附属書SLの理解2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.91 ■□■
*** 附属書SLの理解 ***
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■□■ トップのリーダーシップ ■□■

箇条5「リーダーシップ」には、
今回初めて”リーダーシップ”という用語が登場しました。

これは、トップがマネジメントシステムに
あまり関与してこなかったのではないかという、
ISO規格作成者の問題意識によるものです。

自分たちのISOマネジメントシステムを、
自分たちの業績を上げるツールとしてトップが自ら先頭に立ち、
積極的にかかわる必要があるというということが規格の要求です。

リーダーシップ及びコミットメントの実証が求められています。

■□■ トップ不在のマネジメントシステム ■□■

事業プロセスとISO9001/ISO14001要求事項とを統合することも、
トップに要求しています。

トップ不在と組織実態と整合しないISO規格の活用
(認証のためだけの仕組みづくり)という、
世界中に広がる弊害を軽減するには、

日常の活動とISOマネジメントシステムとを
統合させなければならないという要求を必要であると
判断したのだと思います。

イギリスのノッティンガム大学が、
2010年にISO9001取得企業を調査したところ、
トップ不在の企業が多かったとレポートしています。

また監査で指摘されたことがフォローされず、
同じ問題が翌年も出てきて、
何のための是正処置かわからないということも指摘されています。

リーダーシップ及びコミットメントの実証とは、
トップは自らISO9001、ISO14001の構築を説明できなければ
システムは維持できないということを指しています。

今回のISO/DIS9001:2015国際規格案においては、
附属書Aにここまで述べたことが解説されています。

■□■ 事業プロセスとの統合 ■□■

箇条5.1「リーダーシップ及びコミットメント」に登場する
“事業プロセス”という用語はわかりにくいのですが、
プロセスを「活動」と置き換えれば理解しやすいと思います。

現行の規格でも「プロセス」がでてきますが、
これも「日ごろの活動」と捉えればいいと思います。

アメリカの著名な学者、マイケル・ポーターは、20年ほど前、
プロセス(活動)には「主要な活動」「支援の活動」「経営の活動」の
3つがあると説明しましたが、世界のどの組織においても仕事は
この3つに区分することができるという考えです。

主要な活動(主要プロセス)は、設計、製造、検査等、
製品・サービスに直接関与する仕事。

支援の活動(支援プロセス)は、経理や人事といった
会社全体の基盤を支える仕事。

経営の活動(経営プロセス)は、中期計画を作る、事業戦略を作る、
会社の方針を設定する活動を意味しています。

規格にでてくる事業プロセスもこの3つに分けることができますので、
規格要求事項をこれらの活動(事業プロセス)に一緒にすれば
(統合すれば)いいということです。

■□■ リスクと機会への取り組み ■□■

箇条6.1「リスク及び機会への取組み」は、
附属書SLとしてすべてのマネジメントシステム規格に
共通する内容です。

記されている
「XXXマネジメントシステムの計画を策定するとき、組織は、
4.1に規定する課題及び4.2に規定する要求事項を考慮し、
次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を
決定しなければならない」
は、いままでどのマネジメントシステム規格にも無い内容です。

ISO9001:2008版である現行のISO9001規格には、
問題が発生する前に手を打てという「予防処置」が規定されていますが、
附属書SLにはこの要求は存在しません。

しかし、「是正処置」は残っており、原因を特定して除去すれば
二度と同じ問題は発生しないという再発防止の考え方は附属書SLにも
継続されています。

■□■ リスク”risk”の定義 ■□■

「3.用語及び定義」のなかの「3.09 リスク」の定義である
「不確かさの影響」では、
注記1に「影響とは、期待されていることから、
好ましい方向又は好ましくない方向に乖離することをいう」として
二つの方向があることを解説しています。

その注記4では、
「リスクは、ある事象の結果とその発生の”起こりやすさ”との
組合せとして表現されることが多い。」と述べています。

例えば、高所作業時には、墜落することが起こり得ます。

その墜落した結果のひどさと起こりやすさとの組合せを
「リスク」といっています。

今日は良くても明日がどうかはわからない。

そのような不確実なことの影響を考えながら、
マネジメントしていく必要があるでしょう。

注記4はいままで使われてきたリスクの定義ですが、
附属書SLではより単純な定義をしていることに注意したいと思います。

ただし、この3.09の定義に関しては、
個別分野ごとに定義を個別に決めてよいということになっています。

ISO/DIS9001においては、注記5が追加されています。

「注記5 “リスク”という用語は,好ましくない結果が
得られる可能性がある場合にだけ使われることがある。」

■□■ 機会”opportunity”の定義 ■□■

附属書SLには機会”opportunity”の定義はありません。

定義がない場合には辞書によるということになっています。

附属書SLでは良いことを「機会」といっていますが、
開発に成功する、市場評価が高まる、お客様から注目される、
特許が成立する等、起きることがマネジメントシステムに
良い影響を与えることを意味しています。

この機会は、次の事項のために取り組む必要があるものを
決定しなければならない、と附属書SLは要求しています。

a)品質マネジメントシステムが,その意図した結果を
達成できることを保証する。
b)望ましくない影響を防止又は低減する。
c)継続的改善を達成する。

以上