ナラティブ内部監査37 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.333■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査37***
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日常「何かおかしい」と感じたことを一歩踏み込んで考えてみよ
うと提案しています。
前回「ナラティブ内部監査で重要なことは、問題を「問題として
認識」すること」だ、とお話ししました。
そして、廊下の角で衝突した例に、原因と思われるものを上げて
みました。
 ・前を見ていなかった。
 ・考え事をしていた。
 ・衝突注意を忘れていた。
 ・急ぎ足だった。
 ・時間がなかった。
 ・悩み事があった。

■ すべては想像である ■
ここで注意しなければならないことは、ここで上げた6つの原因
と思われることはすべて人が考えた想像だということです。想像
ですからすべてに可能性はあるにしても、原因を特定すること、
判断することはできません。
物事には原因と結果がある、すなわち因果関係については古来よ
りいろいろ語られています。科学的ではありませんが、今こうし
て苦しんでいるのは前世の報いであるというような「因果応報」
という考えが多くの人に伝わってもいます。
宗教では原因の無い結果はないと断じますが、原因があるにして
もそれを明確にできるかというと、そうではない場合が多いと思
います。

■ 因果関係 と再現性 ■
すべてのことに原因があるにしても、原因がすぐに結果に結びつ
く場合もあれば、同時に長時間かかって結果に表れる場合もある
というように、因果関係は極めて複雑です。原因を明確にできる
のは前者(すぐに結果に結びつく)の場合が多いのですが、後者
の場合は明確化が困難な場合が多いでしょう。
品質管理では、因果関係を論じる時には「再現性」を大事にしま
す。後者(長時間かかって結果に表れる)の場合は、この再現性
を確認することが困難です。

■ 結果に対して原因を魚の骨で考える ■
原因の追究にはいろいろなツールが開発されています。有名なも
のに「特性要因図」があります。別名石川ダイヤグラムと呼ばれ
るように50年ほど前に東大の石川教授が考えたツールです。
魚の骨の頭を右にして紙に描きます。背骨からは大骨が描かれま
す。大骨からは小骨が描かれます。小骨それぞれから結果に関係
しそうな事柄を描きます。描くということは頭で結果と因果関係
のある事柄を考えるということになるのがこのツールのポイント
です。

■ なぜ、なぜを5回 繰り返す■
トヨタで考えられたという「なぜ、なぜを5回繰り返す」という
ツールがあります。トヨタで工場長(のちに副社長)をした大野
耐一さんという方が40年くらい前にその方法を言い出したと言
い伝えられています。
 ・工作機械の稼働率が落ちた。
 ・なぜ1 なぜ落ちたのか → 刃物の切れ味が落ちた。
 ・なぜ2 なぜ刃物の切れ味が落ちたのか → 刃物に掛ける
      潤滑油が少なくなった。
 ・なぜ3 なぜ刃物に掛ける潤滑油が少なくなったのか 
      → モータに送り込まれる潤滑油が少なくなった。
 ・なぜ4 なぜモータに送り込まれる潤滑油が少なくなったのか
      → モータ潤滑油のフィルタに切り粉が詰まっていた。
 ・なぜ5 なぜモータ潤滑油のフィルタに切り粉が詰まったのか
      →フィルタを長時間使用していた。
このように「なぜ」を5回繰り返すことによって真因にたどり着
くことが出来ます。この結果、対策としては「フィルタを定期的
に交換する」というものになります。 

■ なぜ、なぜを5回 の要点 ■
「なぜ、なぜを5回繰り返す」は万能ではありません。上の例で
見るように起きた物事に関連しての固有な知識が必要です。工作
機械を見たこともない人に、このような展開をお願いしても多分
「なぜ、なぜを5回繰り返す」ことはできないでしょう。
なお重要なことは、このような工学的な問題の原因追及には「な
ぜ、なぜを5回繰り返す」ことは有効ですが、人の関係する問題
の原因追及には限界があります。その理由は、人の行動は科学的
なものではないからです。次回はなお問題の原因追及についてお
話ししたいと思います。