品質不祥事 4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.377 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 品質不祥事 4 ***
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「品質不祥事」についてお話をしています。
You tube「超ISO」の品質不祥事シリーズに沿ってお話をさせてい
ただいています、今回から第三者委員会調査報告書についてお話し
します。

■■ 第三者委員会調査報告書 ■■
近年の品質不祥事には「第三者委員会調査報告書」がつきものに
なっています。「第三者委員会」は私の知る限り、最初は上場企業
の財務諸表の改ざんなど企業の会計、財務の不祥事が発覚した時
に、身内だけでは調査が十分でないということで、第三者に詳細
な調査を依頼する目的で始まりました。
2000年ころから「第三者委員会」の存在が一般に知られるように
なりましが、委員の多くは、弁護士、公認会計士の方がほとんど
でした。最近はちらほらと品質専門家も第三者委員会に招かれる
様になりましたが、まだ少数です。
2012年から「第三者委員会調査報告書」のWEBへの公開がされ
るようになり、2014年には「第三者委員会報告書格付け委員会」
が発足しています。この委員会は、民間の「第三者委員会の調査
報告書に対する格付け」を行う弁護士グループが立ち上げた組織
です。

■■ 格付け委員会取り扱い事案 ■■
2014年から「第三者委員会報告書格付け委員会」が扱った主な
「第三者委員会調査報告書」には、次のようなものがあります。
・提携ローン業務適正化に関する特別調査委員会(みずほ銀行)※
参照:みずほ銀行暴力団融資事件
・第三者委員会(リソー教育)※参照:リソー教育#不祥事
・慢性骨髄性白血病治療薬の医師主導臨床研究であるSIGN研究
に関する社外調査委員会(ノバルティスファーマ株式会社)※
参照:ノバルティス#白血病薬研究(SIGN研究)への関与
・朝日新聞社第三者委員会(朝日新聞社)※参照:朝日新聞の慰安
婦報道問題
・第三者委員会(労働者健康福祉機構)※関連:障害者の雇用の促
進等に関する法律
・内部調査委員会(ジャパンベストレスキューシステム)※不正
会計
・第三者委員会(東芝)※参照:東芝#不正・隠蔽行為東芝粉飾決算
事件
・「免震積層ゴムの認定不適合」に関する社外調査チーム(東洋ゴ
ム工業)※参照:TOYO_TIRE#不祥事
・第三者委員会(王将フードサービス)※参照:王将フードサービ
ス#不祥事、王将社長射殺事件
・特別調査委員会(三菱自動車工業)※参照:三菱自動車工業#燃費
試験の不正事件
・社内調査委員会(東亜建設工業)※参照:東亜建設工業#不祥事
・日本オリンピック委員会調査チーム(日本オリンピック委員会)
※関連:2020年東京オリンピック構想、ラミーヌ・ディアック、
竹田恆和#不祥事
・第三者委員会(DeNA)※参照:ディー・エヌ・エー#「WELQ」
に始まるキュレーションサイトの問題
・第三者委員会(富士フイルムホールディングス)※海外子会社の
不正会計
・弁護士チーム(日産自動車)※参照:日産自動車#無資格者検査問題
・神戸製鋼所 ※参照:神戸製鋼所#アルミ製品データ改竄
・第三者委員会(雪印種苗)※関連:種苗法
・日本大学アメリカンフットボール部における反則行為に関する第三
者委員会(日本大学)※参照:日本大学フェニックス反則タックル
問題
・第三者委員会(東京医科大学)※参照:東京医科大学#女子受験生・
三浪以上に対する一律減点
・毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会(厚生労働省)※参照
:毎月勤労統計調査#統計不正調査問題
・外部調査委員会(レオパレス21) ※参照:レオパレス21#施工不備
問題
・第三者委員会(関西電力)※参照:関西電力#関西電力幹部らの金品
受領・便宜供与問題
・第三者委員会(ジャパンディスプレイ)※不正会計

■■ 品質不祥事再三者委員会調査報告書 ■■
このように「第三者委員会調査報告書」は上場企業の不適切な会計処
理の調査が主でしたが、次第に企業、役所、大学などの社会的不祥事
にまでその対象が広がり、その動きに呼応して品質不祥事についても
多くの企業が発表するようになりました。私が読んだいくつかの製造
業の品質不祥事の「第三者委員会調査報告書」を紹介します。我々が
興味を持つのは、(1)どんなことが起きたのか、(2)なぜ起きたかの2
点です。「第三者委員会調査報告書」は少ないものでも100ページ、
多いものだと1,000ページを超えますので、ここでは(2)に焦点を絞っ
て報告書に記載されたままを簡潔に紹介します。
1.神戸製鋼 (2018年3月)
<直接的原因>
[1] 工程能力に見合わない顧客仕様に基づいて製品を受注・製造して
いたこと。
[2] 検査結果等の改ざんやねつ造が容易にできる環境であったこと。
[3] 各拠点に所属する従業員の品質コンプライアンス意識が鈍麻して
いたこと。
<根本的原因>
[1] 収益偏重の経営と不十分な組織体制
 (1)本社の経営姿勢:本社は収益力の拡大を狙い各拠点もこれに従っ
て利益目標を高く設定した。
 (2)本社による統制力の低下:各拠点における現場の「生の声」を十
分に吸い上げなかった。
 (3)経営陣の品質コンプライアンス意識の不足:不適切行為を実行又
は認識していた者が執行役員となった。結果、不適切行為がなお
継続されていることを認識しながら是正しなかった。
 (4)事業部門における監査機能の弱さ:経営効率を高めることから拠
点ごとに完結した品質体制が整備・運用されていた。「品質の問題
は工場一任」といった工場優位の風潮が生まれ管理部署の統制力が
低下した。
[2] バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
 (1)工程能力に見合わない顧客仕様等に基づく製品の製造
 (2)生産・納期優先の風土
 (3)閉鎖的な組織(人の固定化)
 (4)社員の品質コンプライアンス意識の鈍麻
 (5)本件不適切行為の継続:不適切行為の対象製品等が当該事業部門に
おける年間売上げの数%にも達し、その規模自体が不適切行為の中
止・是正を躊躇させた。
[3] 本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続
 (1)改ざん又はねつ造を可能とする検査プロセス:容易に検査結果を
改ざん又はねつ造することができる検査プロセスが採用され、不
適切行為を行う動機を有する者に不適切行為に及ぶ格好の機会を
提供することになった。
 (2)単独かつ固定化した業務体制
 (3)社内基準の誤った設定・運用