■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.23 ■□■
*** マネジメントシステムには良い設計が必要 ***
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テクノファ代表取締役の平林です。
前回は「いいものは設計がいい」お話をしましたが、このことは
工業製品だけでなく、マネジメントシステムにも同様に言える
ことです。
今回は「マネジメントシステムには良い設計が必要」について
お話をしたいと思います。
■□■ ISO9001:2008序文 ■□■
ISO9001:2008の序文の「0.1一般」には、「品質マネジメント
システムの設計(design)」という表現が次の一節に出てきます。
【品質マネジメントシステムの採用は,組織の戦略上の決定に
よることが望ましい。組織における品質マネジメントシステムの
設計及び実施は,次の事項によって影響を受ける。
a)組織環境,組織環境の変化,及び組織環境に関連するリスク
b)多様なニーズ
c)固有の目標
d)提供する製品
e)用いるプロセス
f)規模及び組織構造
この規格は,品質マネジメントシステムの構造の画一化又は
文書化の画一化を意図していない。
この規格で規定する品質マネジメントシステムについての要求
事項は,製品に対する要求事項を補完するものである。】
改めて読むと、「品質マネジメントシステムの設計」の部分は、
ある意味で新鮮なものです。
ある意味で新鮮とは、歴史ある組織ほど、既に運用されている
システムを「設計(design)」という感覚で見ることはなかった
のではないか、と思ってのことです。
■□■ ISO9001:2008序文の意味するところ ■□■
従来ISO9001規格の序文はあまり注目されてきませんでした。
しかし、マネジメントシステムの有効性が強調されるように
なってから、序文の中の「一般」、「プロセスアプローチ」などが
注目を集めています。
品質マネジメントシステムの設計と規格本文の7.3「設計・
開発」とは直接関係ありませんが、設計(design)と
いう表現、そして以降に羅列されているa)~f)は、「7.3.2設計・
開発へのインプット」を彷彿とさせるものです。
【7.3.2 設計・開発へのインプット
:製品要求事項に関連するインプットを明確にし,記録を維持
しなければならない(4.2.4参照)。インプットには,次の事項を
含めなければならない。
a)機能及び性能に関する要求事項
b)適用される法令・規制要求事項
c)適用可能な場合には,以前の類似した設計から得られた情報
d)設計・開発に不可欠なその他の要求事項
製品要求事項に関連するインプットについては,その適切性を
レビューしなければならない。要求事項は,漏れがなく,あいまい
(曖昧)でなく,相反することがあってはならない。】
ここに掲載したISO9001:2008規格の「7.3.2設計・開発への
インプット」は製品・サービスの設計をするときに、考慮せねば
ならない要素を上げています。
文中に「・・・を含めなければならない。」とあるように、これらの
インプット要素は最低限のものであって、これが総ての
インプットではありません。
組織は固有のものですから、規格が一律要求するインプット以外、
組織には多くの設計へのインプットがあることは当然のことです。
このことと同様に、マネジメントシステムの設計に影響を与える
要素、ここでいう設計へのインプットは序文で上げているa)~
f)だけではありません。
組織のマネジメントシステムの設計へのインプットには、組織固有の
インプットがあってよいわけで、むしろ固有のものがあるべき
だと思います。
■□■ 組織環境・・によって影響を受ける ■□■
序文0.1一般には、品質マネジメントシステムの設計がa)~f)に
よって影響を受けるとありますが、a)~f)は設計する際に考慮
すべきインプット要素であるといえます。一つずつみてみましょう。
【a)組織環境,組織環境の変化,及び組織環境に関連する
リスク】
このインプット要素は、例えば、組織がどんなインフラストラ
クチャーを必要とするか、設備するかに関係します。
【6.3 インフラストラクチャー
組織は,製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされる
インフラストラクチャーを明確にし,提供し,維持しなければ
ならない。インフラストラクチャーとしては,次のようなもの
が該当する場合がある。
a)建物,作業場所及び関連するユーティリティー(例えば,
電気,ガス又は水)
b)設備(ハードウェア及びソフトウェア)
c)支援体制(例えば,輸送,通信又は情報システム)】
認証審査において、上記「必要とされるインフラストラクチャーを
明確にし,提供し,維持しなければならない。」の部分を
審査するのはあまり意味が無いと考えている審査員が多いと
思います。しかし、組織がa)でいう「組織環境,組織環境の変化,
及び組織環境に関連するリスク」をどのように考えているのかを
審査で確認することになるならば意味があると思います。
序文の2番目“b)多様なニーズ”以降は、次回でお話したいと思いま
す。