特別採用を考える | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.449 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 特別採用を考える ***
—————————————————————
18社の第三者調査委員会において品質不正の要因とされた8つの
問題を「なぜなぜ5回」分析により詳しく掘り下げてきました。
8問題のうち3問題についての分析が終わりました。残りの5問題
「4.収益偏重の経営がされている」、「5.監査が機能していない」、
「6.工程能力がないのに生産している」、「7.管理がされていな
い」、「8.教育がされていない」についても実施してみることをお
勧めします。
今回からは品質不正にも関係する「特別採用」について考えてみた
いと思います。

■■ JISQ9001:20115 不適合なアウトプット ■■

8.7 不適合なアウトプットの管理
8.7.1 組織は,要求事項に適合しないアウトプットが誤って使用さ
れること又は引き渡されることを防ぐために,それらを識別し,管
理することを確実にしなければならない。組織は,不適合の性質,
並びにそれが製品及びサービスの適合に与える影響に基づいて,適
切な処置をとらなければならない。これは,製品の引渡し後,サー
ビスの提供中又は提供後に検出された,不適合な製品及びサービス
にも適用されなければならない。組織は,次の一つ以上の方法で,
不適合なアウトプットを処理しなければならない。
a) 修正
b) 製品及びサービスの分離,散逸防止,返却又は提供停止
c) 顧客への通知
d) 特別採用による受入の正式な許可の取得
不適合なアウトプットに修正を施したときには,要求事項への適合
を検証しなければならない。

出典:JISC日本産業標準調査会JISQ9001:2015

組織が顧客と合意した品質規格を守れなかった時(不適合品ができ
てしまった時)に取るべき処置を定めているのがISO9001箇条8.7
です。ここには「d) 特別採用による受入の正式な許可の取得 」と
いう規定が出てきます。

■■ ISO9001:2015における特別採用 ■■
ISOで規定されている「特別採用」がいつ頃日本に入ってきたかは
定かではありません。特別採用の英語はconcessionあるいは
waiverですが、いずれも良いニュアンスを持った言葉ではありま
せん。辞書ではconcessionは「租界:特別の権利を持った地域」、
waiverは「権利放棄」と出てきます。

特別採用は一説によると、1960年ころ戦後の日本品質管理が見本
と仰いだアメリカのMILスタンダードから学んだということのよ
うです。
特別採用とは、製造業において不合格(規格に合わない)と判定
された製品を、製造者が顧客との交渉で使用可として買い取って
もらう制度で、1970年代日本にも定着しました。筆者も当時品質
管理教育で偉い先生から次のように教えていただいたことを思い
出します。
「アメリカでは、買い手は自社製品のビジネスに遅れが生じること
の損害と不合格品を使用するリスクとを天秤にかけ特別採用を判断
する。」

製品が当初決めた規格範囲内に入らないといって必ずしも使い物に
ならないとは限らないため、このような制度が存在しますが、簡単
に顧客が認めてくれるものではありません。製造者は顧客に対して
不合格品であるロット、数量、外れた箇所などを明確にして「使用
可能にしてもらえないか」頼まなければなりません。多くの場合、
使用してもらうには条件が付きます。
・全数選別
・期限付き使用
・市場でクレームになった場合の負担

■■ 規格には公差がある ■■
規格には「公差」というものがあります。製品規格が例えば長さ寸
法100mmだったとして、多数の製品をすべて100mmピッタシに作る
ことはできません。そこで100mm±?というように「ばらついても
良い」寸法?を設計において決めておくことが行われます。公差に
は「普通公差」と「設計公差」の2種類があります。前者は10mm
以下では±0.3mm」、「10mmを超えて30mm以下では±0.5mm」
など、例えば長さ寸法の区分によって一律に決められた公差を適用
します。ラフな製品、例えばプラスチック外箱の外形寸法などは設
計図面すべてに±5%というような決め方もあり得ます。
一方、組み合わせのある機能部品には厳しい公差といえる後者「設
計公差」が設定されます。個別に公差計算された理論値から導かれ
た寸法、例えば1mm±0.05mmというように該当する箇所に設計が
個別に設定する公差があります。
特別採用の検討は該当する規格外がどのようなものかによって変わ
ってきます。

(つづく)