■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.103 ■□■ *** ISO45001労働安全衛生MSS *** ----------------------------------------------------- ■□■ ダブリン会議 ■□■ 6月28日~7月5日までアイルランドのダブリンでPC283の国際会議が開かれ参加してき ました。 労働安全衛生マネジメントシステムは、国際的には長い間OHSAS18001というOHSASグ ループが作成した規格に基づいて審査が行われてきました。OHSASグループとは、イ ギリスのBSIが中心となって設立した労働安全衛生OHSAS18001規格を運用するために 設立した組織です。日本からは日本規格協会などが参加しています。 ■□■ 日本国内は中災防などの規格がある ■□■ しかし、日本国内には中災防(中央労働災害防止協会)、建災防(建設業労働災害防 止協会)などが運用しているOHSAS18001とは異なる基準があります。 それはILO(国際労働機構)が定めた労働安全衛生マネジメントシステムガイドであ り、中災防、建災防などはこれに整合した自分たちの基準を作成し、それに基づいて 審査を行ってきました。 ILOは、1919年に、ベルサイユ条約第13編(後のILO憲章)によって設立された国際機 関です。労働条件の改善を通じて、社会正義を基礎とした世界平和の確立に寄与する ことを目的としています。ILOは、スイスのジュネーブに本部があり政府、労働者、 使用者の三者構成で運営されています。 ISO(国際標準化機構)も1926年に設立された国際機関でやはりスイスのジュネーブ に本部があります。ただし、こちらは国連の一部ではありません。 ■□■ なぜ、ダブルスタンダードなのか ■□■ その背景は、2000年ころに戻ります。当時、ISOはBSIが提案してきた労働安全衛生規 格を国際規格にするかについて、何回もNWIP(New Work Item Proposal)の審議、そ れにつづく採択するかの投票を行いましたが、そのたびにILOが反対して国際規格制 定の実現が図られませんでした。 ILOが反対した理由は、労働安全衛生はILOの専管事項であり、それに関係する規格も またILOが主導すべきものである、というものです。 ■□■ ILOの方針転換 ■□■ 2013年2月、ILOはISOとMOU(Memorandum of Understanding:行政機関等の組織間の合 意事項を記した文書であり、通常、法的拘束力を有さない;了解覚書といわれる)を 結びました。これは、労働安全衛生マネジメントシステム規格の新規作成に関するも のでした。 両機関が協力して一つの国際規格―労働安全衛生マネジメントシステムに関する―を 作ろうというもので、従来のILOとISOの関係からすると画期的なものでした。 ■□■ PC283の設立■□■ 2013年10月、このMOUに基づきISOに新たにPC283が新設されました。PC(Project Committee)というのはTC(Technical Committee)と異なり、一つの規格だけを扱う 規模の小さな技術専門委員会のことです。 初回の会議はイギリスで行われました。以来、モロッコ、ドバイ、トリニダートトバ コ、そしてアイルランドと国際会議が開かれてきました。 現時点、ISO45001 はDIS(Draft International Standard)にいくことが承認された 状態にいます。ダブリンでもDISに向けての規格作成への基礎検討がされました。当 然のことですが、CD(Committee Draft:委員会原案)がベースとなって検討がされ ましたが、次回9月の会議までに、各国は規格内容の検討をしていくことが要請され た状況になっています。 次回は、規格の中から重要と思われる懸案事項をお話ししたいと思います。