ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.222 ■□■    
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-2***
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前回からISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を
達成するための指針」についての話を始めました。
2018年に改定されたISO 9004は「組織の品質」を扱っていることが特徴です。

■□■ ISO 9004;箇条4 ■□■

“組織の品質”とは,「持続的成功を達成するために,組織固有の特性がその顧客
及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度」です。
何が持続的成功の達成に関連しているのかを判断するのは,組織次第です。
この組織の品質は持続的成功のカギであると言っていますが、そのカギが
何であるかは書かれていません。

持続的成功の達成要素として利害関係者への対応が上げられており、直接の
顧客にとどまらず広く利害関係者を捉えることがよいとされています。

■□■ 利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度 ■□■

それでは、顧客及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度とは
何で計ればいいのでしょうか。ここで注目すべきは、「ニーズ及び期待を
満たす程度」は顧客だけでなく、その他の利害関係者も対象に入っている
ことです。

「顧客のニーズ及び期待を満たす程度」だけですと、従来も言われてきた、
「顧客満足」と同じに考えればいいのですが、広く「その他の利害関係者の
ニーズ及び期待を満たす程度」を対象に考えるとなると、多くの事柄が
浮かんできます。
候補として思い浮かんだことをどこまで何を行うのかは組織に委ねられています。

具体的には、次のようなことが候補になるでしょう。

1. 品質不祥事を起こさない。
  -不良品を流出しない。
  -データを改ざんしない。
  -法的要求事項を守る。
2. 関係企業と連携を取り、相互技術交流、相互研鑽を行う。
3. 改善活動の好事例を世の中に公表する。
4. 品質研究会、発表会、シンポジュームなどに参加して社会といろいろな組織と
  オープンに交流する。
5. 環境(CO2排出、エネルギー削減、産業廃棄物など)に配慮した経営を行う。
6. 災害を起こさない。
7. 情報を流出しない。
8. SDGs活動に参加する。
9. 社会的ボランティア活動に参加する。
10. 慈善事業を行う。

ISO 9004:2018は、「品質マネジメント」とタイトルが付いていますが、
取り扱っている対象は、持続的成功に関係する環境、安全、エネルギー、
CSRなど多岐にわたります。

■□■ 1.~10.はどのように特定するか ■□■

上記の1.~10.は思いつくまま上げてみましたが、箇条4.2.1では、
組織の品質を向上し,持続的成功を達成するためには、長期にわたり
その利害関係者のニーズ及び期待を一貫して満たすことにことが
望ましく、組織は次のようなことを行うことが望ましいとしています。

a)全ての利害関係者を特定し,そのニーズ及び期待並びに組織の
パフォーマンスに対するその個々の潜在的な影響を明確にするため,
定期的に組織の状況を監視,分析,評価及びレビューする。
b)組織の使命,ビジョン及び価値基準を明確にし,実行,伝達し,
整合性の取れた文化を促進する。
c)短期的及び長期的なリスク及び機会を明確にする。
d)組織の方針,戦略及び目標を明確にし,実施し,伝達する。
e)一貫性のあるシステムの内部で機能するよう関連するプロセスを
確定し,管理する。
f)そのプロセスにより意図した結果を達成することができるように,
組織の資源を管理する。
g)組織のパフォーマンスを監視し,分析し,評価し,レビューする。
h)組織の状況における変化に対応する組織の能力を支援するため改善,
学習及び革新促進を行うプロセスを確立する。

■□■ 組織の品質とは結局・・・ ■□■

箇条4に出てくる「組織の品質」とは、国柄、人柄などに通じる概念で、
社会から尊敬される程度・レベルなのかと思います。我々の日常生活でも、
いろいろなものを対象に品質が高い、低いという言い方をしますが、
組織に対しても品質が高い、低いという言い方ができ、品質の高い組織が
持続的に成功するというロジックでISO 9004:2015は作られている、
ということになります。
そして、品質が高い、低いという尺度は、「顧客及びその他の利害関係者の
ニーズ及び期待を満たす程度」であると規格は言っています。