品質不祥事に思うー標準化について | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.172 ■□■    
*** 品質不祥事に思うー標準化について ***
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昨今の名だたる大手企業によるデータ改ざんなどの品質不祥事が連続して
起きていることで、日本の今後に不安を覚える人は私だけではないと思います。
もう一度品質保証、品質管理についての基本を認識したいと思い、まずは
標準化ということについて考えたいと思います。

■□■ かならずバラツク ■□■

製品・サービスは必ずバラつきます。これは製品・サービスを実現する人、
設備、材料、やり方等がバラつくからです。
しかし、この「バラつき」は管理することによって最小限にすることが
できます。このバラつきを最小限に管理する最も効果的な方法が標準化で
あるといわれてきました。

標準化は、ある問題に関する与えられた状況で「最適な程度の秩序を得ること」
を目的に、共通すること、かつ繰り返すことのための“規定”を決める活動
である、とISOでは説明しています。

もっと分かりやすくいえば、標準化とは“自由に放置すれば、多様化、複雑化、
無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること”ということです。
標準化には“規定”を決める活動と、規定されたことを守って実施する活動の
2つがあります。 

■□■ 標準の種類 ■□■

標準は次の4つに分類することができます。

1.社内標準
組織内で制定され、実施適用されるもの。
品質マニュアル、作業標準、技術標準、設計標準、各種手順書、指示書、設計図書
などがある。

2.団体標準
学会、工業会などの団体で制定され、実施適用されるもの。
JSQC(日本品質管理学会規格)、ASME(アメリカ機会学会規格)、ASTM(アメリカ材料
試験協会規格)、MIL(アメリカ国防省軍用規格)、UL(アメリカ保険業者安全規格)
などがある。

3.国家標準
国の中で制定され、実施適用されるもの。JIS(日本工業規格)、JAS(日本農林規格)、
BS(イギリス規格)、ANSI(アメリカ規格)、DIN(ドイツ規格)、CSA(カナダ規格)
などがある。

4.国際標準
 国際的に制定され、実施適用されるもの。ISO、IECなどがある。

■□■ 標準化の2つの活動 ■□■

標準を作成する活動は、2つのレベルの活動に分けられます。

1.これまでに蓄積された製造又はサービス提供の条件を標準に規定する。
2.見直し、是正処置等の結果得られた製造又はサービス提供の条件を標準に規定する。

1のレベルは、今までの実施方法を確認し、やり方の統一を図るものです。
やり方がバラバラでは、多様性の調整、両立性、互換性、安全性等が確保できません。
標準化されれば「バラつき」を抑えることができますし、効率も高まります。
しかし、今までの実施方法を踏襲している限りにおいては、その方法が一番良いと
確認できているわけではありません。場合によっては、すでに「過去」の標準と
なってしまっているという危険性を孕んでいます。

2のレベルは、標準化の内容を吟味して、現時点ではこの標準化された方法が
最良であると確信できるものです。言ってみれば、現時点で最適な標準であり、
標準作業において考えられる要素のすべて、人、機械、部品そしてやり方などを
有効に組み合わせたものです。

■□■ 2つのレベルの特長 ■□■

1のレベルにおいては、活動を構成する要素のすべてが相互に適切につながって
いないと効率的な製造又はサービス提供はできません。したがって、もし「標準作業書」
が実態と異なっているとすると、最初から大きな問題を孕んでいることになります。
どんな標準も常に内容の吟味が必要であり、問題の解決を図りながら継続的に改善をして
いかなければならないものです。

2のレベルは、長期のスパンでみると困難を伴う活動です。
なぜかというと、今回は最善であるという確信をいだける方法を標準化できたとしても、
今後とも常に最善であることを追求するにはそれなりの資源が必要になるからです。
さらに、最善であると確信するには何を基準にすればよいかも永遠につきまとう課題です。

1.2両者に必要なことは、決めたことは必ず守る活動をいつの時代にも継続して行って
いくことです。

■□■ 標準化に関するJIS規格 ■□■

標準化に関しては、JIS Z 8002:2006 (ISO / IECガイド2) にその目的が説明されています。

1.多様性の調整
大多数の必要性を満たすように、製品(サービスも含む)、方法等のサイズ・形式を、
最適な数に選択すること。

2.両立性
特定の条件の下で、複数の製品(サービスも含む)、方法等が、相互に不当な影響を
及ぼすことなくそれぞれの“要求事項”を満たしながら、共に使用できるための適切性。

3.互換性
ある製品(サービスも含む)、方法等が、同じ“要求事項”を満たしながら、別のものに
置き換えて使用できる能力。

4.安全性
容認でない傷害のリスクがないこと。

以上。