—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.452 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 特別採用(トクサイ)を考える4 ***
—————————————————————
2023年12月、ダイハツは自社の型式申請の試験において不正行為
があったと国土交通省に届け出ました。その内容は20年以上に及ぶ
広範囲なもので社会を驚かせました。ここでは「特別採用」という
範疇に入るかどうかは不明ではありますが、ダイハツ自身、そして
国土交通省が発覚後行った「基準適合性の確認」についてお話しし
たいと思います。
■■ ダイハツの品質不正 ■■
ダイハツが発表した品質不正は次のようなものです。自動車の衝突
試験において、本来はエアバックを「センサー」により衝突検知さ
せるべきところを「タイマー」でエアバックを作動させて試験を行
っていた。また、申請と違った構造の自動車を用いて試験を実施し
ていた。そのほか幾つかの不正手段を用いて自動車の型式申請試験
を行い、指定を受けていたというものです。
しかも、これらの不正は古いものでは1989年には認められ、最終
的には174件もの不正があっとし、特に2014年以降増加したと述
べています。その結果、国内外の全工場で、自社で開発した自動車
の出荷を停止すると発表しました。新車の安全性を確認する試験な
ども見つかったことを受け、生産も停止すると発表しました。
発表においては、不正は25の試験項目におよび、現在国内で生産・
開発中の28車種すべてで見つかったということです。対象は既に
生産終了したものも含めて64車種と3つのエンジンで、親会社の
トヨタ自動車が販売する22車種も含まれています。
第三者調査委員会は、ダイハツが強みとしてきた短期間での新車開
発が品質不正の原因であるとしています。開発期間を守ることが目
的となり、最終工程である認証試験にしわ寄せが来て、極度なプレ
ッシャーがかかっていたと指摘しています。「責められるべきは不
正行為を行った現場ではなく、経営幹部だ」と報告書は述べていま
す。
■■ 基準適合性確認は特別採用か ■■
不正行為のあった車は市場では使えないのでしょうか。試験のやり
方、手順が規定に反していたとはいえ、最も重要な車の機能に問題
があるかどうか、特に安全性に問題があるかどうかは(経済合理性
からみても)重要な視点です。
ダイハツは不正が見つかった車種について、改めて性能が基準を満
たすかどうかについての技術検証を行うとしました。また、監督官
庁である国土交通省では、順次、「基準適合性に関する検証」を行
なうと発表しました。
■■ 検証が終了した5車種 ■■
国土交通省は2024年1月19日に5車種の検証結果を公表しました。
1.経緯
令和5年12月20日にダイハツ工業株式会社から型式指定申請に
おける不正行為の報告を受け、国土交通省において、立ち入り検査
等により事実関係の確認を行った結果、46車種において不正行為が
行われていたことを確認した。国土交通省は不正行為が確認された
46車種のうち、開発中の1車種を除く45車種について、道路運送
車両法の基準適合性に関する確認試験などの技術的な検証を速やか
に行い、結果の出た車種から順次公表することとしている。
2.検証結果
別紙の5車種について、道路運送車両法の基準に適合しているこ
とを確認した。このため、当該5車種については、出荷停止の指示
を解除する。
3.今後の対応
他の車種についても、速やかに基準適合性の検証を行い、結果の
出たものから順次公表する。なお、検証結果については、順次、国
土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_005013.html
に掲載する。引用:土交通省
国土交通省がどのような確認試験を行ったのかは明らかにされてい
ませんが、この確認試験は事の経緯から、451号で述べた特別採用
の一つであると思います。規定通りに行なわれなかった製品ではあ
るが、ある期間の限定した範囲で該当する製品は実質的には使用で
きると採用することにしたわけです。ここで、重要なことは実質的
に使用できると判断した根拠であることは言うまでもありません。
■■ ダイハツの決意 ■■
ダイハツはホームページでつぎのようなコメントを発表しています。
当社は、この度の認証不正問題について、お客様をはじめとする
すべてのステークホルダーの皆様に多大なご迷惑をおかけしており
ますことを改めて深くお詫びいたします。国土交通省からの是正命
令に続き、今回の型式指定取消しという行政処分を受けたことを真
摯に受け止め、認証業務の見直しに留まらず、法令遵守を大前提に、
経営、職場風土や文化、適切なモノづくり&コトづくりという3つ
の観点から改革に取り組み、トヨタの全面的な支援を受けながら、
再生に取り組んでまいります。
速やかに、再発防止策をとりまとめ、国土交通省へ、是正命令受領
後1ヶ月以内に報告し、その後の実施状況についても四半期毎に報
告してまいります。引用:ダイハツはホームページ
(つづく)