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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.191 ■□■
*** 品質不祥事に思う ― 品質管理教育2 ***
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前号では、毎月勤労調査統計の品質不祥事に関連して、小学校での教育に
触れました。小学校で教えてもらいたい品質管理についての基本教育は、
因果関係とバラツキ概念の2つであるとも記しました。
基幹統計56の内、毎月勤労調査の他22もの基幹統計に今回似たような
問題があるという状態に、国は応急処置をとると思いますが、忘れては
ならないのは今後の是正処置です。
■□■ 風が吹けば桶屋がもうかる ■□■
この珍妙な句を聞いたのは何時の事だったか忘れてしまいました。
小学校、中学校の頃でしょうか?
この物語が出てくるのは、江戸時代後期の戯作者十返舎一九の
「東海道中膝栗毛」(とうかいどうちゅうひざくりげ)の中です。
東海道旅行(膝とは自分の足、栗毛とは馬、つまり徒歩)をする、
弥次郎兵衛さんと喜多八さん(つづけて弥次喜多さん)の東海道中の物語です。
弥次喜多さんが旅人から聞いた話として、風が吹くと砂が舞う、砂が舞うと
目を傷め盲人が増える、盲人が増えると三味線が売れる(当時は盲人が
三味線を弾いた)、三味線が増えると猫が減る(猫の皮が三味線の原料)、
猫が減るとネズミが増える、ネズミが増えると桶をかじる、桶屋(棺桶)が
もうかる、というような「こじ付けること」を面白おかしく語っています。
このこじ付けから、世の中すべてのことは因果関係で結ばれている、と
いうことを感じる人が多いと思います。
■□■ “の”の字の数 ■□■
これは会社に入ってから知りました。
新入社員教育の場で講師からA4の紙を配られました。その紙には横書きで
びっしりと何かの文章が書かれていました。
日本語の解釈でも試されるのかと一瞬思いましたが、講師からは
「この一枚の紙に書かれている“の”の字を2分間で数えなさい」と言われました。
私も含めて30人くらいの新入社員は、一斉に“の”の字を数え始めました。
1分半くらいで大多数の人は数え終わりました。
講師は、前の人から順にその数えた結果を聞き、黒板にグラフにし始めました。
グラフは、30を中心に前後3つくらいの違いの正規分布になりました。
■□■ 2つの体験の意味すること ■□■
最初の話は、こじ付けすることの面白さを弥次喜多道中話で示しているのですが、
原因と結果という2つの要素の結び付けを子供心に植え付けるのに役立っていると
経験的に思います。
会社人になってから、特性要因図を知ることになりますが、この「風が吹けば
桶屋がもうかる」という慣用句は時々忘れた頃に思い出します。
2つ目の“の”の字は実際にやってみるとよく分かると思います。
時間が限られているというのがミソですが、2回、3回やるとその都度に結果が違うと
いうこともあって、如何に自分の作業がバラツクのかということを実感することに
なります。
■□■ 統計は品質管理の核心 ■□■
今回の統計の品質不祥事を聞くにつけ、日本の中枢にいて重要な国の針路を誤らせる
ような仕事がどうして行なわれてしまったのか、しっかりと解明されなければならないと
思います。
ISO9001:2015箇条10 改善には、次のようにあります。
10.2.1 苦情から生じたものを含め,不適合が発生した場合,組織は,次の事項を
行わなければならない。
a) その不適合に対処し,該当する場合には,必ず,次の事項を行う。
1) その不適合を管理し,修正するための処置をとる。
2) その不適合によって起こった結果に対処する。
b) その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため,
次の事項によって,その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
1) その不適合をレビューし,分析する。
2) その不適合の原因を明確にする。
3) 類似の不適合の有無,又はそれが発生する可能性を明確にする。
c) 必要な処置を実施する。
d) とった全ての是正処置の有効性をレビューする。
e) 必要な場合には,計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更
新する。
f) 必要な場合には,品質マネジメントシステムの変更を行う。
是正処置は,検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。
10.2.2 組織は,次に示す事項の証拠として,文書化した情報を保持しなければならない。
a) 不適合の性質及びそれに対してとったあらゆる処置
b) 是正処置の結果