トヨタ物語25 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.441 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** トヨタ物語25 ***
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新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
今年は波乱な年明けとなりました。元日に大地震が起き能登半島は
新年早々混乱の極みに落ち込みました。地震が起きなければ羽田飛
行機追突事故も起きなかったろうに、と思った方もいると思います。
この世の中「風が吹けば桶屋が儲かる」、「Butterfly Effect」など因
果関係の連続であることを改めて思い知りました。昨年暮れに起き
たダイハツ品質不正はこれまた多くの因果関係の結果であろうと推
察しますが、ロンドン物語、日経品質管理文献賞で中断していたト
ヨタ物語を再開したいと思います。

■■ トヨタ物語の再開  ■■
トヨタ生産方式は「引っ張り方式」であると言われています。この
方式は後ろの工程が必要な品物を必要な量だけ前の工程から引き取
る(これを引っ張るという)ことで生産を行うやり方で、この必要
な量だけを前工程から引っ張る方式を頭から最後の工程まで行いま
す。しかし、世の中の生産方式の多くは「押し出し方式」と呼ばれ
るものです。ある期間の生産量を計画し、頭の工程から、次の工程、
次の工程へと製品を押し出していきます。各々の工程では不良が出
ますので、頭の工程では例えば1割くらい多く(歩留まりにより異
なる)の生産をして最後に顧客要求数量を確保するような製品化の
方式です。
2つの方式にはそれぞれ長所と短所があり、どの方式を採用するの
かは、生産する会社の考え方によります。
今まで述べてきた「あんどん」,「かんばん」などはトヨタ生産方式
のすばらしさの代表名として世の中に知られていますが、単に形式
としての「あんどん」,「かんばん」を理解し、実行しようしても
多分失敗するでしょう。失敗するどころか大きな問題を引き起こす
かもしれません。形式にとらわれことなく基本となっている理念と
発想を理解することが重要ですし、その理念を実現するための土俵
を理解しなければなりません。トヨタの歴史を見ると「人間性の尊
重」「人間性の向上」という言葉が常に出てきます。

■■ 意識改革が不可欠  ■■
ここからは、「人間性の尊重」をベースにトヨタ生産方式の理念と
発想を語った大野耐一氏の語録を紹介していきます。この語録は
1970年ころに語られたものです。

企業のなかのムダは無数にあるが、つくり過ぎのムダほど恐しいも
のはない。このつくり過ぎのムダがなぜ生ずるのか、その根源を探
ってみたい。私どもは、いつも相当量の在庫をかかえていないと不
安でしようがない存在なのではないだろうか。第二次世界大戦前か
ら戦中、そして戦後間もないころの物資不足の時代、買いだめはご
く自然の行為であった。オイル・ショック時、物資の豊富な現代に
おいても、ティッシュ・ペーパー、洗剤を買いあさった大衆の行動
は、まさに買いだめ心理からきたものであろう。
これは農耕民族の宿命ではないだろうか。私どもの先祖は長いこと、
米を作って主食とし、かつ貯えをして自然の災害に備えてきた。物
があり余っている現在においても、根はそれほど変わっていないこ
とは、オイル・ショック時の経験からわかった。
現代の企業も同じ考えにとりつかれているところがないか。いつも
手元に、なにがしかの原材料、仕掛品、製品の在庫をもっていない
と、この激しい競争社会に生き残っていけない不安に産業人は襲わ
れるのであろうか。
私の主張は、現代の工業はそれから脱却しなければならぬというこ
とである。農耕民族にとどまっていてはいけない。狩猟民族になっ
て、それこそ必要なものを、必要なときに、必要なだけ調達する勇
気をもたなければならない。勇気などというものではない。それが
現代の工業社会の常識となってほしいと思う。
それには、産業人の意識革命が必要であろう。いつも相当量の在庫
をかかえていないと不安でしょうがない気持が、オイル・ショック
以後の低成長時代に、つくり過ぎのムダをもたらし、不良在庫とい
う最大の経営ロスを生み出す元凶になったのである。この事態をま
ず深く認識することこそ、意識革命に通じるものと私は思うのであ
る。