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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.72 ■□■
*** 附属書SL究極のキーワード2***
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■□■附属書SL「組織の能力」について■□■
附属書SLには次の要求があります。
「4.1 組織及びその状況の理解
組織は,組織の目的に関連し,かつ,そのXXXマネジメント
システムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える,
外部及び内部の課題を決定しなければならない。」
この箇条で要求されていることは
「外部及び内部の課題を決定しなければならない」ですが、
キーワードはその前にある「組織の能力」です。
なぜかというと、外部及び内部の課題を決定する目的は、
品質マネジメントシステムの意図した成果を達成する能力を組織が
保有することにあるからです。
■□■組織はどのようにして能力を保有するか?■□■
附属書SL(ISO9001でも)は、
「外部及び内部の課題を決定しなければならない」と要求し、
箇条9.3マネジメントレビューにおいて
「品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化」を
考慮しなければならない、としているだけです。
即ち、直接「組織の能力」に関して要求をしているわけではありません。
しかし、附属書SLを使って組織に成果をもたらすためには、
組織はどのようにして能力を持つのかを考えなければなりません。
■□■JISQ9005:2014規格■□■
JISにはISO9001を超えるレベルを推奨する
9005:2006、9006:2006の2種類のガイド規格がありますが、
現在9005に一本化する活動が進んでいます。
2014年には新しいJISQ9005:2014が完成する見込みです。
その(JISQ9005:2014規格)DISには組織の能力に関する
参考になる記述が多くあります。
■□■重要視する品質マネジメントシステム要素 ■□■
附属書Cには組織を俯瞰して重要視すべき品質マネジメント要素が
一覧になっています。
附属書Cには次の4つの要素が掲載されていますが、
それぞれには特定しておくべき「組織の能力」があります。
・固有技術,知識
・品質マネジメントシステムの企画,有効性評価,革新
・製品・サービス実現プロセス
・経営資源の運用管理
■□■ 固有技術,知識 ■□■
「固有技術,知識」は
組織の死命を決するほど重要で根本的な経営要素ですが、
当然のことながらそれを支える能力はこれまた、
組織の生死にかかわる格別重要な能力です。
たとえば、設計能力、生産技術能力、製造能力、評価能力です。
設計能力は「小型化をすすめる設計技術」とか具体的に能力を
明確にしておくことが重要です。
「多種多様な金融商品を設計する」能力も金融業では必要なものでしょう。
生産技術能力も「高硬度材料X の加工法」というように具体的に
表現することがポイントです。
製造能力では「複雑形状の金型製造技術」というような例があります。
評価能力では「高精度かつ高速度分析が可能な評価技術」能力とか、
あるいは「不特定多数のユーザからのコメント,レビュー内容などを
分析する」能力などを例に上げることができます。
■□■品質マネジメントシステムの企画,有効性評価,革新■□■
「品質マネジメントシステムの企画,有効性評価,革新」においては、
事業環境変化分析、事業シナリオの策定、品質方針/品質目標の展開、
品質マネジメントシステムの有効性/評価/事業における
パフォーマンスの評価及びそのフィードバックなどを能力として
上げることができますが、更に具体的にすることが必要です。
事業環境変化分析は、たとえば「競合組織と比べて業界動向情報の
迅速な獲得ができる」能力というような具合です。
事業シナリオの策定については、「競争優位の獲得,維持及び向上が
実現可能な事業シナリオの策定ができる」能力です。
品質方針/品質目標の展開についても、「 実現可能な方策への確実な展開及び
効果的な担当者の割付けができる」能力という具合によりブレークダウンします。
「品質マネジメントシステムの有効性/評価/事業におけるパフォーマンスの評価及び
そのフィードバック」については、
「個人単位での目標達成状況を管理する」能力などが例として上げられます。
■□■次回は再度、組織の能力について■□■
製品・サービス実現プロセス、経営資源の運用管理の
2つの要素に関する能力については次回の説明とさせていただきます。
(つづく)