ISO9001の写像 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.97 ■□■
*** ISO9001の写像 ***
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■□■ 写像とは■□■
今回はすみませんが、少々難しい話をします。

表題にある「写像」とは、数学分野で、
「二つの集合が与えられたときに、一方の集合の各元に対し、
他方の集合のただひとつの元からなる集合を指定して
結びつける対応」のことです。

この写像という言葉は、流体力学の分野では、
「複雑な形状周りの流れは、等角写像により簡単な流れに
焼き直すことができる」というように応用されています。

例えば、円柱周りの流れの諸特性(流速や圧力の分布)
が判れば、翼周りの流れが解明できます、という意味です。

円柱周りの座標点と翼周りの座標点の相互関係
(変換関係)が論理的に(この場合数式で)示せれば、
解析が容易な円柱周りの流れの解析結果から、
論理的に翼周りの流れの解析結果を導くことが
できるということです。

■□■ 何を言いたいのか?■□■
急に日常ほとんど使われない「写像」などという
難解な言葉を出してしまってすみません。

複雑な問題と簡単な問題との相互変換関係が
論理的に示すことができれば、簡単な問題に対して
整理され認識された物事は、その変換を通じて
複雑な問題に焼き直して事象を認識することができるのです。

この変換を写像というのですが、
影像あるいは映像も近い言葉でしょう。

英語では写像をmappingといっています。
影像はimagingですね。

ISO9001規格の要求事項を組織のプロセスに写しだすと
どんな像が結ばれるのかを確認してQMSを運用することを
お勧めします。

■□■ どのように写像するのか ■□■
決まったやり方はありませんが、次のような順序で
写像するとよいのではないでしょうか。

1.ISO9001:2015規格が何を要求しているのか
正しく理解する。

2.要求事項が自身の組織のどの事業プロセスに
関係しているか考えてみる
(規格要求事項を事業プロセスに写してみる)。

3.自身の事業プロセスで実施している事柄と
規格要求事項とのギャップを考える
(事業プロセスに結ばれた像に欠落しているものは
何か考える)。

4.ギャップとして摘出された項目を構築し、実施、
維持していくシステムを計画する。

5.システムを組織の中で運用していく。

■□■ 事業プロセスとは ■□■
上記説明で「事業プロセス」という言葉を使いましたが、
これはISO/DIS9001:2015に出てくる言葉です。

「5.リーダーシップ及びコミットメント

5.1 品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ
及びコミットメント

トップマネジメントは,次に示す事項によって,
品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及び
コミットメントを実証しなければならない。

d) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム
要求事項の統合を確実にする。」

なぁ~んだ、写像なんてもっともらしい言葉を使っているが、
2015年改正規格の要求事項にある、事業プロセスに
規格要求事項を統合することを意味しているのではないか、

特別のことを言っている訳ではない、と思われるでしょう。

そうです、そのとおりですが、
では貴方の組織の事業プロセスは明確になっているでしょうか?

■□■ マルコムボルドリッジ賞の事業プロセス ■□■
アメリカには大統領が表彰するというMB賞があります。

この賞は、組織の顧客からの評価に焦点を合わせ、
組織のパフォーマンスを評価するという点で、
ISO9001の認証制度とは異なる視点で運用がされています。

このMS賞のプロセス評価基準になっているものに、
米国生産性品質センター
(APQC:American Productivity and Quality Center)が
発表している「Process Classification Framework」があります。

ここには多くの事業プロセスの記載があります。

組織で行われている標準的な業務のベストプラクティスを調査し、
ベンチマーキングするための基準としての事業プロセスを
定義しています。

組織の業務を大きく12の事業カテゴリーと、
これをさらに細分化した250の事業プロセス、
および650の活動に分類しています。

URLは https://www.apqc.org/pcf ですので
参考にしてください。

以上