標準化―ISO 9001-3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.209 ■□■    
*** 標準化―ISO 9001-3 ***
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前回は、令和最初の大型連休の前でしたので、忘れている方も多いと思い
Vol.208を若干振り返ってみたいと思います。

ISO 9001:2015には、“適用可能性(applicability)”の要求があります。
この用語はISO 9001の2015年版で初めて出てきた言葉です。
この言葉の意味、意図はいままであまり議論されたり、検討されたりして
こなかったと思います。

ISO 9001の活用の仕方にテーラリング(tailoring)という言葉があります。
“tailor”とは洋服屋さんのことで、tailoringとは洋服を仕立てることを
いいます。洋服屋さんは、洋服を仕立てる時、お客さんの体形を測りその
体形に合わせて服を作りますが、ISO 9001を導入する組織も同様なことを
行うことが推奨されます。

■□■ “該当する場合には” ■□■

適用可能性、テーラリングなどを考えるときには、それなりの要点が幾つか
あります。その一つが規格の本文に出てくる、“該当する場合には”という
語句です。率直に受け止めれば、該当しない場合は実施する必要はないと
いうことです。しかし、該当する、しないはどのように決めるのでしょうか。

もとより、それは組織が自身の判断で、該当するか、しないかを考える
ということになります。組織以外の人が該当する、しないを決めることは
ありえないことです。なぜならば、マネジメントシステムは組織のものだから
です。

「ありえない」というと言い過ぎかもしれません。原則は組織自身が決める
のですが、その過程で利害関係者の意見を聴くことは勧められることでしょう。
ちなみにISO 9001:2015 には、“該当する場合には”という語句は、7か所
でてきます。

■□■ “必要に応じて” ■□■

“必要に応じて”は、ISO 9001:2015 に6か所でてきます。
“as appropriate”が原文の英語ですが、2008年版規格では,“適切に”
と訳されていました。しかし,附属書 SL の訳で一貫して “必要に応じて”
と訳されたので、従来用いられていた“適切に”から変わって,
“必要 に応じて”という和訳が用いられています。

“適切に”と“必要 に応じて”とでは、どう違うのでしょうか。
言葉はしょせん使う人の思いでその意味が変わってきます。したがって、
人によって受け止め方が若干違うことは当たり前のことです。

ここでは、2つの訳には大きな差異はないとして先に進めていきたいと
思います。

■□■ “~するため” ■□■

ISO 9001:2015には多くの“~するため”の記述があります。
“~するため”は目的を示していますので、単に要求されたことを実施する
のではなく、“~するため”という目的に合致した実施内容であるか確認をする
必要があります。もし~する実施内容が組織の目的と合わなければ、~する
ことは本当に必要であるか考えることがよいでしょう。

■□■ 組織のプロセスへの箇条の適用 ■□■

適用可能性を考えるときは、その他、組織のどのプロセスに適用するのかを
検討するとよいでしょう。

例えば、箇条8.5は組織の製造プロセスへ適用させます。
箇条8.2は組織の営業プロセス、箇条8.3は組織の設計プロセス、箇条8.4は
組織の購買プロセスというようにISO 9001:2015 の箇条8は適用するプロセスが
明確であり、ほぼ総ての組織はこの規格要求事項の適用について異論はないでしょう。
しかし、箇条9は組織のどのプロセスへ適用するのでしょうか。
また、箇条7についてはどうでしょうか。

これについては次回以降述べていきたいと思います。

■□■ 組織のプロセス ■□■

このように考えると、一つ疑問がでてきます。
そもそも自分の組織のプロセスは明確になっているのでしょうか。
規格要求事項を組織のプロセスに適用させることを考えるその前提には、
組織のプロセスを明確にしてあると基本的な要件があります。

単純な言い方をすると、組織のすべての個人の仕事が明確になっている
必要があります。プロセスと言うとむずかしく聞こえますが、プロセスは
個人の活動であると考えることがよいと思います。