■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.20 ■□■
*** 資格試験合格と職業適性 ***
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テクノファ代表取締役の平林です。
今回は「資格試験合格と職業適性」についてお話をしたいと
思います。
今回も宜しくお願いいたします。
■□■ ISOの審査員研修コースの合格率 ■□■
東京都検証主任者試験の合格率は20%位か?と、かつて書き
ました。これは国家資格試験並みの難関ですが、今後試験内容が
明らかになるにしたがって、徐々に合格率は上がっていくのでは
ないかと思います。
翻って、ISO審査員研修コースの合格率はどうでしょうか。
コースの種類(品質、環境、情報セキュリティなど)や、研修機関
によって当然異なりますが、海外他国の状況も含め検証主任者
試験の逆というところです。すなわち、80~90%程度の合格率
になっているのではないかと思います。
あえて極言すれば、勉強すれば合格できる試験であるといえる
ものです。審査員資格を取得すること自体は、現在の枠組み
では、それ程ハードルは高くなく、多くの人が突破できる道なの
です(当然のことながら、一生懸命勉強しなければ合格できま
せん)。
20%と80~90%の違いは、後者に5日間研修コースが試験の前段階
に用意されているところにあるのだと思います。つまり、受験前に
5日間 ISO規格の要点などを学び、質問にも懇切丁寧に答えて
もらえるという過程が存在することが大きく合格率を押し上げている
のだと思います。
■□■ 資格試験と職業適性 ■□■
現行のISO審査員資格制度では、意欲を持つ人であれば、資格取得
はまずできるのではないかと思います。
問題は、それらの方々が、たとえ優秀な方々であっても、審査員
という職業に向いているかどうかということです。
ISO審査員に求められる力量については、ISO19011などの規格
にも示されています。
現実的な言い方をすれば、勉強だけできる人では、務まらない
仕事です。質問する力、聞く力、判断する力、それも、人を相手
にした仕事です。
さらにごく限られた時間の中で、そのやり取りを相手として、
その上で、都度判断して、進めていかなければいけない仕事
です。
じっくり腰を据えて行なう仕事(例えば調査・研究業務)とは
かなり異なります。観察力、判断力、対人折衝力に加え敏捷力
などが求められる仕事なのです。
■□■ 職業適性をどうみる ■□■
審査員という職業の適性を見抜くには、残念ながら従来型の筆記
試験だけでは不足です。
そこに風穴を開けるべく、3年前よりJRCA(財団法人日本規格
協会マネジメントシステム審査員評価登録センター)では面談
形式の力量試験を取り入れました。
この力量試験、私自身も試験員として時々対応しますが、意義
深い、効果のある試験形式と思っています。
受講生が試験員(たいていの場合は講師)と1対1で、まさに審査
さながらのやり取りをする中から、適合、不適合の判断をして
いく試験です。
制度発足当初、たった10分間の面談形式の力量試験で何を見る
ことができるのか、評価できるのか、と疑問を呈する声も上がり
ました。
ですが、実際にその試験問題を作成、設定し、実施してみると、
10分間あれば、十分です。
これから審査という仕事を専門にされていく方のQMS(品質マネ
ジメントシステム)に対する理解度を含めた適性を見る、という
点では、極めて有効な試験です。
多くの方にとって、このような体験は初めてであるが故に、緊張
されるのをみて気の毒に思いますが、審査員という職業を考え
れば、実際の審査先ではこれ以上の緊張感を味わうことになります。
■□■ 面談形式の力量試験 ■□■
いざ面談形式の力量試験が始まると、その方の癖が様々な面で
表れてきます。
おとなしい性格の方、遠慮深い性格の方など、なかなか質問が
てきぱきと繰り出せずに苦労されます。
一方、思い込みの激しい方、自信満々の方などは、自分の予想
内の問答であればよいのですが、ちょっと予想外の返答が返って
くると、一気に詰まってしまわれます。
そして、中にはごく少数ですが、非常に不愉快なコミュニケー
ションをとってこられる方もいらっしゃいます。
管理職として、部下の教育などの現場でもまれてきた方、営業
経験の中で苦労されてきた方であれば決してとらないであろう
コミュニケーションスタイルをお持ちの方は、たとえどれほど
規格についての知識をお持ちであっても、サービス業である
審査員には残念ながら向きません。
そういった、様々な点がこの10分間の力量審査の中でよく見る
ことができるのです。
■□■ フォローアップ研修の必要性 ■□■
現在の力量試験を発展させると、既存の審査員のトレーニング
及び評価として面白いものができそうです。
認証機関(審査登録機関協議会:JACB)と、要員認証機関(JR
CA、CEAR、IRCAなど)、また被認証組織(各種工業会)も加え
て、自分たちに役立つ審査員トレーニング制度を作っていく必要
があります。
一番重要なことは、認証を受ける組織の声を必ず入れるように
することです。
審査は、何よりも、審査を受ける組織が、価値を見出してこそ、
存在意義があります。どのような点に価値を見出すかは、組織
によって様々です。
残念ながら、ISO審査員に組織経営の経験者はそう多くはおられ
ないと思います。そうであれば、審査員には、もっと組織経営
について知ってもらう教育をすべきです。
その上で、審査員はマネジメントシステムをどのように使い
こなすか、経営者の目線になって、その組織の審査を品質
なり、環境なり、情報セキュリティなりの分野を評価するのです。
■□■ 期待される審査員象 ■□■
経営者の目線になれることこそが、プロセスアプローチ審査
の真髄なのです。経営というプロセスを理解した上で、品質経営、
環境経営、情報セキュリティ経営などを評価するのです。
同時に、現場におけるプロセスも評価できなければなりません。
企業競争力は現場力で決まる要素を多く持っているからです。
規格要求事項の細部も決しておろそかにしない審査も一方では
大事なのです。
いってみれば、トップの視点と現場監督の視点の両方(組織
総てのプロセスの理解)を兼ね備えた審査員が必要なのです。
そのような力量を持った審査員は、現時点でももちろんいますが、
残念ながら少数です。いま、審査員の淘汰が始まっています。
優秀な審査員には、どんどん仕事が依頼される。一方、力量
不足の審査員は、いつまで経っても仕事にありつけない。
当然のことといえば当然ですが、このような期待される審査員
を如何に多く育成していくのかが、第三者審査制度を更に意義
あるものにしていく一つの道です。
もし、ご希望があれば、テクノファで、このようなことを議論
する勉強会を立ち上げてもよいと思っております。