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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.80 ■□■
*** 附属書SLとトップのリーダーシップ ***
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■□■附属書SLのおけるトップの役割■□■
フォーラムの続きです
(昨年テクノファ年次フォーラムでは附属書SLに関して、
有識者の方に集まっていただいてパネルディスカッションを
行いました)。
フォーラムの時の様子をお伝えしますが、
出席者の方の発言は平林の責任で編集させていただいています。
平林:
次にトップマネジメントについてご意見をうかがいます。
トップの存在なくしてマネジメントシステムの構築・運用は
難しいとよく言われます。
その一方で現実にトップが参画しているケースは
どれくらいあるのか?、という話も聞きます。
附属書SLにおけるトップマネジメントの位置づけも踏まえ、
このトップ参画に関する課題に対してご意見をお願いします。
中條先生:
まず、マネジメントシステムが成り立つ前提として、
トッブの参画は当たり前でしょう。
ただし、実際の運用では十分とはいえないケースが
少なくない事実もあるようです。
そういう中で、今回の附属書SLの中で
トップマネジメントについてキーとなってくるのは、
「4.1組織及びその状況の理解」と
「4.2利害関係者の二一ズ及び期待の理解」だと考えています。
ここでは「組織の状況や二一ズをしっかりと把握する」ことが
明確に要求されています。
箇条5のリーダーシップでは、
「方針・目的を確立するときに、
戦略的な方向と整合させるように作りなさい」と
明確にトップが関わることを求めています。
ですから今回の附属書SLの登場によって、
現状よりよい方向に動くのではないかと期待しています。
■□■トップの関与はほっておけばよい■□■
中條先生:
組織側の悩みとして、トップに参画してもらうのが難しい、
といった声があるようです。
こうした状況に対してどんな手を打つのか、
いろいろ対策はあって、その一つとして、
「トップが品質マネジメントシステムに関心を寄せず
よそを向いているなら、そのまま放っておけばいい」と
いう考え方もあります。
トップが品質マネジメントに関心を寄せないなら、
お客さんのニーズに応えていくことはできないので、
そう遠くないうちに経営が破たんしかねない状況に陥る、
その時になってようやくトップは気づく、という筋書きです。
これはちょっと乱暴すぎるかもしれませんが、
マネジメントシステムに関わることがいかに大切なのか、
このテーマについてトップを教育すると言うとおこがましいですが、
知ってもらう仕掛けや努力が重要だと思っています。
トップの関与が浅いために不祥事や事故を起こしている
企業の実例がいろいろあることは、マスコミ報道などで
皆さんご存知でしょう。
そういう話を挙げるなどして、トップに自身が関わることの
重要性をまずは知ってもらえればと思います。
■□■ 附属書SLはすばらしい ■□■
吉田さん:
トップが関心を寄せないなら「放っておけばいい」という
今のお話に全く同感です。
トップが関与しないと、ろくな成果が出るはずはないのです。
附属書SLをどう活用するかですが、
先ほど正当性に疑問があると言いましたが、
それは規格開発の手続き論についてであり、
中身に関しては、正反対の評価です。
私は、1990年代前半から規格の共通化問題を
日本代表として見てきており、
いろいろな場の議論にも参加した経験がありますが、
実際に附属書SLができて読んだときには、
「よくぞここまでの内容が作れた」とたいへん感動しました。
とりわけ、トップマネジメントの関与を
強く求めている点にも惹かれました。
組織の状況を踏まえてきちんと「戦略レベル」で意志決定を行い、
「リスクと機会」という認識の下に、トッブが積極的に関与して
組織をうまくマネジメントしていく一連の考え方、
これは経営の基本的なことですが、まさに今の時代に
最も適したフレームワークだと感じたのです。
このようなしっかりしたフレームを与えられた中で、
EMSやQMSを運用できるのはとてもハッピーなことだと思います。
■□■トップが自らやることは何か?■□■
平林:
現状のISOマネジメンシステム規格においても
「マネジメントにおいてはこのあたりが重要なことですよ」
として、要求事項として明確にしているにもかかわらず、
なぜトップは興味を示さないのでしょうか。
高取さん:
難しい質問ですね。
トップマネジメントがやるべきことは、
ISO要求事項にあることだけではないからです。
企業が存在していること自体が、
トッブとしてやるべきこと、日頃を企業経営を通して
日々実践してきた証といえるはずです。
このトップマネジメントの関与の重要性については、
附属書SLの第5章のリーダーシッブで
「トップマネジメントはこうしなさい」と書いてあり、
「組織が何とかしろ」とは言っていません。
ここはトップが、自らやりなさいという要求事項になっています。
従来のマネジメントシステムの構築・運用の問題としては、
仕組みを作る際、マネジメントレベルまでは、
何となく関与してもらい作成はできるのですが、それをうまく
現実の企業経営に反映できていないことが上げられます。
逆にいうと、運用面で日々の業務プロセスにいかに組み込むか、
ここを強く意識する必要があるわけですが、
トップの関与がここではキーになってくると思います。
トップマネジメントの関与に関係しますが、
第三者から指摘されても、「規格は○○を要求しているが、
自分たちはこういうふうに解釈して作り込んだ」と、
トップ自身が言えるような仕組みにすることが大切でしょう。
以上