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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.206 ■□■
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略8 ***
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前回、標準化とは“自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する
事柄を少数化、単純化、秩序化すること” だといいました。
ISO 9001も国際的な標準の一つです。組織の製品・サービスの質を
管理するためのマネジメントシステムの標準です。
■□■ 標準の使われ方 ■□■
標準は作り方も重要ですが、使い方はもっと重要です。前回交通標識の例を
上げましたが、交通標識は誰にも理解できるように工夫して作っていますが、
守ってもらえない標準もたくさんあります。
よく見かける例として、車が1台も通らない道の赤信号を歩行者が平気で
渡っているという風景がありますが、これは守らなくても使用者に不便で
ないからです。といって、これが習慣化するといつの日か事故に会うという
リスクを抱えての行動です。
■□■ 標準の種類 ■□■
何を標準にしているかによって、標準は使われ方が変わります。
5W1Hごとに考えてみましょう。
・Who 責任権限を決めたもの
・What 役割、守備範囲を決めたもの
・When スケジュールを決めたもの
・Where 工場、職場、場所を決めたもの
・Why 目的を決めたもの
・How 手順を決めたもの
■□■ 標準書の分類 ■□■
組織の中に5W1Hの視点からどんな標準があるのでしょうか。
組織は、5W1Hごとに標準書を作成するなんてことはしませんので、
あくまでも標準書のもつ「主要目的」からの分類をしてみます。
1.Who 責任権限を決めたもの
―組織図、職務権限規程、品質保証体系図、資格認定基準など
2.What 役割、守備範囲を決めたもの
―業務分掌規程、機能展開表、業務フロー図、要因割当表、
工事請負書、売買契約書など
3.When スケジュールを決めたもの
―スケジュール表、実施計画書、ダイヤグラムなど
4.Where 工場、職場、場所を決めたもの
―施設・機能一覧表、主要機械配置図、拠点案内図など
5.Why 目的を決めたもの
―創業理念書、方針書など
6.How 手順を決めたもの
―QC工程表、契約手順書、見積手順書、定期点検手順書など
■□■ 標準書の目的 ■□■
ここでの分類はあくまでも事例であり、中には的を得ていないものも
あるかもしれません。標準書はその目的に応じて、記述すべき力点が
変わってきます。作成者はその力点をよく認識して作成しなければ
なりません。
例えば、1.Who(責任権限を規定する)標準書に、6.How(手順を規定する)
を書くと標準書の焦点がぼけてしまいます。
1.Who(責任権限を規定する)には当然のこととして、業務の責任権限者を
規定しますが、そこへのHowの記述は最低限に絞らなければなりません。
同様に、6.Howの標準書は、仕事の手順を中心に記述します。
手順に関連してWhoも書きますがあくまでも部分的要素であると考えることが
よいと思います。
■□■ 品質保証体系図 ■□■
なぜ、標準書の分類、目的などに言及するかと言いますと、品質保証体系図が
適切に作られていないケースを散見するからです。
最近、品質保証体系図に関する検討が組織の中であまり行われていません。
そのためか、1.の標準書の一つである品質保証体系図の目的が理解されて
いないケースが多くあります。
品質保証体系図は顧客からの注文をスタートに一連の節目となる業務を時系列に
書き、最後の顧客への納品まで誰が責任を持って実施するのかを一覧表にした
ものです。
品質保証体系図の目的が責任権限のWhoにあると理解すれば、Howは最低限に
すべきである、ということが分かります。
Howは品質保証体系図とは異なる標準書に規定することになり、例えば、
業務フロー図などに規定することがよいでしょう。