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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.386 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 閑話休題 品質不祥事 9 ***
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しばらく(4回)余談として、トヨタの「ジャストインタイム」が
どのように考えられてきたか、大野耐一さんの講演録からお話をし
てきました。
さて、本題に戻って、381号続きの品質不祥事のお話しです。まず
は、(一社)日本品質管理学会(JSQC)で作成してきました、「品
質不正防止TR」(JSQC-TR-01-001)のパブリックコメントは、
11月26日締め切られました。
■■ パブリックコメント ■■
(一社)日本品質管理学会には、新しい規格を作成するときの手順
として「パブリックコメントを募集する」という手続きがあります。
今回は2021年3月から約1.5年かけて作成された「品質不正防止
TR」の原案が10月27日~11月26日まで一般に公開されました。
この制度は学会メンバーだけでなくすべての方が原案に対して意見
が言える制度です。結果74件のコメント(意見)が寄せられまし
た。
学会では審議委員会を設置して、寄せられたすべてのコメントを審
議にかけ、原案をより良いものにする活動に入っています。
■■ 品質不正事例 6 ■■
You tube「超ISO」の品質不祥事シリーズに公開していますが、品
質不祥事を起こした企業の第三者委員会調査報告書の6回目につい
てお話しをします。品質不祥事の「第三者委員会調査報告書」に対
して我々が興味を持つのは、1)どんなことが起きたのか、2)なぜ起
きたかの2点です。「第三者委員会調査報告書」は少ないものでも
100ページ、多いものだと1,000ページを超えますので、ここでは
2)に焦点を絞って報告書に記載されたままを簡潔に紹介します。な
お、「第三者委員会調査報告書」の該当部分をそのまま記述している
ため、文章のつながり、整合、体裁などが統一されていないところ
がありますが、ご容赦ください。
事例6
A株式会社 2015/10発覚 (過去10年に遡上)
<何が起きたのか>
杭工事で品質データの転用や加筆などの改ざんが行われたことが発
覚し、調査の結果、過去10年に請け負った物件3,040件のうち
2,376件の調査が終わった段階で、266 件のデータ偽装が確認され
た。
現場の担当者個人の資質に帰するべき問題ではなく、組織全体の品
質保証意識の欠如が問題で業界全体に蔓延した悪癖であると指摘さ
れた。
■■ どうして起きたのか ■■
<原因の究明を行った結果>
データ流用の原因・背景としては、大きく3つに分けて考察するこ
とが妥当である。すなわち、杭工事現場での問題点として、1)デー
タの適切な取得及び保管ができていない点、さらに、そのような
場合に、2)データがないことを申告せず、データ流用によって施
工記録を形式的に整えることで良いとしている点、がある。
以上に加えて、データ流用は本件マンション以前にA株式会社が
施工した杭工事においても確認されているところ、3)長年かつ多
数回にわたってデータ流用を発生させてきた組織の管理体制・教
育体制の問題点が指摘できる。
1) 不適切行為(施工データ欠落)
(1) 計測装置操作に関する要因
(2) 現場責任者と作業員のコミュニケーション不足
(3) 施工データの管理に関する要因
2) 不適切行為(データ欠落)への対応
(1) 施工データの管理手順未整備
(2)データ欠落時の対応ルールの不徹底
(3) 組織の管理体制の問題
3) 施工データの重要性に対する現場責任者らの意識
(1) 現場責任者らにおける施工データ軽視の風潮
(2) 現場責任者がデータ欠落を報告しにくい環境
(3) 施工データの取扱の実態に関する認識不足
(4) 社内での情報共有の体制に関する問題
(5) 人員の固定化の問題