附属書SLキーワード「組織の能力1」 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.67 ■□■

*** 附属書SLキーワード「組織の能力」***

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■□■ 組織の能力とは ■□■

 今回の附属書SLキーワードは「組織の能力」です。

「4.1組織を取り巻く状況」の冒頭に次のような要求があります。

「組織は、組織の能力に関連し、かつ、そのxxxマネジメントシステムの
 意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える、
 外部及び内部の課題を決定しなければならない。」

組織の能力の原文は “organization’s ability”です。

 組織の能力とはまさしく組織が継続して今の良い状態を
今後とも良い状態にしていく力を意味しています。

 能力にはいろいろなものがあると思いますが、
人の力が最も大きいものでしょう。

その他、機械、装置、資源など多くのものの能力が該当するでしょう。

■□■ IAFのコミュニケ ■□■

IAF(International Accreditation Forum:国際認定機関フォーラム)は、
JAB(Japan Accreditation Forum:日本適合性認定協会)などの
世界の国々の認定機関の連合体です。

 そのIAFが2009年に発行したコミュニケには
「QMSを構築した組織がもつべき能力」が記述されています。

あくまでも品質マネジメントシステム(QMS)に関する組織の能力についての記述
ですが、ほかのMSS(Management System Standard)にも参考になるものです。

 ①顧客ニーズ並びに法令規制要求事項の分析及び理解する能力

 ②製品特性が顧客・法令規制要求事項を満たすことを明確にする能力

 ③期待されている成果(適合製品、顧客満足)を達成するプロセスの明確化
 、運営管理する能力

 ④プロセスの運用及び監視に必要な資源を確実に利用する能力

 ⑤定められた製品特性の監視及び管理をする能力

 ⑥不適合防止を志向し、かつ体系的な改善プログラムを運営する能力

 ⑦有効な内部監査及びマネジメントレビュープロセスを実施する能力

 ⑧品質マネジメントシステムの有効性を監視、測定、継続的に改善する能力

■□■ ①顧客ニーズ並びに法令規制要求事項の分析及び理解する能力■□■

 能力の最初に上げられているのが「分析と理解する能力」です。

単に分析、理解する能力ではなく「顧客ニーズ並びに法令規制要求事項」を
分析及び理解する能力が求められています。

以下、顧客ニーズと法令規制要求事項に分けて考えていきたいと思います。

 まず「顧客ニーズ」を分析し、理解する能力は多くの組織には意識しなくても
日常発揮しているものであろうと思います。

 ただ、改めて意識してみるとどうでしょうか?

まず明確にしなければならないことは顧客とは誰かということです。

組織はいろいろな製品(サービスを含む)を扱っていると思いますが、
その中の一つの製品について考えてみましょう。

 その製品の受け手が顧客と考えていいと思いますが、その後ろにいる
顧客も組織にとっては意識しなければならない存在です。

7月に発行されたISO9001:20XXのCD(Committee Draft)には、
附属書SLに追加して次のような要求が追加されています。

 組織は,次に示すような関連する利害関係者を考慮しなければならない。
  a) 直接の顧客
  b) 最終利用者

■□■ 顧客にはいろいろな顧客がいる■□■

 ISO9001:20XXのCD(Committee Draft)は、

  a)直接の顧客、
  b)最終利用者

の2つの対象を顧客(利害関係者)として取り上げていますが、
直接の顧客の後ろには次の顧客がいる、

その後ろにはまた次の顧客がいるという形で世の中のサプライチェーンに
沿った形で幾つもの顧客がいることを忘れてはならないと思います。

 「顧客ニーズ」を分析及び理解する能力には、このように顧客には
どんな種類の顧客がいるのか、サプライチェーンに沿った顧客ごとに

どんなニーズがあるのか、もしかしたら顧客間には相反するニーズが
あるのではないか、といったことを分析する能力が求められます。

 一方で、「法令規制要求事項」を分析及び理解する能力についてですが、
組織が遵守すべき法律、条令、行政指導、業界基準などには多くのものが
あります。

組織は社会的存在ですから、社会から指弾を受けないようにあらゆる
法令規制要求事項を遵守しなければなりません。

海外の規制も含め(製品が輸出される場合)、どの法令規制要求事項に
従うべきかを抽出する能力を保有していることは組織にとって
必須なことであると思います。

以上