ISO/DIS9001におけるリスク | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.85■□■

*** ISO/DIS9001におけるリスク ***

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■□■ リスクは好ましい、好ましくない? ■□■

 附属書SLのリスクの定義には、
注記1に「リスクは好ましい方向、好ましくない方向に乖離する」
という一節があることは以前お話しました。

■□■ この2つの方向が混乱?を与えている ■□■

 附属書SL:3.09にあるリスクの定義は繰り返しになりますが、
次のようなものです。

「不確かさの影響 注記1 影響とは,期待されていることから,
好ましい方向又は好ましくない方向にかい(乖)離することをいう。」

例えば、輸出企業が為替の予約をします。

輸出のことを考えると円安になれば好ましい方向と言えるでしょう。
反対に円高に振れれば好ましくない方向となるのです。

どちらに振れるか分からないので、為替の予約はリスクであると
いうことになります。

■□■ そうはいっても・・・・ ■□■

 このようにリスクという概念は、
プラス側、マイナス側の両方にありえるというものですが、
圧倒的にリスクとはマイナス側のイメージだとおっやる方が多いですね。

前回の規格説明の講習会で40名くらいの参加者にお聞きしました。

「リスクはプラス側にもありますか?」

この問いかけにYesと答えられた方は本当にわずかでした。

■□■ ISO/DIS9001におけるリスク ■□■

 5月に発行されたISO/DIS9001における「リスク」の取り扱いは
CDに比較して次のように変わりました。

 まず、用語の定義が変わりました。

CDでは、”effect of uncertainty”となっていたものが、
“effect of uncertainty on an expected result”となりました。

つまりon an expected result(期待する結果における・・・)が
追加されたのです。

effect of uncertainty(不確かさの影響)では、
象が広いのでISO9001活用の「期待する結果(an expected result)」に
焦点を当てたリスクに絞ったということです。

 また、リスクの定義にNote5が追加されました。

Note 5 to entry: The term “risk” is sometimes used when
there is only the possibility of negative consequences

注記5:”リスク”という用語は,
好ましくない結果となる可能性にだけ使われることがある。

■□■ ISO/DIS9001リスクは好ましくない方向 ■□■

注記5がリスクの定義に追加されたことで、
ISO9001構築におけるリスクは
「好ましくないもの」と考えて良いと思います。

その反対に「好ましいもの」を
機会(opportunity)であると考えるということは従来と同様です。

しかしこの「好ましいもの」とは何かについては
じっくりと考える必要があるように思います。

おわり