ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-20 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.240 ■□■
**ISO9004:2018持続的成功を達成するための指針-20**
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イノベーションに関連して、経団連のSociety 5.0の中に紹介されている出島戦略を紹介したいと思います。出島と言うと長崎の出島を思い起こしますが、まさしく経営本体から離れた独立行動部署を出島と称しています。

■□■ 出島のメリット ■□■
次代を担うイノベーティブな新規事業の創出は持続的成功に欠かせません。出島のメリットは、このような次世代に欠かせない新事業を大胆に俊敏に達成させる企業活動の実現です。大企業には、人材、技術、資金などのリソースが比較的多く存在しますが、社会に大きなインパクトを与える新規事業はなかなか生み出せていないのが現状です。組織内で新商品の開発の提案がされても新規投資予算の許可が下りないことが多くあります。
イノベーションにはリスクが伴いますが、担当役員が個人的にリスクを負うことを嫌がり判断を先送りすることがイノベーションを起こりづらくしています。

■□■ 出島の作り方 ■□■
近年、オープンイノベーションの重要性に対する認識が社会に広まりつつありますが、今まで以上により大胆な体制整備が必要です。
その具体的な戦略として、会社本体と意思決定や評価制度を切り離し、物理的にも距離を置いた異質な組織を「出島」のように立ち上げる方策が考えられています。既存の組織には、複雑な承認プロセスやルール、しがらみなどが多く、迅速で大胆な取り組みには適していない場合が多いようです。
出島を作る場合は、組織本体トップの意思のもとで、出島に権限、人材、資金、技術を投入し、全権委任かそれに近い形を出島責任者に与え、自由に闊達に活動してもらうことが出島づくりに必要です。

■□■ 組織本体との競合 ■□■
イノベーションを起こすためには、ためらいがあってはならないと思います。もしイノベーションの実現に有効であるならば、出島の新事業が既存事業との間で競合することを厭わってはなりませんし、外部との提携、場合によってはM&Aも積極的に行うことが重要です。また、事業化に際して、新事業会社の経営陣や中核人材が、その会社の株式をある程度のレベルまで取得できることも重要です。現状では、社内ベンチャーを興し、成功すれば子会社化することが多いのですが、イノベーション推進者が子会社の株式を取得することまでは行われていません。

■□■ リスクとリターン ■□■
優秀な人材はリスクを負う代わりにリターンを求めます。社内ベンチャーにおけるリターンが少ないのであれば、自分で起業してしまいます。社会的にはそれでも構わないのですが、既存の大企業が自ら変革しようとするならば、その先導的な役割を担う人材には十分なリターンを与える制度の導入が必須です。
具体的には、事業が成功した場合には、IPO または他社による M&A、自社による株式の買い戻しなどを経て、数十億円レベルの資産が形成される制度設計が必要でしょう。
スタートアップして成功した場合、1,000 億円オーダーの資産を作ることも可能ですが、出島戦略でも数十億円規模の資産を得ることができるという制度設計がチャレンジ旺盛な研究者の出現を促進します。数十億円規模の資産は、出島戦略のリスクの低さに対して、十分に大きなリターンといえます。従来の社内ベンチャーの場合、資本比率によっては、親会社の承認プロセスなどにより十分なスピードが出せない場合が多いので親会社の資本比率をできるだけ低くしてマイノリティーとなる勇気も必要です。
大企業の価値は、どれだけの破壊的イノベーションを社会に生み出したかで評価すべきでしょう