JIS法改正に向けて― 標準化戦略5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.203 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略 5 ***
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日本の就業人口の約7割はサービス業に従事しています。
家計の支出の7割はサービスに支払われています。
日本のGDPの7割はサービス業で生み出されています。
いつの間にか、モノづくり日本はサービス提供日本になってしまっています。

■□■ 製造業のサービス業化 ■□■

製品(product)に価値をこめて販売するだけでなく、製品の
効果的活用アドバイスをする、より長寿命になるように
メンテナンスをする、消耗品を補給する、コンサルティングする
など多くの製造メーカーの課金戦略がここ20,30年の間に変化
してきました。

古くはカメラのフィルム交換、新しくはプリンターのインク補給、
電気・ガス、エレベータ装置の定期メンテナンスなどは、みな
製造業のサービス業化です。

■□■ IT普及による国際化 ■□■

国を超えて商圏が拡大しています。
サプライチェーンが拡大し国際化が進んでいます。
これらはすべてIT普及の賜物で、消費者は実際に手に取ってモノを
確認しなくても購入できる世界がどんどん広がっています。

このようにサービスが拡大すると、今までに思ってもみなかったことが
出てきます。
サービスの特徴が故に、今までより困難になったことに次のようなことが
あります。

■□■ サービスの難しさ ■□■

サービス(service)は、製品(product)と異なり次のような難しさが
あります。

・事前に評価ができない。
・手に取って試すことができない。
・品質の標準化が困難である。
・事前に検査ができない。
・保管、保存ができない。
・提供と消費が同時に発生する。

■□■ サービスの共創性 ■□■

提供と消費が同時に発生するために、サービスの価値は消費者(サービス受手)
の協力がないと効果的なものになっていきません。
健康サービスでは、例えばダイエット、ボディビル、エクササイズジムなどは、
サービスを受ける人がインストラクターの指示にどの程度素直に、継続的に
従うかによって効果は随分と変わってきます。

このことを、提供者と受益者の共創性、価値共創(co-creation)と呼び、
売手と買手の両方の連携が大切になります。

■□■ ISOサービス標準化 ■□■

ISOには約250の技術委員会(TC:Technical Committee)がありますが、
そのうち約40がサービスに関する標準の検討をしています。
もっとも古いサービスのTCは1950年ころに設立された「財務サービス」
Financial services TC68ですが、40のTCの大半は2000年以降に新たに
設置された技術委員会です。

そのうち約20は2010年以降に設置されています。
この数字を眺めると、国際的にもサービスの標準化が急ピッチに進んでいる
ことが分かります。

■□■ 最近のサービスISO/TC ■□■

ここ10年の間に新しく設置されたサービス関係のISO技術委員会を示します。

・TC223 Societal security 社会保障
・TC224 Service activities relating to drinking water supply wastewater
and storm water systems
飲料水供給/廃水および雨水システムに関するサービス
・TC228 Tourism and related services 観光及び関連サービス
・TC312 Excellence in services 魅力的なサービス
・TC314 Ageing societies 高齢化社会
・TC159 Human Centered Organization 人間中心の組織管理
・TC324 Guiding principles and framework for the sharing economy
シェアリングエコノミー(分かち合う経済のための指導原則と枠組み)

■□■ 包括的なサービス提供ガイド ■□■

BSIは、2010年にBS18477

「Inclusive service provision – Requirement for identifying and
responding to Consumer vulnerability:
包括的サービス提供―消費者の脆弱性を識別して対応するための要件」

である英国規格を発行しています。

これは、弱い消費者が陥りやすいリスクを低減することを狙っています。
消費者は、アクセスの制限、金銭的損失、搾取、またはその他の損害など、
脆弱性またはリスクの原因となる可能性があります。

BS 18477は、包括的なサービスがすべての消費者にとって個人的な事情に
かかわらず利用可能であり、アクセス可能であることを保証するための
手順を規定しています。