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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.74 ■□■
*** 附属書SLと次期9001、14001の改正 ***
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■□■附属書SLへの追加事項、逸脱事項 ■□■
今まで附属書SLのキーワードについてお話しをしてきましたが、
昨年テクノファ年次フォーラムでは附属書SLに関して、有識者の方に
集まっていただいてパネルディスカッションを行いました。
今回からはその時の様子をお話ししたいと思います。
パネラーは次の方々でした。
・中條武志 ISO/TC176(品質マネジメントシステム)日本代表委員
・国内審議委員会委員長、中央大学教授
・吉田敬史 ISO/TC207(環境マネジメントシステム)
日本代表委員・国内審議委員会委員長、
グリーンフューチャーズ社長
・野口和彦 ISO/TC262(リスクマネジメント関連)日本代表委員、
三菱総合研究所研究理事
・奥野麻衣子 ISO/TC207/SC1(環境マネジメントシステム)日本代表委員、
TMB/TAG/JTCG対応TC207/SC1代表委員、
三菱UFJリサーチ&コンサルティング環境・エネルギー部
副主任研究員
・高取敏夫 ISO/IECJTC1/SC27(情報セキュリティマネジメントシステム)
国内審議委員、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)情報マネ
ジメント推進センター副センター長
私、平林がコーディネーター(司会)を務めさせていただきました。
■□■ISO9001と附属書SLへの追加について■□■
総てのMSS(マネジメントシステム)規格は附属書SLに
準拠することが求められています。
特に、附属書SLからの逸脱はTMB(ISOのボード)へ
報告しなければならないことになっています。
追加はそれぞれのTC(専門委員会)の裁量に任されています。
ISO9001規格は2015年9月発行を目標に議論が進んでおり、
現在CD(委員会原案)が承認され、DIS(国際規格草案)に向けた議論が
行われているところです。
■以下、フォーラムの時の様子をお伝えします
(編集上、出席者の方の発言は平林の責任でまとめさせていただいています)。
平林:最初に中條先生にISO9001改正についてうかがいます。
中條先生:
現在、IS09001はCD(委員会原案)の段階ですが、附属書SLから
逸脱しているところが何ヵ所かあります。
ただ今までの議論の推移を見ていると、断言はできませんが、
今後の会議で見直されてこれらの逸脱はなくなると思います。
ただIS(国際規格)になるまで時間があるので、今後も逸脱する
ところが出てこないとは言い切れない状況です。
一方、IS09001独自に追加する要素に関しては、
当然ですが出てきています。
中でも一番大きいのは附属書SLにおける箇条8の「運用」に関係する内容です。
もともと箇条8では、附属書SL「8.1運用の計画及び管理」以外は、
各専門委員会で検討することになっているため、
SL本文にはほとんど書かれていません。
IS09001おいて「運用」は2008年版では箇条7ですが、IS09001において
重要な要素であり、CD版には多くのテキストが入ってきています。
■□■プロセスアプローチの追加■□■
平林解説:
他には、4.4.2に「プロセスアプローチ」が要求として
追加されていることが大きいと思います。
そこでは「プロセスアプローチを適用しなければならない」に加えて
次のことが要求されています。
1)品質マネジメントシステムに必要なプロセスの明確化
2)各プロセスについて、インプット、アウトプットの明確化
3)各プロセスの順序及び相互関係の明確化
4)リスクの明確化
5)判断基準、方法、測定、パフォーマンス指標の明確化
6)プロセスの責任権限の割り当て
7)各プロセスの意図したアウトプットをもたらし続けることの確実化
8)プロセスの改善
■□■計画の変更を追加■□■
中條先生:
6章に細分箇条6.3「変更の計画」を追加しています。
これは何かを変更する際、さまざまなトラブルが起きる可能性がある
ので、しっかりと計画を立てる必要があるということです。
平林解説:
変更管理については、8.6.6においても「変更管理」というタイトルで
ズバリ「組織は、商品・サービスの完全性を維持するため、変更による
潜在的影響のレビューを考慮し、必要に応じて処置をとりながら、
計画した体系的な方法で変更を実施しなければならない」と要求しています。
箇条7には、7.1.2「インフラストラクチャー」、7.1.3「プロセス環境」、
7.1.4「監視機器及び測定機器」、7.1.5「知識」が追加になっています。
■□■7.1.5「知識」とは■□■
平林解説:
箇条7に追加になっている「知識」についてもう少し説明します。
ここでの要求は次のとおりです。
「組織は,品質マネジメントシステム及びそのプロセスの運用,
並びに商品・サービスの適合性及び顧客満足を確実にするために
必要な知識を決定しなければならない。
この知識は,必要に応じて,維持し,保護し,利用可能にしなければ
ならない。」
続いて次のように要求しています。
「ニーズ及び傾向の変化に取り組む際に,組織は,現在の知識ベースを
考慮に入れ,必要な追加の知識を入手する方法又はそれらに
アクセスする方法を決定しなければならない(6.3 も参照)」
組織がいままで蓄積してきたノウハウ、知財一般は総て組織の知識として
大切に管理する必要があるということです。
つづく