2025年4月23日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.506 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード コミュニケーション6 ***
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前回は人間の自己防衛本能がコミュニケーションに影響を与えているということ
をISO9001箇条7.4「コミュニケーション」と関連させて話をいたしました。
その話の展開において、自己防衛本能は無意識な頭脳の働きであると説明しまし
たが、人間の体にも(もちろん無意識な)自己防衛機能があります。
■■ 免疫 ■■
それは人間の体を細菌などから守る免疫(immunity)です。例えば、白血球は自
分の細胞と違う異物(抗原)を見分け、それを取り除こうとします。医学の世界
では、自分の細胞のことを自己(じこ)、自分ではない異物のことを「非自己(ひ
じこ)」と呼んでいます。
心の世界では自分に合わないことはストレスになりますので「非自己」であり、
それを無意識に排除しようとする結果、非自己とはコミュニケーションを取るこ
とが弱くなる、または取れなくなります。
外部からの細菌やウイルスの体への攻撃は免疫によって守られますが、細菌とウ
イルスは違います。細菌は単独で体の細胞に取り付き増殖して体にダメージを与
えますが、ウイルスは単独では増殖できません。ウイルスは人間の体の表面を覆
う皮膚や粘膜(鼻やのどの奥、消化管、生殖器など)から侵入し、人間の細胞に
入り込んで細胞を乗っ取り、その中で増えます。
免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがありますが、具体的には以下のよ
うな働きをしてくれています。
・体の外から侵入したウイルスや細菌などから体を守る
・体内の老廃物や変異をした細胞(がん細胞など)を処分・排除する
■■ 自然免疫 ■■
自然免疫は、人間体に生まれつき備わっている免疫の仕組みです。免疫細胞が異
物である病原体などをいち早く認識し、攻撃・排除します。ウイルス、寄生虫、
細菌への対応のほか、老廃物や変異をした細胞の排除なども自然免疫による作用
です。自然免疫として認識されているものには以下のような免疫細胞があります。
(1)好酸球:白血球の一種で寄生虫や細菌を排除する。
(2)好中球:白血球の一種で処理した細胞を殺菌する。
(3)マクロファージ:侵入した異物を処理する(食べる)。
■■ 獲得免疫 ■■
自然免疫はウイルスの種類や細菌の種類を問わずに働きますので、最前線の防御
システムといえます。しかし、これでも万全ではない時には獲得免疫が働きます。
獲得免疫は、自然免疫で処理しきれなかった異物に対応する免疫システムです。
自然免疫で対応しきれない小さな異物や、すでに細胞に入り込んでしまった異物
を取り除く働きがあります。
獲得免疫には一度侵入した異物の情報を記憶できるという特徴があり、この「免
疫記憶」により、再び同じ異物が侵入したときにはより早く対処できるようにな
ります。ワクチンなどはこの免疫記憶の仕組みを活用したものです。
■■ 免疫と自己防衛機能 ■■
免疫と自己防衛機能の目的は同じです。すなわち、自分自身を外敵から守ろうと
することでは全く同じです。しかし、外敵から自分の身を守ろうとするプロセス
は異なります。
免疫は自分の力で外敵と戦おうとしますが、自己防衛本能は外敵と戦おうとせず
に身をすくめて敵をやり過ごそうとします。免疫は相手(外敵)とコミュニケー
ションは一切取りません。食うか食われるかの戦いなのでコミュニケーションど
ころか攻撃一辺倒です。それに対して自己防衛機能は攻撃と見えても、実は身を
守ろうとする余りの裏返しの行動です。自分の弱いところを隠そうとする余りに
相手から見ると攻撃的にみえる本能的な行動です。
人間の免疫力(攻撃力)を高めるにはバランス取れた食生活、規則正しい生活を
することが一番良いと言われていますが、これは科学的に免疫本来の機能を強化
する方法として解明されているものです。
自己防衛機能も同じことで、自身の弱いところを強化することが自己防衛機能を
高めることになります。そのためには自分を知ることですが、自己分析を適切に
行うことはなかなか難しいことです。
免疫力が高ければ有害なウイルスや細菌などにいち早く対応して、健康維持に繋
がり長寿命を得ることができます。自己防衛機能が適切であれば(自分を知って
いれば)コミュニケ―ション能力は上がり、良好な人間関係を築くことができま
す。