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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.195 ■□■
*** 品質不祥事に思う ― 品質管理教育6 ***
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多くの組織の手順書が古いままになっています。
手順書にどこまで詳しく書くかは、組織の日頃の教育訓練により異なります。
日常しっかりとOJTを含め教育をしている組織と、そうでない組織とでは
手順書の詳細さが異なります。
手順書を作っただけでは、それに従った作業が行なわれるわけではありません。
監督者は、作業者にその内容を理解させ、必要ならば追加訓練を行なう必要が
あります。
■□■ 日常しっかりと教育している組織 ■□■
日常しっかりとOJTを含め教育をしている組織の手順書は、最低限必要なことを
中心に書かれています。
手順書を作る前に、該当プロセスを分析し、手順書作成後に教育、訓練、動機付け
を適切に行っているからです。
一方、作業者の定着が悪い組織とか、日常の教育訓練を事情によりしっかりと
実施できない組織では、教育によるバックアップが期待できませんので、
一つひとつの作業行為を詳細に書く手順書を作成せざるをえません。
通常と異なる作業を強いられるような場合には、応用動作ができないことを
承知の上で運用する必要があります。
■□■ 手順書の教育 ■□■
作業者が手順書の内容を「よく理解していない」のは教育訓練が弱い現れです。
知識の伝達は比較的容易ですが、できるようになることが整理されていない、
カンコツが十分に伝えられない、教えっぱなしでフォローしていないことが
弱いといわれる所以です。
一時雇用の作業者を含め、どのような時にどのような教育訓練をどのような方法で
行うかを計画し、必要な人に必要な教育訓練が抜けなく行われる仕組みを確立する
必要があります。
他方、教育訓練の最初に、作業者に最低限理解してもらわなければならならない事は、
当たり前と思わず徹底しなければなりません。
・作業の目的
・作業品質の達成度合い
・要求に適合していない場合の調整方法
・作業結果が後工程及び完成品の品質に与える影響
■□■ 手順書のとおりにできない ■□■
作業者が手順書どおり実施できないのは、知識はあっても技能が不足している場合が
多いようです。このような技能が未熟だと判断される場合には、手順書に基づいた
作業訓練を包括的、計画的に行う必要があります。
作業訓練の狙いは習熟してもらうことにありますので、作業訓練の仕方を工夫しないと
成果に結びつきません。
目標とする習得技能レベル、その評価方法を明確にした上で、一人ひとりの技能の
現状を評価し、それに基づく訓練計画を策定して訓練に臨む必要があります。
大企業のようにロボット化されていない、中小企業の溶接作業、半田付け作業、
塗装作業などの作業は、手順書にしようとしても作業ポイントが感覚、感触による
ところが多いので表現できない所が多くあります。
手順書通りやっても不適合品が発生する場合がありますが、このような場合には、
不適合品の少ない作業者と多い作業者について、それらのやり方の差異を細かく
分析することが大切です。
■□■ 作業者の参加 ■□■
手順書をスタッフが作り、作業者に盲目的に守らせることは、人間疎外に
つながります。手順書を守らせるためには、監督者に手順書の作成に参加させる
ことが必要です。
場合によっては作業者も一緒になって守るべき手順とそれを可能にする方法を
決めます。
また、作業結果を作業者にフィードバックし、手順書に反映させることも重要です。
作業結果を客観的な基準から評価することで、作業の目標が明確になり、
技能向上への励みになります。
時の経過とともに顧客からの要求は変化し、それに対応するためには手順書を
改訂し、改訂した手順書に沿って作業を行なうという習慣が必要です。
■□■ 手順書を守らない ■□■
手順書を守るように指導、指示するだけではルールどおりの仕事をする組織になりません。
手順書があるにもかかわらず、日常手順書通り作業していないことが黙認される職場では、
「標準に基づく作業」を呼びかけても現場はついてこないでしょう。
最新のものに改訂せず、手順書と異なる作業を容認している組織では、手順書の軽視が
当たり前になってしまいます。
監督者が作業を定期的に観察し、問題がある場合には手順書の見直しか、作業の仕方を
変える処置を取ることが大切です。
また、手順書を守らなかったために発生した過去のトラブル事例を用いて、手順書を
守ることの重要性、手順書を守ることが品質の確保につながること、引いては会社の、
そして自分達の利益につながることを理解してもらうことが大切です。