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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.485 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード 人々11 (人事評価の基準)***
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■■ 人事評価に関して ■■
上司から、「目標のたて(させ)方がわからない」、「目標設定時の部下とのやり
取りがわからない」、「評価のときの基準がわからない」などの質問が寄せられ
ます。
部下からは、「目標設定上の自主性を認めてくれない」「遂行過程での上司のチェ
ックがこまかすぎる(あるいは大ざっぱすぎる)」、「評価が納得できない」など
の不満が寄せられます。今回は人事評価の基準についてお話をしたいと思います。
■■ 人事評価の基準 ■■
人事評価には、絶対評価と相対評価の2つがあります。絶対評価を理解するには
次の話が有用だと思います。
禅問答では課題を「公案」といいます。例えば、「両手を打って片手の音を聞く」
という公案があります。これは、物事はすべて1 つでは成立しないとか,ものの
見方は多面的だという意味を持っています。
次の公案はどうでしょうか?「誰もいない森で木が倒れて音がした.それを音が
したといえるか」という公案です。この問答の意味は,たとえ誰もいなくても,
絶対的な存在とか絶対的な真実,事実というものがあるという考え方もあれば,
誰かに認知,認識されなければなきに等しい,意味がないという考え方もありま
す。つまりは絶対的認識論,相対的認識論についてのお題です。
人事評価に絶対評価と相対評価のどちらを採用するかは、それぞれのメリットと
デメリットがあるので自社に適した方法を選択することが重要です。どちらかを
選択するのではなく、組み合わせることも有効です。
■■ 絶対評価と相対評価 ■■
人事評価における絶対評価と相対評価の利点と弱点についてお話しします。まず
は、絶対評価と相対評価とは何かについてです。
絶対評価 :上記禅問答に出てきたように他者との比較は行わない評価方法です。
上司と相談して決めた個人目標に対して、他者とは関係なくどこまで達
成できたかで評価します。目標の性質によりますが達成度合いが数値化
できているとお互いに(部下と上司)納得することができます。
相対評価 : 部内で達成状況を他者と比較をしながら評価する方法です。会社全
体でA、B、Cと評価する規定になっているとすべての部署に、例えば
A=20%、B=60%、C=20%と評価の分布が割り振られます。
分布と照らし合わせながら決定するので数字上は90%達成できたとして
も比較対象者の多くが95%達成しているとその人はBと評価されてしま
います。すべての人の目標が数字化されているとは限りませんので、比
較することに上司の主観が入る余地があります。
次は、両者の利点と弱点についてです。
絶対評価 : 利点としては、他社に影響されずに評価されるので本人には不満が
残りづらいといえます。本人が期初に納得してすり合わせた目標なので
達成した、しない、あるいはどの程度達成したかは本人の責任であると
いえます。
弱点は、期初の目標設定に時間がかかります。すべては自分の努力次第
となると、高い目標は敬遠したくなりますので、上司との話し合いが重
要になり、つい時間がかかることになります。また会社全体での人件費
の予算統制がしづらくなる弱点があります。
相対評価 : 利点としては、上司は割り当てられた予算を分布によって部署全体
の評価をすればよく、評価者によるばらつきは抑えられ、かつ比較的時
間もかかりませんし、部下を説得する理由も会社全体の予算からだと言
えます。部署内の競争意識が高まり部署内の活性化が図れる可能性があ
りますが、チームワークに負の影響を与えるかもしれません(以下弱点
の範疇)。
弱点としては、被評価者の納得が得られない可能性が高まります。
公平性を欠いた評価となる可能性があり、時間も少なく評価に対する不
満が残ることが高まります。
JOB型人事になると絶対評価になる傾向が強くなります。人的予算を管理するよ
りも、個々人の目標達成度をダイレクトに評価することで会社全体の業績が高ま
ることを期待でき、予算統制の意味が少なくなるようです。しかし、本当にその
ような結果になるかはフォローする必要があります。
(つづく)