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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.477 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード 人々3***
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ここ10年エンゲージメントという言葉が多く聞かれるようになりました。エ
ンゲージリング(結婚指輪)に代表されるようにエンゲージメントという言葉
は約束、取り決めを意味します。そこから派生して、雇用する、雇用されると
いう組織と個人の雇用契約にも使われます。
最近の多くの使われ方が「やりがい、満足」といった、従業員の組織への献身、
忠実さ、そこから得られるであろう自己成長に関係しても使われています。
■■ 日本のエンゲージメントは低い ■■
アメリカのギャラップ社の調査によると日本の従業員のエンゲージメント、す
なわちやりがい、満足度は主要国の中で下位に甘んじていると言われています。
その調査では、engaged (やる気のある)者の比率が日本では組織のわずか6%
であると示されています。
以下ランク表に示されている国名とengaged な者の比率は次のとおりです。
・世界平均 15%
・アメリカ/カナダ 31%
・ラテンアメリカ 27%
・ロシア 25%
・東南アジア 19%
・アフリカ諸国 17%
・東ヨーロッパ 15%
・ニュージランド 14%
・中東諸国 14%
・南アジア 14%
・西ヨーロッパ 10%
・西アジア 6%
・日本 6%
このデータは経済産業省の研究会から発行されたもので信頼あるデータである
と思いますが、私にはにわかに信じられません。
(出典) 経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会
~ 人材版伊藤レポート ~ 図表15 令和2年9月
そもそも「やりがい」をどのように測定するのでしょうか。やりがいは心の置
かれている状況と強い関係性がありますからどのように測定したのか大変に興
味のあるところです。
調査の結果、日本は139ヵ国中132位と書かれています。
■■ エンゲージメントの重要性 ■■
現在進めている経営戦略の実現、新たなビジネスモデルの達成には、必要とな
る人材に最大の能力・スキルを発揮してもらうことが必至です。そのためには、
従業員がやりがいや働きがいを敏感に感じ取り、主体的に業務に取り組むこと
ができる環境を創りあげることが必要となります。
このためには、企業と個人が対等な関係の下で、一体となって、企業の成長の
方向性や組織目標の達成と多様な個人の成長のベクトルを一致させていくこと
が重要です。企業においては、企業理念や存在意義(パーパス)、経営戦略や
ビジネスモデルを含めて従業員に積極的に発信・対話し、共感や納得感を得て
いく取り組みを進め、定期的に状況を把握していく必要があります。特に企業
と個人との間の情報の非対称性(情報量と質の違い)をなくし、情報をオープ
ンにしていくことが、個の自発性を後押しすることにつながります。
また、出社を基本とする就業条件や画一的なキャリアパス、年次別の研修では
なく、兼業・副業、在宅勤務などの多様で柔軟な就業環境の整備、社内外を含
めた多様なキャリアパス等の魅力的な就業経験や機会(EX)の提供、意欲ある
個人に対する幅広い教育訓練コンテンツの提供等、多様な個人一人ひとりに向
き合い、価値創造を最大化することが今日の企業には強く求められています。
※ EX
エンプロイーエクスペリエンス(EX/Employee Experience)とは、働くこ
とを通して従業員が得るあらゆる経験価値のことを言い、日本語では「従
業員体験」と訳されます。
(つづく)