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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.86■□■
*** ISO/DIS9001における組織の能力 ***
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■□■ 1.1 適用範囲には ■□■
品質マネジメントシステムは組織の能力を扱っています。
いま提供している製品の品質が良くても十分ではなく、
今後とも良い製品を提供していける能力があることを要求しています。
システムとは、
相互に関係する相互に影響を与える要素の集まりですが、
このシステムが今後の品質を保証する「組織の能力」と
なっていることが必要なわけです。
ISO9001規格1.1には,
次の二つのことを目的とする組織に対して,
品質マネジメントシステムの要求事項を規定しています。
a)顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を
満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力を
もつことを実証する必要がある場合。
b)品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを
含むシステムの効果的な適用,並びに顧客要求事項及び
適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して,
顧客満足の向上を目指す場合。
■□■ 一貫して提供する能力 ■□■
このように箇条1.1には
「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を
満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力を
もつことを実証する必要がある場合。」
とありますが、注目すべきは
「提供する能力をもつことを実証する」というところです。
繰り返しになりますが、組織は現在良いことは
当然のこととしてこれからも良いことを実証する
必要があるわけです。
残念ながら、現在の認証審査においてこの能力が
きちんと審査されているかについて私は否定的な見方をしています。
■□■ 組織の能力とは・・・・ ■□■
飯塚東京大学名誉教授はこの組織の能力について、
主宰する「超ISO企業研究会」で次のように説いています。
(1)固有技術
・固有技術レベル
・固有技術の可視化レベル,
・体系化/構造化レベル,
・知識入手性
(2)マネジメント(固有技術活用能力)
・目的理解,目標設定
・目的達成手段構想,計画
・リスク想定
・実施項目展開
・進捗管理:現状把握,応急処置,影響拡大防止,PDCA
・学習能力:深い大きなPDCA
・組織構築
・プロセス定義
・リソース理解,掌握,人望
・運営(マネジメントの原理原則)
・コミュニケーションスキル
(3)ひと(技術+マネジメントの実施主体の能力)
・技術・知識のレベル
・技能・スキルのレベル
・意欲・モチベーション・ロイヤルティのレベル
・能力向上策のレベル
(4)文化:組織風土・文化
・組織の思考
・行動スタイルを左右する組織風土
・文化,価値観,体質
■□■ 奥深い組織の能力 ■□■
飯塚先生の説く組織の能力は、
広範に渡り網羅的でありますが、
一つひとつが意味を持っています。
組織の性質(どんな製品及びサービスを行っているか)、
規模などにより理解は異なるでしょうし、
該当する能力もそれぞれでばらつくかもしれません。
興味深いのは、飯塚先生の上げられた組織能力は、
ISO/DIS9001が要求しているものと以下のように
オーバーラップしていることです。
《ISO/DIS9001要求事項》
(1)「固有技術」は今回の改正で日本が要求事項として
追加する意見を出したが、
「箇条7.1.6組織の知識」として日の目をみている。
(2)マネジメント(固有技術活用能力)
・目的理解,目標設定
「箇条6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定」
・目的達成手段構想,計画 「同上」
・リスク想定 「箇条6.1 リスク及び機会への取組み」
・実施項目展開 「箇条6.2.2」
・進捗管理:現状把握,応急処置,影響拡大防止,PDCA
「箇条6.3 変更の計画」
・学習能力:深い大きなPDCA 「なし」→ JISQ9005:2014
・組織構築 「箇条5.1 リーダーシップ及びコミットメント」
・プロセス定義
「箇条 4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス」
・リソース理解,掌握,人望 「なし」
・運営(マネジメントの原理原則)「Annex B」
・コミュニケーションスキル 「箇条7.4 コミュニケーション」
(3)ひと(技術+マネジメントの実施主体の能力)
・技術・知識のレベル 「なし」
・技能・スキルのレベル 「なし」
・意欲・モチベーション・ロイヤルティのレベル 「なし」
・能力向上策のレベル 「なし」
(4)文化:組織風土・文化
・組織の思考 「なし」
・行動スタイルを左右する組織風土 「なし」
・文化,価値観,体質 「なし」
■□■ 超ISO企業研究会 ■□■
読者の皆様方でさらにこの組織の能力を深く知りたい方は
10月頃に予定されているセミナーに参加されるとよいと思います。
※詳細は8月下旬にテクノファホームページでお知らせします
附属書SLの箇条4.4に記述されている「組織の能力」が
より深く理解できると思います。
おわり