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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.187 ■□■
*** 品質不祥事に思う ― 文書化11 ***
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先のメルマガでは、品質不祥事の官庁版として、厚労省の毎月勤労統計を
取り上げました。
先週、総務省からは基幹統計56種の内、なんと約半数の22種類(毎月勤労
統計を含む)の統計にミスがあったとの発表がされました。
報道された統計資料は以下の通りです。
1.住宅土地統計
2.全国消費実態統計
3.経済構造統計
4.法人企業統計
5.学校教員統計
6.社会教育統計
7.毎月勤労統計
8.薬事工業生産動態統計
9.医療施設統計
10.患者統計
11.牛乳乳製品統計
12.農業経営統計
13.ガス事業生産動態統計
14.商業動態統計
15.企業活動基本統計
16.港湾統計
17.造船造機統計
18.建築着工統計
19.鉄道車両等生産動態統計
20.建設工事統計
21.自動車輸送統計
22.法人土地・建物基本統計
■□■ 毎月勤労統計と同じ品質不良 ■□■
随分と多くの統計が不正確であったということで驚くと共に、我々の日常にも
深く関係しそうな統計名が並んでいる事を改めて認識させられました。
以上の22統計の不適切な事象には、納期遅れとか、提出企業のデータ誤記とか、
いろいろなものが混在しています。
毎月勤労統計と同様に「一部を集計しなかった」という品質不良は次の統計にありました。
1.住宅土地統計
2.全国消費実態統計
3.経済構造統計(以上総務省)
4.法人企業統計(財務省)
■□■ 品質不良の原因は? ■□■
それでは何が原因だったのでしょうか。厚労省の毎月勤労統計に限っていいますと、
2004年当時の担当係長が東京都の担当者からの要請で手のかかる統計データ収集を3分の1位に
出来ないかとの相談があり、それに応える形で業務マニュアルを変更したということです。
事実がそのとおりであるのかはこれから明らかにされると思いますが、ここで重要なことは
当時の担当係長、その上司等を責めるのではなくその背後にある要因を徹底して調べることです。
■□■ どんな要因があり得るのか ■□■
考えられる要因は数多くあると思います。その中から本当の、すなわち真の要因を探り当て
なければなりません。
探り当てられた数少ないものが原因であり、その原因を除去しなければまた同様な事象が
何年後かに起きます。そして、除去した状態を維持することは、マネジメントシステムの
構築、運用、維持が必要になります。
新聞情報では、今回の調査対象を少なくした理由は、地方自治体から統計データを集めるに
際しての労力が足りないという話が出ていますので、今回の事象の要因としては資源の不足は
真っ先に要因として上げられます。
それを含めて、次のようなことが考えられます。
・統計データを纏める仕事の労力が足りない。
・毎月勤労統計がどんなことに使われるのか知らない。
・統計データを取る専門知識が足りない。
・統計データの纏め方を知らない。
・やっている仕事の目的、意義を理解していない。
・規定文書を確認、チェックしていない。
・文書変更が規定通り行われていない。
・担当者交替の引継ぎがされていない。
・担当者交替時の引継ぎ項目が決まっていない。
・教育訓練がされていない。
・責任権限があいまいである。
・仕事をする力量が決められていない。
・ルール逸脱の結末を理解していない。
・監視測定がされていない。
・何を分析し、何を評価するのか決まっていない。
・内部監査がされていない、など。
■□■ 教育訓練は ■□■
思いつくまま上げましたので、今回の事象からピントがずれているものがあると思いますが、
このような要因すべてが組織の弱さを示しているのか、はたまた個人のポカミスなのかは
十分に分析、評価する必要があると思います。