品質不祥事に思う ― 文書化4 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.180 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化4 ***
—————————————————–

あけましておめでとうございます。
昨年中は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
本年も引き続き『つなげるツボ』メルマガでのお付き合いを
どうぞ宜しくお願い致します。

では、ここから2019年最初のメルマガのスタートです。

われわれは毎日何らかの文書を読んだり、作成したり、送ったりしています。
組織の業務において文書が無い世界は想像できません。組織は、業務の根幹と
なる役割、分担、責任、権限などを組織として文書に規定しています。
約束事が消えないように残る工夫をしておかなければ、約束した通りに行われ
なくても咎めることはできなくなってしまいます。

まずはルールを文書にして関係者に理解してもらう、そしてその通りに実施して
もらうことが必要です。昨今の不祥事の要因に関しては、文書に規定されて
いなかったという声はあまり聞こえてきません。業務遂行の担当者、あるいは
管理者が規定されていることを知っていながら、その通り行わなかったという
ことがその背景にあるように思われます

■□■「2.文書管理プロセスに必要な資源及び情報」■□■

文書は誰が作成するのでしょうか。文書管理の話の前にそのことを確認しておきたい
と思います。文書には、全社規程、部門規定、作業手順書の3種類があると前々回
話しました。

1.全社規程
全社の規則、規律、基本的ルール、部門の役割分担、定款、株主総会、取締役会規則、
就業規則、業務分掌などを定めた基本規程

2.部門規定
部門のルール、業務分掌を受けて、企画、営業、購買、設計、技術、品質、製造、
サービス、出荷、アフターサービス、人事、総務、営繕、経理、IT、
ロジステックなどの部門の業務規程

3.作業手順書
SOP、個人レベルの仕事の手順を決めたもの

これらの文書を作成する人は、3種類の業務を統括する人です。
例えば、1.は組織の長、すなわち社長です。2.は部門の長、すなわち部長で
あったり、課長であったりします。3.は作業の長、すなわち作業長であったり、
係長であったりします。
当然ですが、それらの文書の改訂をする人も同じ人であるべきです。

そうでないと文書を作成した当初の意図をはき違えてしまうことが起きえます。
しかし、1.の組織の長も、2.の部門の長も、3.の作業の長も時代と共に変わり
ます。そこで、文書管理規定にはそれぞれの文書の発行責任者が書かれています。
そこに書かれている責任者は個人名ではなく、職制名が書かれています。

「2.文書管理プロセスに必要な資源及び情報」のチェックにおいては、この文書
作成者についての資源及び情報を確認します。

■□■ 何を確認するのか ■□■

「2.文書管理プロセスに必要な資源及び情報」において確認すべきことの第一は、
まず、1.の組織の長、2.の部門の長、3.の作業の長がきちんと文書を維持する
資源を保有しているかということです。
この3人の方は、時代と共に変わっていくと申しましたが、人は変わってもやるべき
ことは変わりません。

文書が発行後10年目になっても、当初文書作成したこの3人は、改訂責任者であり、
文書通りに行われているかを統括する責任者であります。
これだけ責任があるとすると、3人が自分ですべてのことを行うことは実務上は困難
でしょう。
当然のこととして、3人の部下にその責任を委任することになります。
「文書管理プロセスに必要な資源及び情報」とは、委任できる部下を資源という意味で
保有している、委任された部下が委任内容を正しく認識しているかを確認する必要が
あるのです。

■□■ 文書管理プロセスに必要な情報 ■□■

次は文書管理プロセスに必要な情報についてです。文書も時代の変化と共に最新化して
いかなければなりません。経営環境が変わると仕事のやり方が変わります。
仕事のやり方が変われば、その仕事に関連する文書も変えなければなりません。

これが文書を改訂する理由になるのですが、この変えなければならないという情報は
どこから3人の人に来るのでしょうか。3人の人は、待っているだけでは必要な情報は
入ってこないでしょう。そのようなことから、文書管理プロセスを決めるときには、
インプットを決めなければならないことになります。前回、文書管理プロセスを決める
要素は次の3項目であると申し上げました。

1.管理責任者
2.管理の手段・方法、手順
3.管理の判断基準

しかし、文書の改訂を考えると、最新化しなければならないという情報はどこから
くるのかという重要なことを決めておかなければならないことに気付きます。
インプットを決めるならば、当然のこととしてアウトプットも決めなければならないでしょう。