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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.95 ■□■
*** トリニダードトバコの会議 ***
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■□■ ISO45001の国際会議 ■□■
1月の日本では寒い時期に暑い南米に行って来ました。
カリブ海に面したトリニダードトバコという国です。
今回のISO45001労働安全衛生の会議が開催されるまでは
名前は聞いておりましたが、地図で確認するまで
どこに存在するのか知りませんでした。
南米ベネズエラの数十キロ沖にある2つの島、
トリニダード島とトバコ島からなるオイルリッチな小さな国です。
ウミガメの産卵の島として有名だそうです。
石油採掘がはじまる前までは農業、漁業だけの国でした。
しかし、今では国民一人あたりのGDPが20,000ドルと
中国の7,000ドルを大きく超えるような国になっています
(ちなみに、日本の一人当たりGDPは40,000ドル、
シンガポールは55,000ドル)。
しかし、最近の原油価格の暴落に頭が痛いとは
初日のISO/PC283(労働安全衛生マネジメントシステム)
総会での担当大臣の挨拶でした。
■□■ ISOとILOの歩み寄り ■□■
ISOとILOは2012年に
労働安全衛生マネジメントシステム規格を共同で作成しようと
覚書(MoU:Memorandum of Understanding)を交換しました。
2000年から10数年続いた国際的なジュアル(2重)な
労働安全衛生MSS(OHSAS18001とILOガイドラインOSHMS)を
一本化しようという両者の画期的な動きです。
会議においてISOとILOは、
以前よりはお互いが歩み寄っている印象を受けました。
以前というのは2013年のPC283設立当時のことを指します。
2000年から10数年続いた2つのMSSの影響が
両者にある種のわだかまりを作っていても
不思議ではありませんでした。
しかし、いくつかのグループに分かれての
スモールグループTG内の議論では
スムーズに意見交換が行われていました。
私はILOの日本人スタッフの方とは
一緒のグル-プにいましたが、
ILOの発言は建設的なものが多いせいもあるのですが、
ほとんど受け入れられていました。
具体的な個別議論になると、
組織の建前よりは発言の論理性でテーブルの出席者が
判断するからであると思います。
しかし、Plenary(総会)での議論になると、
一転して雰囲気が変り、
あいかわらずの建前論の応酬という図式になりました。
たぶん出席しているお互いの仲間を意識して
譲れないpoliticalな立場を強く主張するからであると
思います。
ここに更にISOとILOは工夫をしていく必要であると
感じました。
■□■ 論点はどこに ■□■
ISOとILOの論点の多くはILOが昔から国際的に定めている
ILS(International Labor Standard)との整合性にあります。
たとえば、”workers representative:労働者代表”を
定義するかどうか、するとすればどのような定義にするか、
ILS(International Labor Standard)との整合性は
どうかなどの議論がTGの中では行われていましたが、
結論は出ませんでした。
このような用語の定義を巡っての意見の対立は、
事前にISOとILOのleader同士が意見交換をしておけば、
歩み寄りできる内容であるはずです。
しかし、ISO側は事前の根回しをせずPlenary(総会)に
その可否を多数決に委ねました。
ILOにすればそれがMoUにあるILOを尊重するということに
触れると感じたはずです。
組織同士の関係も結局は人間関係と同じだと感じます。
規格内容を議論する以前の話であって、
いかに人間関係を築いておくかで
成果に影響を及ぼすものであると思いました。
ILOはMoUの立場を理解してくれという気持ちでしょうが、
ISOにしてみれば、従来と同じ手順を踏んでいるわけで
参加者全員の投票で可否を決定するという多数決理論で
ことを運んだにすぎないということでしょうか。
国際会議もしょせんは人間関係によるものであるということを
実感した会議でした。
以上