品質不祥事に思う ― 再発防止2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.197 ■□■
*** 品質不祥事に思う ― 再発防止2 ***
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一連の不祥事においては、修正はもちろんの事、根本原因までに手を
打たなければなりません。
何か起きた時には、取りあえず修正をしますが、それだけではまた
同じことが起きます。

さらに、未然防止の立場からのアプローチが重要であり、
FMEA(Failure Mode Effect Analysis:失敗モード影響分析)などの手法を
活用することも考えられます。
FMEAは設計で主に使われますが、工程FMEA、設備FMEA、作業FMEAなど
その適用範囲には広いものがあります。

■□■ 作業FMEA ■□■

作業FMEAの活用の手順は次のようなものです。

1) 作業を適切な大きさの要素に区分する。
2) 各要素ごとに起こり得る作業のミスを列挙する。
3) 列挙された作業ミスごとに発生頻度、致命度を決める。
4) 発生頻度、致命度を数字で表し、両者を加える。
5) 数字の高い作業ミスからエラープルーフ化を検討し実施する。

FMEAは現行の作業方法を分析して改善するものですから、組織が
今までに経験したことに対しての分析が主になります。

作業FMEAを効果的に適用するためには、作業を適切な大きさに
区分すること、従来経験したミスを事例のタイプごとに分類して、
一覧表にまとめておくことが必要です。

■□■ エラープルーフ化 ■□■

作業FMEAを実施した後、エラープルーフ化を組織的に進めますが、
その際に注意すべき点としては、次のようなことが上げられます。

作業ミスは作業者個人の問題でなく、プロセスの設計と密接に関係する
管理上の問題です。管理上の問題とは、組織のシステムの弱さであり、
このことは、管理者を含めた職場の全員が認識すべきです。

自分のシステムが弱いと組織が認識すれば、失敗に対して頑強なエラー
プルーフ化の重要性が理解されます。その上で、エラープルーフ化による
作業ミス防止の成功例を作る、品質トラブル、品質事故の原因調査の様式に
解説を付けなどをすると効果的です。

エラープルーフ化の具体的な実現方法に関する技術教育を行うこととか、
職場又はミスの種類別に分類したエラープルーフ化事例集を作成し、それに
基づく教育を計画的に実施することも有効です。
さらに、場合によっては、エラープルーフ化の実施件数に関する目標を設定
したり、優秀なエラープルーフ化事例の発表会を開催することもよいでしょう。

■□■ 標準書の改訂 ■□■

再発防止の活動の結果は、標準書の改訂に結び付けます。
標準書の改訂は、再発防止の活動以外、経営者の定期的な見直しの時、
管理項目に異常があった時、現場から提案のあった時、標準書の
間違い・不備を発見した時、品質規格が変更された時、設備・装置・方法などに
技術的改善が行なわれた時、計測器の設置・改造が行なわれた時、
原料や他の作業標準書が変わった時などに行わなければなりません。

標準書改訂に当たっては、次の点に注意します。

1.装置、治工具、型、ソフトウエア、作業者、外注工場など、
生産工程の品質に影響を及ぼす可能性のある要素を明確にし、
文書化しておきます。

2.すべての変更を標準書改訂に結び付けることは非現実的です。
変更をその内容によってランク付けするようにし、各々の重要度に応じた
変更手続きを取る工夫が大切です。ランク付けの基準は組織的に明確に
しておきます。変更を計画する際は、目的とする効果が得られるか
どうかだけでなく、予期しない他の問題を起こさないかどうかについても
注意を払う必要があります。

3.変更を実施する際は、仮の作業標準書を定め、それに従って実施するように
します。また、事前に関連する部門に連絡し、変更の目的、内容及び
実施時期に関する十分な理解を得ておきます。
変更を行った後は、適切なデータを収集・解析し、変更目的の達成状況、
他の品質や生産性に対する影響を調査します。
もし、満足すべき結果が得られていない場合には、変更内容の見直しを
行う必要があります。

■□■ 再発防止の標準化 ■□■

再発防止のために、新しい作業標準書が発行されているにもかかわらず
古い作業標準書をそのまま残っていることがあります。
古い標準書が改訂されずに残っていると、古いものを使いトラブルを発生させる
ことが多いようです。不要となった作業標準書が現場から確実に撤去されるように
しなければなりません。

再発防止のための標準化のねらいは、作業者、設備、資材などの要因系の条件を
一定の範囲に保ち、安定した品質の製品が得られるようにすることです。

人間の知識が不完全である以上、バラツキを押さえなければならない要因の全てに
適切な標準化を行うことは困難であり、再発防止策については、重要な事象の
要因を解析し、それに対する根本原因を取り除くことが大切です。