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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.339 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査43***
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このシリーズではナラティブ内部監査の新しい物語作りについて
発信させていただいています。
「承」においては、おかしいと感じたことが、いままでどうだっ
たかを調べると良いとお話ししました。今回は、起承転結の「転」
についてお話しします。転はこれまでの話から一転して異なった
視点からの物語を作ることになりますが、「一転して」と言われ
てもあまりにジャンプすることは薦められません。
■ 転は今からのことを書く ■
起でおかしいと感じたことはどうしたらいいのでしょうか。承で
「いままで」の経過を知り、おかしいと感じたことを深めていく
ことができた結果はどのように活用していくのが良いのでしょう
か。おかしいことの正体は何なのかが明確になったとしたなら、
次の物語を作ることを考えます。
問題が明確になったら、その問題をどのように解決して改善につ
なげるのかを施行します。問題が解決され改善されれば組織のパ
フォーマンスに大きく貢献することが出来ます。
承における「いままでの」ことは過去の事象を調査することです
ので、根気とエネルギーがあれば何とかできることだと思います。
しかし、転を物語として作るには「創造性」が必要になります。
創造性というと固くなりますが、空想する力が必要となるのです。
この空想力はどこからくるかを考えてみましょう。
■ ハラリのサピエンス全史 ■
ハラリのベストセラー「サピエンス全史」には次のくだりがあり
ます。
「認知革命以降は、ホモ・サピエンスの発展を説明する主要な手
段として歴史的なナラティブが生物学の理論に取って代わる。」
解説が必要だと思います。
ユヴァル・ノア・ハラリは1976年生まれ、45歳のイスラエルの
新進気鋭の歴史学者、彼の著書で世界的ベストセラーになってい
る「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」は世界で500万
部売れているそうです。世界中で、ビル・ゲイツやマーク・ザッ
カーバーグを始め、前アメリカ大統領のバラク・オバマなど有数
の経営者やリーダーたちがこぞって絶賛しています。
ホモ・サピエンス(Homo sapiens)とは、現代の人類のことで
す。
ラテン語でホモとは「同じ」という意味、サピエンスとは「賢い
人」という意味であり、人類が属する種の学名です。
認知革命とは、7万年から3.5万年前にかけて人類に起きた新し
い思考と意思疎通の方法のことをいいます。この数万年の間に人
間は考えるという行動を始めるようになり、この「考える」こと
によって他の動物と差別化することが出来るようになったと言わ
れます。
ハラリが主張するのはこの認知革命の中でも「ナラティブ」が重
要な役割を果たしたということです。
「サピエンスが発明した想像上の現実の計り知れない多様性と、
そこから生じた行動パターンの多様性は、ともに私たちが<文化>
と呼ぶものの主要な構成要素だ。」
■ 空想する、神話を作る ■
ハラリのサピエンス全史には、多くの場面に空想の話が出てきま
す。巫女、神官、占い師などがいろいろな空想を語ります。いか
にも現実にあるような調子で未来の出来事を話すのですが、その
話が時代の経過とともに現実化していった世界がその後現れてく
るという話が書かれています。
ナラティブ内部監査でも、誤解を恐れずに言うと空想することが
大切です。空想にもいろいろあります。できればある程度根拠の
ある空想が望ましいのですが、あまり根拠にこだわると新しい物
語は作れなくなります。自分が望ましいと思う姿を空想してそこ
に到達する道筋を考えます。
起における「いま」と承で語られた「いままで」をベースにする
と現実的な物語を作ることが出来ます。そうすると空想ではなく
具体的な計画と言ってもいい物語が作れます。