第31回テクノファ年次フォーラム―気候変動4 | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年3月12日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.500 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 第31回テクノファ年次フォーラム―気候変動4 ***
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このメルマガの第1号は、2008年12月「マネジメントシステムはつながって
いますか」というタイトルで発信させていただき、それがメルマガの嚆矢(こ
うし)となりました。それから16年経って今般500号となりました。
振り返ってみて、我ながらよく続いたと思います。これは読者の皆様から折に
触れてご質問を含む叱咤激励を頂いた賜物です。中には私の記述の誤りを指摘
していただいたVol.もあり、毎回緊張をしながら発信させていただいてきまし
た。今後ともどうぞ宜しくお願いします。

■■ 第31回テクノファ年次フォーラム ■■
2025年3月5日、新橋の新虎通り(旧称マッカーサ通り)のビルで第31回テ
クノファ年次フォーラムが開催されました。今年のテーマは「サステナビリティ
へのISOマネジメントシステムの対応」でした。登壇者には、JAB専務理事
森内譲氏、東京大学名誉教授 山本良一氏、(株)SUBARU/JAQG規格検討WG
主査 小田晴信氏を迎えての盛大なイベントとなりました(参加者1000名、WEB
含む)。ここでは山本先生の講演を抜粋してお伝えします。山本先生からは、地
球環境が一刻の時間余裕もないほどに逼迫した状態になっていることをいろい
ろな事実、論文、科学的データを駆使しての講演いただきました。
以下は、先生の講演の中からの抜粋で、ぜひ皆様方にも知っていただきたいと
思います。

■■ トラファルガー広場に出現したCO2風船 ■■ 
CO2の排出削減といいますが、私たちはCO2 1トンという量をよく知りませ
ん。2021年のCOP26はイギリスグラスゴーで開催されましたが、CO2 1トン
の入った風船がトラファルガー広場に展示されました。
なんとそれは直径10メートルの球体でした。驚くべきはこの巨大な風船が毎日
1億個も地球上から放出されているという事実です。
2020年の世界のCO2排出量は約314億トンです。一日当たり約1億トンのCO2
が排出されているのです。10メートルもの巨大な風船が1億個とは想像がつきま
せんね。
データで見る温室効果ガス排出量(世界) | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

■■ 森林の吸収量  ■■ 
一方で地球上にはこれまた巨大な森林が存在します。2019年のデータでは世界
の1年間の森林のCO2吸収量は約156億トンだそうです。したがって、データ
の年度は違いますが、前項CO2排出量との関係からCO2排出量の約50%は森
林が吸収しているという計算になります。
環境省 000148802.pdf
では、排出されたが吸収されずに大気中の残ったCO2はどうなるのでしょうか。

■■ 大気中に放出されたCO2は永遠に存在する ■■ 
2007年に出された第4次IPCC報告書によると、放出され森林に吸収されずに
残ったCO2の約半分は30年掛かって宇宙に放出されるということです。あと
半分は数世紀から数千年の間大気中に残留するのだそうです。
したがって、長年放出されたCO2は大気中に留まり空気中のCO2濃度を上げ
ていることになります。
温室効果ガス世界資料センターの解析による2020年の世界のCO2
平均濃度は、前年と比べて2.5ppm増えて413.2ppmとなっています。工業化
(1750年)以前の平均的な値とされる278ppmと比べて、約50%増加してい
ます(ppmは大気中の分子100万個中にある個数を表す単位)。
CO2濃度が高くなるにつれて、人間の呼吸器には健康被害が出始め、濃度が
20% (200000ppm) になると死に至るとされています(窒息死)。現在の状況で
は致死量に至ることは考えられませんが、健康への影響でCO2濃度は、オフィ
スや住宅では1000ppm以下、学校や教育機関では1500ppm以下とすべき努力
義務があります(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)。密閉された
空間ではある程度の頻度での換気が必要とされる所以です。

■■ 温暖化で蓄積された熱はどこに行っているのか ■■ 
山本先生によると450ppmに濃縮されたCO2はビニールハウスと同じ現象で
(太陽からの熱を地球が反射して宇宙に放出する量を多く捕捉して)地球を暖
めているのだそうです。地球表面に蓄積された熱の89%は海に蓄積されている
そうです。その他、6%は陸に、4%は氷河に、1%は大気に蓄積されていると
いうデータが示されました。
このエネルギーの蓄積による影響はいたるところに現れ始めているということ
です。最近の事例が講演で話されました。
 ・2024年 スペイン バレンシア州の豪雨 8時間の間に1年分の雨が降
      ったため大洪水が起こり217名死亡
 ・2024年 アメリカ海洋大気庁発表 世界の1600カ所以上で歴史上最高
      気温を記録、南極・北極の氷の融解で水が赤道付近に集まり地
      球自転速度を遅くしている。そのため1日の時間が長くなって
      いる。
 ・2025年 アメリカ カリフォルニア州 森林火災 18万人避難、24名
      死亡、岩手大船渡市森林火災

■■ ティッピングポイント ■■
ティッピングポイント(Tipping Point)とは、あることが敷居を超えて一気
に野火のように広がる劇的な瞬間のことを言うのだそうです。この言葉は、
1970年代にアメリカで普及した言い回しで、アメリカ北東部の比較的古い都
市に住む白人の市外への脱出を示す言葉だったという。ある特定の区域に住
むアフリカ系住民がほぼ20%を超えるとその地域に残っていた白人が一斉に
町を出ていく社会現象を指していたのだそうです。
何人かの学者が「地球はもう戻れないところに来てしまった可能性がある」
と警告しています。
 ・アマゾンの熱帯雨林での高頻度の干ばつ
 ・北極海の海氷の縮小
 ・サンゴ礁の大規模な死滅
 ・グリーンランド氷床の加速度的な減少
 ・永久凍土の融解