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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.84■□■
*** Scopeには3つの種類がある ***
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■□■マネジメントシステム規格の適用範囲■□■
ISOには適用範囲(Scope)についての規定がありますが、
そのScopeには3つの種類があります。
■□■ 1つ目は規格使用目的の適用範囲 ■□■
5月9日に発行されたISO/DIS9001:2015版には
「この規格は次の組織に使用できる」として、
1.適用範囲(Scope)に次のような記述があります。
「この規格は,次の二つの事項に該当する組織に対して,
品質マネジメントシステムの要求事項を規定するものである。
a)顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たした
製品及びサービスを一貫して提供する能力をもつことを
実証する必要がある場合。
b)品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含む
システムの効果的な適用,並びに顧客要求事項及び
適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して,
顧客満足の向上を目指す場合。
この規格の全ての要求事項は,汎用性があり,
業種及び形態,規模,並びに提供する製品を問わず,
あらゆる組織に適用できることを意図している。」
ここではISOが自らISO9001規格をどのような目的に
使用してもらいたいかの範囲を書いていますので、
1番目の適用範囲(Scope)は、
「規格使用目的の適用範囲」を意味しています。
■□■ 2つ目は組織能力向上の適用範囲 ■□■
ISO/DIS9001規格は、箇条4.3において、
組織に対して次の要求をしています。
「組織は,品質マネジメントシステムの適用範囲を
定めるために,その境界及び適用可能性を
決定しなければならない。
この適用範囲を決定するとき,組織は,
次の事項を考慮しなければならない。
a)4.1に規定する外部及び内部の課題
b)4.2に規定する,関連する利害関係者の要求事項
c)組織の製品及びサービス
この規格のある要求事項を,
決定された適用範囲内で適用できる場合,
組織は,それを適用しなければならない。
この規格の要求事項を適用できないときは,
それが製品及びサービスの適合を確実にするという
組織の能力又は責任に何らかの影響を及ぼすもので
あってはならない。
品質マネジメントシステムの適用範囲は,
次の事項を記載した,文書化した情報として
維持しなければならない。
-品質マネジメントシステムの対象となる
製品及びサービス
-この規格の要求事項を適用できない場合には,
それを正当とする理由」
箇条4.3でいう適用範囲(Scope)は、
組織がISO9001をどのように活用するか、
その領域(本社、事業所、工場など)及び
適用可能性(規格要求事項の)から決められてくる
範囲を意味しています。
ここではISO9001を活用して期待する成果を得るための、
組織の能力を向上させることを目的としてので、
2つ目の適用範囲(Scope)は、
「組織能力向上の適用範囲」を意味しています。
■□■ 3つ目は適合評価された適用範囲 ■□■
認証機関が発行する認証証には、認証機関が証明する
組織のISO9001適用範囲(Scope)が書かれます。
この適用範囲は2つめの「組織能力向上の適用範囲」とは
必ずしも一致するとは限りません。
認証機関が審査で確認できた
「製品及びサービスに関する適用範囲」のみが
記載されるのであって、
審査がカバーしなかったエリアは記載から除かれます。
組織は、ビジネス取り引き先から、
供給する製品及びサービスに関して
第三者認証を取得するように求められる場合があります。
そのような場合、組織は数多くある認証機関から
自分たちに合う認証機関を探し出し、
その機関と第三者認証の契約を結びます。
第三者認証は、
組織と認証機関との間の任意の契約行為ですから、
適用範囲は組織が必要であると考える範囲に
限定することができます。
組織は認証を求められている製品、部署、
かかる費用、日数などを勘案して認証機関と交渉して
三者認証の適用範囲を決定すればよいのです。
ここでいう認証証に記載された3つ目の適用範囲(Scope)は、
「適合評価された適用範囲」を意味します。
おわり