認められている上場会社及びその役員に対する特別な権利
(違法行為の差止めや代表訴訟提起に係る権利等)については、
その権利行使の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、
十分に配慮を行うべきである。
【解説】
株主から関係書類の閲覧要求があって場合には原則応じるし、株
主からのその他要求については、法令に従って対応する。
(つづく)