英語を聴くむずかしさ | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.5 ■□■
  *** 英語を聴くむずかしさ ***
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テクノファ代表取締役の平林です。

再びISO国際会議についての話題です。

昔(50年ほど前)、小学校で「世界中の人が同じ言葉で会話ができる日が
いつかくる」というお話を先生から聞きました。

先生のお話では、その言葉は「エスペラント語」というもので、ヨーロッパの人
が提案している言葉だということでした。

それから50年、今日国際会議で使用されている言葉は英語です。あのエスペ
ラント語はどこへいってしまったのでしょうか。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 4つの英語能力 ■□■

国際会議では英語が聴けないと参加していても効果が半減します。英語能力
には次の4つがあります。

1.聴く能力
2.話す能力
3.読む能力
4.書く能力

4つの能力のなかでもっとも苦労するのが「聴く能力」です。私もその能力
向上に関していろいろな経験をしてきました。

よく言われるように、赤ちゃんは両親の話を聴くことからコミュニケーション能力
を発達させていきます。自分の孫を観察していてそのことの真実は身をもって
納得するところです。

言葉はその意味する行動と一体となった体験から、はじめてその意味を理解
することができると思います。ところが、我々大人の脳は既にいろいろな言葉が
ある意味をもってインプットされているので、なかなか行動と結びついた理解
に達することができません。

例えば、“go”と“come” というやさしい英単語の本当の意味がなかなか
身につかないのです。“I am coming to you.”(今向かっています。)という
表現は、行動と一体にならないとなかなか身につかないのです。

■□■ 相手の英語が分からない ■□■

国際会議で相手の言っていることが分からないと致命的です。当然きちんと
した意思疎通ができないことになります。

私が国際会議で経験してきた英語は、昔学校で習ったものとはだいぶ異なった
ものでした。

いろいろな国の人がいるから当然でしょうが、同じ単語でも聴こえ方が全く
違うのです。一口で「方言」と言っても、これほどの違いがあるのかと国際
会議に出席した2000年当初は途方に暮れたものでした。

私にとって一番聴きづらかった英語はネイティブの人(英国、アメリカなど
の人)の英語でした。特にスコットランド出身、ウエールズ出身の人の英語
は英語とは思えないものでした。

反対に聴きやすかった英語はネイティブでない人が話す英語でした。例えば、
ドイツ人、イタリア人、フランス人の話す英語です。

しかし、これらは一般的な傾向であって、聴きやすさに一番影響する要素は
その人個人のクセだと思います。

 
■□■ 聴くことをどのように学ぶのか ■□■

私は国際会議での経験を通じて、実践的な英語においては文法はあまり重要
ではないということを学びました。ここでいう文法とは、我々が学校で習った
受験英語のようなものを意味します。

勿論、主語、述語の順序のような最低限のルールは守らなければなりませんが、
これらは中学で学んだもので十分です。

このように文法には困りませんでしたし、読み、書きも大丈夫でしたが発音の
違いはいまでも戸惑うことがたびたびあります。

あるとき、「なっとー」と聴こえました。日本語でいう納豆にそっくりです。
しかし、その時の話題の前後関係から、とても納豆の話しが出てくるとは
思えません。

確認してみると、北大西洋条約を意味する“NATO”でした。日本ではナトー
と発音しますが、西洋ではネイトーと発音します。それがナットーと聴こえ
たのです。

“NATO”をナトーと思っている頭には、ネイトーと聴いても“NATO”である
とは絶対に気が付きません。
すでに日本語になっている英語を聴く場面が結構ありますが、これは聴くとき
に注意が必要です。ほとんどの日本語になっている英語は、ネイティブが発音
すると異なる聴こえ方になるからです。

結局、一つ一つの言葉についてネイティブがどのように発音し、どのように
聴こえてくるのかを経験によって体得するしか能力向上の秘訣はなさそうで
す。

「あるとき急に英語が聴こえるようになる」といったような英会話学校の宣伝
どおりのことは、私にはありませんでした。

■□■ 耳から入る言葉の誤解 - 日本語でも同じ ■□■

あるとき日本でラジオを聴いていると、「しゅんじゅうしゅぎ」という言葉に
ぶつかりました。そのときのラジオ番組の話題は昨今の世界金融不況でした。

「春秋主義」とはなんだろうとおもって、辞書を引きました。かろうじて
「春秋時代」がのっていました。「中国の時代区分の一つ。紀元前770年ころか
ら・・・」いわゆる中国の戦国時代のことを指す言葉だとあります。

どうも世界金融不況とは結びつきません。2,3日気になっていましたが、
あるとき新聞を読んでいて「新自由主義」という言葉が目に飛び込んできました。

新自由主義(neoliberalism:ネオリベラリズム)とは、今回の世界金融不況
の原因と目される「経済(金融)は市場の自由、合理性にまかせよう」という欧米の
考え方をいうのだそうです。

丸の内にある複合商業施設「オアゾ」。最初、その名を聴いたときは、「?
オアゾ?はて、何?どんな意味?」と思いましたが、これが何と、「オアシ
ス」を意味するエスペラント語oazo(オアーゾ)に由来しているとか。私は、
50年前の小学校の先生のお話を思い出しました。