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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.189 ■□■
***品質不祥事に思う ― ISO9001との関係***
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厚生労働省の毎月勤労調査の品質不祥事の要因(と思われること)を
Vol.187で幾つか上げました。
官僚は国家公務員試験を合格した日本のエリートたちですから、
今回の品質不祥事は常識的には起こりえないことです。
しかし、我々が常識的だと思うことが、そうではなく裏切られることが
この数年いろいろな分野で起こっています。
OJTを含めて自分の仕事の目的を正しく理解することが何より求められる
と思います。
■□■ ISO9001のQMS ■□■
いまさら言うまでもないですが、品質マネジメントシステムの構築、運用、
維持はこのような不祥事が起きないように活用すべき経営のツールです。
このことは民間でも、官庁でも全く変わらないと思います。
今回の不祥事の要因として上げたVol.187の項目とISO9001の要求事項との
関係は次のようになります。
・統計データを纏める責任権限があいまいである。
・担当者交替の引継ぎがされていない。
・担当者交替時の引継ぎ項目が決まっていない。
→「ISO9001箇条5.3 組織の役割,責任及び権限
トップマネジメントは,関連する役割に対して,責任及び権限が割り当てられ,
組織内に伝達され,理解されることを確実にしなければならない。
トップマネジメントは,次の事項に対して,責任及び権限を割り当てなければ
ならない。
a) 品質マネジメントシステムが,この規格の要求事項に適合することを確実にする。
b) プロセスが,意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。
e) 品質マネジメントシステムへの変更を計画し,実施する場合には,品質マネジメント
システムを“完全に整っている状態”(integrity)に維持することを確実にする。」
・統計データを纏める仕事の労力が足りない。
→「ISO9001箇条7.1.2 人々
組織は,品質マネジメントシステムの効果的な実施,並びにそのプロセスの運用及び
管理のために必要な人々を明確にし,提供しなければならない。」
・統計データを纏める仕事をする力量が決められていない。
・統計データを取る専門知識が足りない。
・統計データの纏め方を知らない。
・教育訓練がされていない。
→「ISO9001箇条7.2 力量
a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務を
その管理下で行う人に必要な力量を明確にする。
b) 適切な教育,訓練又は経験に基づいて,それらの人々が力量を備えていることを
確実にする。
c) 該当する場合には,必ず,必要な力量を身に付けるための処置をとり,とった
処置の有効性を評価する。
d) 力量の証拠として,適切な文書化した情報を保持する。」
・毎月勤労統計がどんなことに使われるのか知らない。
・やっている仕事の目的、意義を理解していない。
・ルール逸脱の結末を理解していない。
→「ISO9001箇条7.3 認識
組織は,組織の管理下で働く人々が,次の事項に関して認識をもつことを確実に
しなければならない。
c) パフォーマンスの向上によって得られる便益を含む,品質マネジメントシステム
の有効性に対する自らの貢献」
・統計データを纏めるルール改正が規定通り行われていない。
→「ISO9001箇条7.5 文書化した情報
文書化した情報を作成及び更新する際,組織は,次の事項を確実に
しなければならない。
c) 適切性及び妥当性に関する,適切なレビュー及び承認」
・統計データを纏める際に規定文書を確認、チェックしていない。
→「ISO9001箇条8.5 製造及びサービス提供の管理
組織は,製造及びサービス提供を,管理された状態で実行しなければならない。
管理された状態には,次の事項のうち,該当するものについては,必ず,
含めなければならない。
a) 次の事項を定めた文書化した情報を利用できるようにする。」
・統計データを纏める業務の監視測定がされていない。
・何を分析し、何を評価するのか決まっていない。
→「ISO9001箇条9.1 監視,測定,分析及び評価
組織は,次の事項を決定しなければならない。
a) 監視及び測定が必要な対象
b) 妥当な結果を確実にするために必要な,監視,測定,分析及び評価の方法
c) 監視及び測定の実施時期
d) 監視及び測定の結果の,分析及び評価の時期
・統計データを纏める業務が内部監査されていない。
→「ISO9001箇条9.2 内部監査
9.2.1 組織は,品質マネジメントシステムが次の状況にあるか否かに関する
情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければならない。」
■□■ 官公庁のQMS ■□■
今回の毎月勤労調査の品質不祥事をISO9001要求事項と重ね合わせてみると、
官公庁にも品質マネジメントシステムが必要であることがよく分かります。