ISO9001キーワード PDCA | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.471 ■□■
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*** ISO9001キーワード PDCA ***
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前回はISO9001:2015箇条5.2から「目標」を取り上げ、目標に関して1950年代
に一世を風靡したドラッカーのMBOすなわちManagement By Objectives(目
標による管理) という概念についてお話ししました。前号でMDO(目標管理)
の本質はPDCAであると言いましたが、ISO9001規格の序文にはそのPDCAの
説明があります。

■■ PDCA  ■■
JISQ9001:2015序文にはPDCAの説明があります。

0.3.2 PDCA サイクル
PDCA サイクルは,あらゆるプロセス及び品質マネジメントシステム全体に適用
できる。図2 は,箇条4~箇条10 をPDCA サイクルとの関係でどのようにまと
めることができるかを示したものである。
PDCA サイクルは,次のように簡潔に説明できる。
- Plan:システム及びそのプロセスの目標を設定し,顧客要求事項及び組織の方
針に沿った結果を出すために必要な資源を用意し,リスク及び機会を特定し,かつ,
それらに取り組む。
- Do:計画されたことを実行する。
- Check:方針,目標,要求事項及び計画した活動に照らして,プロセス並びに
その結果としての製品及びサービスを監視し,(該当する場合には,必ず)測定し,
その結果を報告する。
- Act:必要に応じて,パフォーマンスを改善するための処置をとる。

出典 JISQ9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項

多分、PDCAは世の中で物事を管理するツールとして、一番知れ渡っているもの
であると思います。以下東京大学名誉教授飯塚先生のメルマガを参考にPDCAの
本質について述べてみたいと思います。

■■ PDCAの本質  ■■
組織の活動において、効果的,効率的な管理のために,PDCAサイクルを回すと
いう考え方が有効ですが,問題が起きた業務プロセスについて,PDCAの各ステ
ップのどこに問題があったのかという見方も重要です。

とりあえず持っていたい視点は「計画の質/実施の質」という見方です。問題の
分析の際に,その原因がPlan計画にあるのかDo実施にあるのかを,切り分ける
ことから始めるという考え方なのですが,もっと詳細にPDCAのどのような面に
どのような不備があったのかを検討してみようということです。

PDCAサイクルは目的達成のためのステップとして以下のような活動から成り立
っています。飯塚先生はPDCAをそれぞれ2つに分割して説明をしています。
PDCA=目的達成のための活動
Plan  P1:目的,目標,ねらいの明確化
    P2:目的達成のための手段・方法の決定
Do   D1:実施準備・整備
    D2:(計画,指定,標準通りの)実施
Check C1:目標達成に関わる進捗確認,処置
    C2:副作用の確認,対応
Act   A1:応急処置,影響拡大防止
    A2:再発防止,未然防止

業務プロセスで起きた問題は,このPDCAのステップのどこにどのような問題
があったからなのでしょうか。

■■ PDCAのどこに問題があったか ■■
Plan:目的・目標は明確だったのでしょうか。また妥当だったのでしょうか。
目的・ねらいを理解していたのでしょうか。進むべき方向を見誤っていれば,
真の目的,真のねらいは達成できません。目的が正しく理解され,設定されて
いたとして,目的を達成するための手段・方法は決めたのでしょうか。それ行
け,とばかりに活動はしていても,何をすべきか決まっていなかったかもしれ
ません。決まっていたとして,目的達成のための手段・方法は妥当だったので
しょうか。日常業務でいうと,手順,マニュアル,作業標準,ガイドラインな
どは正しく,それに従えば満足な結果の得られるようなものだったのでしょう
か。
Do:実施のために準備しておくべきことは整っていたのでしょうか。例えば,
使用する機器類は満足な状態にあったのでしょうか。担当者はその業務を行う
のに十分な知識・技能を有していたのでしょうか。用いる材料,物品は,まと
もなものだったのでしょうか。そして,実施においては,決められた通りに実
施したのでしょうか。
Check:業務が満足に進んでいるかどうか進捗を把握していたのでしょうか。
進捗把握で得られた情報の意味を正しく理解していたのでしょうか。何も気が
付かずに重大なことを見逃していたのかもしれません。副作用,副次効果につ
いての確認もしたのでしょうか。こうした確認は事実に基づいて実施したので
しょうか。
Act:満足できない事態が起きていることが分かったとき,迅速・的確に処置
したのでしょうか。起きた事象によっては対応の方法を考察するための問題分
析が必要になりますが,それはなされていたのでしょうか。小さな問題を大き
くしないためになすべきことは実施されていたのでしょうか。今回の問題発生
より前に,類似も問題が発生したとき,きちんと原因分析をして再発防止,未
然防止の策を講じたのでしょうか。今回の問題は,そのときまともなプロセス
に改善しておかなかったためにおきた「再発問題」ではないのでしょうか。

(つづく)