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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.280 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 誰が診断するか-内部診断と内部監査23 ***
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新型コロナウイルス終息後の世界について、予測も含めてこれ
からの変化を注視していく必要があります。そうした変化に備え
る意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行ったら
どうでしょうか。いままで経営分野のプロセス、主要分野のプロ
セス、支援分野のプロセスについて話しをしてきました。それで
はこれらの診断は誰が行うのが良いでしょうか。今回は内部診断
を行う人は誰がいいのかについてお話をします。
■□■ 診断する人 ■□■
内部診断は本来社長がすべきです。しかし、社長は忙しく時間が
取れませんので、一般には役員あるいは部長が大骨の診断をする
ことが多いようです。
今から40年前に遡りますが、私がセイコーエプソンに勤務して
いた頃、会社では社長診断が行われていました。今でこそ理解で
きますが、会社のトップである社長にはとてつもない多くの仕事
があります。勿論会社の規模にもよりますが、社長が自身の目で
確認したいと思う事柄は無限とは言いませんが、間違いなく2人
分、3人分の仕事量になると思います。
■□■ 権限移譲 ■□■
当然のことですが、組織は社長一人の力で運営管理することはで
きません。社長は組織の運営管理の役割分担を決め、役員に権限
を委譲します。権限移譲しても、最終責任は社長にあり、総ての
責任までを役員に移譲することはできません。
社長は最終責任を負えるように権限委譲した仕事の結果をチェック
する必要があります。しかし、総てをチェックすることは時間的、
物理的に無理があります。
必然的に、総てをチェックするのではなく、効果的、効率的に権限
移譲した仕事をチェックする方法を考えざるを得ません。その方法
の一つが現場を見るということです。
■□■ 現場を見ること、診断 ■□■
現場を見ることでどんなチェックができるでしょうか?
社長には既にいろいろな情報が入っています。売り上げが伸びた、
減った、お客様からのクレームがある、無災害が途切れた、事故が
起きた、パワハラがあるなど日常あらゆる情報がその気になれば
入ってきます。
多くの小企業では、日常茶飯事に社長が現場を見ますので、その
ような情報の真偽、要因、状況などは手に取るように分かります。
しかし、組織規模が100人を超え、中小企業規模300人くらいに
なりますと、社長が現場を見る機会がめっきりと減り、人員が
1,000人を超えるようになると社長が現場を見ることはほとんど
なくなるのが現状のようです。
現場を見ると、当然ですが現場で起きていることが分かります。
・活動
-物づくりならば、機械の稼働、材料の在庫、人の動き
-サービス業ならば、接客態度、雰囲気、
-食品関係ならば、味わい
-倉庫関係ならば、物流、サプライチェーン
-情報セキュリティならば、サーバー、PC、IoT
・設備
-メンテナンス状態
-スペース
-活動環境、室温、明るさ、騒音
-エネルギー、電気、油
・環境
-5S
―廃棄物
―排気、排水、屋外貯蔵、外溝美観
-駐車場
・人々
-活力、明るいか暗いか、笑顔があるか
-挨拶、態度
-服装、身なり
■□■ トップが診断する意義 ■□■
以上のようなことはほんの例にすぎません。私が思いついたこと
を羅列しただけです。トップ診断の意義は「現場はうそをつかな
い」ことにあります。大企業になればなるほど、トップは間接的
な情報に頼らざるを得ません。しかし、間接的な情報には次の
3種類が一体混然となっていることを知っておかなければなり
ません。
・事実
・要望
・感情
トップが現場を見ることは現場にもある種の緊張、抑制を生みま
す。事前に情報を出して準備させることが良いか、急に訪問して
事実を直視する方がいいかは、組織の置かれた状況によって変わ
ると思います。