■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.62 ■□■
*** キーワード「不揮発化された情報」 ***
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■□■ 文書化された情報 ■□■
SL附属書キーワード、すなわち次期ISO9001規格のキーワードの
1番目は「文書化された情報:documented information」です。
私は「文書化された情報」とは「不揮発化された情報」であると
考えています。マネジメントシステムは「今の良い状態をこれから
も継続して良い状態にしておく仕掛け」です。
継続していくためには各種情報が消えてしまってはだめです。
すなわち揮発性(volatile)ではだめなのです。不揮発性
(Non-volatile)にする工夫が「文書化された情報」には求めら
れます。
ここはマネジメントシステムの肝になるところです。
■□■ 不揮発化する工夫 ■□■
情報が消えないようにする工夫は、紙に書いておく、絵にしてお
く、壁に表示しておく、床にテープ貼りしておく、電子情報にして
おく、看板にしておく、写真にしておく、ビデオにしておく、チャ
ートにしておく、表にしておく、模型にしておくなどいろいろな方
法が考えられます。
「文書」と言われるとどうしても紙に書かれたそれなりに作文さ
れた文章を思ってしまいますが、この思い込みは無くさなければな
りません。
■□■ documentという英語 ■□■
documentという英語は日本では単純に「文書」と訳していますが、
元来の意味、語源的には「記録にしておく、すなわち消えないよう
にしておく」という意味です。
documentary filmという英語があります。日本でも「記録映画」
と訳されています。
ISO9001が日本に導入されてから、しばらくの間、文書と記録はど
う違うかという議論がありましたが、大きくいえば同じようなもの、
ただ管理の仕方が違うということでしょうか。
■□■ 「不揮発化された情報」にも維持管理が必要 ■□■
大きな病院へ行くと必ず床に何種類もの色の付いたテープが張っ
てあり(最近はペイントか?)自分の行先を案内してくれます。駅
にも最近は黄色のタイルが盲人の方に進路を教えています。
なによりも毎日利用している道路には白色のペイントが描かれて
おり、各種の指示、規制を無言のうちに歩行者、運転者に示してい
ます。これらの「情報」は日常生活に必須なものになっています。
これらはすべて附属書SLがいう「文書化された情報」に該当するも
のです。
可視化されたこのような情報は、簡潔で便利で使いやすいものです。
しかし、メンテナンスは必ずしなければなりません。道路でも時々白
線を引きなおしています。病院でも、空港でも、駅でも一度描いた「
情報」はだんだん消えていきますから最新化しないと期待された機能
を果たすことができなくなります。
■□■ 附属書SLの規定 ■□■
附属書SLには文書化に関する規定が多くあります。なぜこんなにも
多くの規定をしているかというと、マネジメントシステムの肝だから
です。
標準化されたものを消えないようにし、全員がそれを守ることがマ
ネジメントシステムを維持する唯一といってもいい方法だからです。
7.5.1 一般には、「XXXマネジメントシステムの有効性のために必要
であると組織が決定した,文書化された情報」をマネジメント
システムに含むことが要求されています。
7.5.2 作成及び更新には、次の事が要求されています。
-適切な識別及び記述(例えば、タイトル、日付、作成者、参照
番号)
-適切な形式(例えば、言語、ソフトウエアの版、図表)及び媒体
(例えば、紙、電子媒体)
-適切性及び妥当性に関する、適切なレビュー及び承認
7.5.3 文書化された情報の管理には、次の事が要求されています。
-文書化された情報が、必要なときに、必要なところで、入手可
能かつ利用に適した状態である。
-文書化された情報が十分に保護されている(例えば、機密性の喪
失、不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)
-配布、アクセス、検索及び利用。
-読み易さが保たれることを含む、保管及び保存。
-変更の管理(例えば、版の管理)
-保持及び廃棄
■□■ 「不揮発化された情報」と読み替えてみる ■□■
「文書化された情報」を「不揮発化された情報」と読み替えてみる
と異なった世界がみえてきます。道路に引かれた白線を思い出しなが
ら読んでみましょう。
例えば:
・「XXXマネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が
決定した,不揮発化された情報」をマネジメントシステムに含まな
ければならない。
・不揮発化された情報を作成及び更新する際、組織は、次の事項を確
実にしなければならない。
・不揮発化された情報が、必要なときに、必要なところで、入手可能
かつ利用に適した状態である。
・不揮発化された情報が十分に保護されている(例えば、機密性の喪失、
不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)
などとなります。