SDGインパクト基準6 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.353 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準6 ***
—————————————————————
2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、351号から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標3についてです。

■■ 目標3.健康、福祉 ■■
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福
祉を促進する。
<3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり
70人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以
下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下
まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の
予防可能な死亡を根絶する。>

目標3には多くの個別の目標がありますが、ここでは母親と新生児に
関する目標について考えたいと思います。

■■ ヨーロッパ中世の状況 ■■
21世紀の今の議論に17世紀頃の中世の話を持ち出すのは場違いと言
われるかもしれませんが、中世ヨーロッパの王妃は現在に比較して子
沢山だったそうです。
ある王妃は15人の子ども授かったそうですが、当時の医療水準が低
かったからでしょうか、成人になる前に亡くなってしまった子供は
60%を超えています。古い記録によれば授かった15人のうち、9人
が次から次に亡くなっています。

王族ですらこんな状況でしたので、一般庶民の子供の生存率はもっと
低かったのではないかと推測されます。私が17世紀の話を持ち出し
たのは、人類の社会的、科学的進化に目をやり、なお将来に向けてど
んな施策を考えていくべきかを俯瞰的に捉えることが良いと思うから
です。

■■ 世界の母親死亡数 ■■
「出産は命がけ」と言われる通り、出産において死亡する母親や子ど
もは世界的に少なくありません。母親や子どもが亡くなる死亡率は、
医療環境や衛生環境などで大きく変わることがわかっています。

最新の世界保健機関(WHO)発表によると、世界の妊産婦死亡数は
年間30万3,000人であり、妊産婦死亡率は0.216%(妊産婦10万人
に対して216人)だそうです。毎日830人が出産により死亡してい
る計算になるそうです。
開発途上国における死亡が多いのですが、その理由は次のようなも
のです。

■■ 母親及び子どもの死亡 ■■
開発途上国における母親及び子どもの死亡が多いのは、次の4理由
からであると国連は説明しています。
・若すぎる出産
・医療環境と保健サービスの未発達
・感染症対策の遅れ

■■ 若すぎる出産 ■■
国連広報センターからの報告では、母親・子どもの死亡率が高い開発
途上国では、出産リスクが高い青年期(10~19歳)の出産が多いこ
とが理由の一つであるとしています。

開発途上国では年間730万人の18歳未満の少女が出産しており、そ
のうち15歳未満での出産は200万人、そして年間7万人の少女が妊
娠と出産の合併症によって亡くなっているそうです。女性の身分の低
さ、児童婚が合法化されている、極度の貧困による圧力、などが若す
ぎる出産と死亡をもたらしていると説明されています。

■■ 医療環境と保健サービスの未発達 ■■
開発途上国では近くに医療施設がなく、医者や看護師が少ない地域が
多く存在します。そのような地域では、自宅出産が数多く行われ、知
識のない介助者が多量出血などに対応できず、母子の命が失われるこ
とは珍しくないそうです。風疹のワクチンを接種し、定期的に検診を
受け、出産には訓練を受けた助産師が立ち会い、出産後には母子の健
康状態を都度確認することが、母子の命を救うと説明されています。

■■ 感染症対策の遅れ ■■
感染症にかかっている母親の子どもは、低体重で生まれる可能性が高
く、健康に生まれても重度の感染症(敗血症や破傷風など)にかかり
死亡する恐れがあります。

開発途上国では、HIVやマラリアなどの感染症にかかっている女性が
出産すると、敗血症などの合併症リスクが高く、ユニセフによると感
染症による死亡は、新生児死亡の36%を占めているそうです。