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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.304 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査8 ***
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事業マニュアルは、ISOの分野固有(品質、安全衛生、環境、情報セキュ
リティなど)の要求事項を参考にしながら自分たちの事業活動、すなわち
事業プロセスにビルトイン(統合)した状態を書き表したものです。
全員参加により組織の各種パフォーマンスを上げることは、経営の大きな
目標ですが、事業マニュアルに記載された事項はパフォーマンス向上のガ
イドになります。
ナラティブ内部監査は、この組織固有のマネジメントシステムが事業マ
ニュアルどおりに運用されているかを確認し改善することを、内部監査員、
被監査者が共同で実施することを目的としています。
■□■ 事業マニュアルの作成 ■□■
事業マニュアルはどのように作るのがよいのでしょうか。組織には「定款」
をはじめ取締役規定、分課分掌規定、部門規定、手順書、チェックリスト
などの多くの社内標準があります。
事業マニュアルは何百も何千もある社内規定の総括版ですので、ロジック
としては演繹法(積み上げ方式)的に作ることがよいと思いますが、膨大な
標準書を開いて読み解くことはナラティブ内部監査の趣旨ではありません。
事業マニュアルは事業推進の方針書です。組織が自分たちの事業経営の骨格
を書くことがよいので、帰納法(方針示達方式、上から下)的に経営者の観
点から書くことがよいと思います。
したがって、あまり細部にわたっての記述はしません、総ページ20、30ペー
ジ位が適切です。
■□■ 事業マニュアルの事例 ■□■
ナラティブ内部監査の監査基準としての事業マニュアルの事例を示します。
ナラティブ株式会社という機械部品を製造している会社(仮想)の事業マニュ
アルの構成例を掲載します。
【理 念】
当社の理念は次の通りである。
1. 社会に貢献する。
2. 社員を大切にする。
3. 独創性を伸ばす。
【事業マニュアル】
当社は事業運営の基本を定めた事業マニュアルを制定し、ISO 9001認証に活用
するとともに全従業員が守るべき標準と位置づけし、全社内部監査の基本文書
とする。
【適 用】
この事業マニュアルは,当社が製造する機械部品の営業から、企画、設計、製造、
出荷、サービスまでの製品・サービス提供活動、事業の基本と方向を定める経営
活動及び組織全体を支える管理活動に適用する。
〔対象組織〕 ナラティブ株式会社 全社
〔対象製品〕 シャフト製品、シリンダ製品,カバー製品
【目 次】
- 経営
1.1 組織
1.2 方針
1.3 経営会議
1.4 内部監査 - 事業マネジメントシステム
- 営業
- 設計
4.1 全般
4.2 設計及び開発の計画
4.3 インプット
4.4 アウトプット
4.5 設計審査
4.6 設計変更 - 購買
5.1 全般
5.2 下請負契約者の評価
5.3 購買データ
5.4 購買品の検証
5.5 購入者による支給品
5.6 購入検査 - 製造
6.1 工程管理
6.1.1 全般
6.1.2 特殊工程
6.2 製品の識別及びトレーサビリティ
6.3 工程内の検査及び試験
6.4 最終検査及び試験 - 検査及び試験
7.1 検査,測定及び試験の装置
7.2 検査及び試験の状態
7.3 検査及び試験の記録 - 不適合品の管理
8.1 不適合品の処置 - 是正処置
- 取扱い,保管,包装及び引渡し
10.1 全般
10.2 取扱い
10.3 保管
10.4 包装
10.5 引渡し - 11文書管理
11.1 文書の承認及び発行
11.2 文書の変更・改訂
11.3 品質記録 - 教育・訓練
- サービス
- 小集団改善活動
- 環境保全
- 労働安全衛生
- 情報セキュリティ
- 人事労務
- 会計
- SDGs活動
このように、事業マニュアルは会社の主要な活動を網羅して書くことがポント
です。事業マニュアルには、経営者が行う活動、大多数の方が行っている製品・
サービス提供活動(バリューチェーン活動)、管理部門が行う活動(サポート
活動)など組織の主な活動の要点を書きます。
(つづく)