再び品質不正について | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.408 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 再び品質不正について ***
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トヨタ物語から一転して品質不正の話に戻ります。(一社)日本品
質管理学会(JSQC)では、2023年5月9日「JSQC TR 12-001
テクニカルレポート品質不正防止」講習会を開催しました。ZOOM
ミーティングにより行われましたが、171名の参加を得ました。
多分今までの講習会で最大の参加者であったかと思います。

■■ テクニカルレポート作成の趣旨 ■■
私はこのJSQC TR 12-001テクニカルレポートのワーキンググルー
プのリーダーをさせていただきましたので、若干作成にかかわる話
をさせていただきます。
このテクニカルレポートは、2015年から2021年にかけて社会的に
明らかになった品質不正について,製造業を中心に、組織で“なにが
起きているのか”、“どうして起きたのか”、“どうすれば良いのか”を
扱っています。
JSQCは戦後の産業界を品質の面でリードし,デミング賞のバック
ボーンとなるTQM(TQC)を長らく発展させてきました。
次に掲げるのはJSQCがいままでに発行してきた規格です。
JSQC-Std 00-001:2018 品質管理用語
JSQC-Std 11-001:2022 TQMの指針
JSQC-Std 21-001:2015 プロセス保証の指針
JSQC-Std 22-001:2019 新製品・新サービス開発管理の指針
JSQC-Std 31-001:2015 小集団改善活動の指針
JSQC-Std 32-001:2013 日常管理の指針
JSQC-Std 33-001:2016 方針管理の指針
JSQC-Std 41-001:2017 品質管理教育の指針
JSQC-Std 89-001:2016 公的統計調査のプロセス-指針と要求事項
その多くはJISに採用され、日本産業界の製品・サービスの品質保
証に貢献してきました。今回のTR 12-001 「テクニカルレポート
品質不正防止」は、この延長にある技術情報としての規格です(TR
も広義の意味では規格)。

■■ 改めて品質不正とは ■■
製品・サービスを顧客に提供するに際に,標準,契約,法令等から逸
脱した人の意図的な行為によって引き起こされた事象を「品質不正」
と言っています。品質保証の観点から容認できない事象の多くは、
組織内からではなく組織の外、例えば規制機関の立ち入り調査、他
社事例からのチェックなどにより発見され、マスコミにより報道さ
れるというケースがほとんどです。残念ながら組織の内部で発見さ
れることなく、組織の自律性が見られないのが品質不正の特長です。
品質不正の原因や対策については,多くの議論がなされていますが,
本テクニカルレポートは,このような社会の状況を踏まえ,品質不
正の防止に役立つと考えられる技術情報をまとめたものです。今回
の「テクニカルレポート(TR)」は 規格(JSQC-Std)」と異なり、
「諸般の理由から,規格にすることは困難であるが,技術的報告書
として提示することにより,多くの関係者の便益が期待できると考
えられるもの」という範疇に入るものです。本テクニカルレポート
に記されているのも,要求事項や推奨事項ではなく,関係者が当該
の問題に取り組むに当たって考慮するとよい情報という位置づけに
なっています。

■■ テクニカルレポート作成のステップ ■■
テクニカルレポート(TR)は次のようなステップで作られました。
1. 開発の決定
2020年11月の標準委員会で,「TQMの指針」と合わせて「テク
ニカルレポート 品質不正防止」開発の決定がなされた。
2.原案作成委員会(WG)
9名専門家と平林のリーダー10名によるWGにより,精力的な検
討が行われた。2021年4月から2022年8月にかけ,Web会議シ
ステムを活用し原案完成までの計18回の会合が開催された。
3.審議委員会
2022年9月「日常管理の指針」原案が完成し,様々な産業分野の
代表と品質管理の専門家からなる審議委員会が結成された。審議委
員会は合計3回の開催となった。
4.パブリックコメントの募集と対応
2022年10月25日~11月27日の期間でパブリックコメント募集
を行い,73件と多くのコメントをいただいた。原案作成WGおよ
び審議委員会でいただいたコメントに対する処置を検討し,最終原
案が作成された。
5.理事会での承認
2023年1月11日のJSQC標準委員会においてコメントへの対応、
様式を確認し,2023年1月26日のJSQC理事会に制定を提案,承
認された。

本規格の作成に当たっては,(一財)日本規格協会,(株)日科技連出
版社,および丸善出版(株)から引用文献にご協力いただきました。
また,多くの方々にパブリックコメントを通して貴重なご意見を頂戴
いたしました。